自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★能登が輝く祭りシーズン ウイズコロナで3年ぶり

2022年06月27日 | ⇒トレンド探査

   能登では夏から秋にかけて祭りのシーズンとなる。「盆や正月に帰らんでいい、祭りの日には帰って来いよ」。能登の集落を回っていてよく聞く言葉だ。能登の祭りは集落や、町内会での単位が多い。それだけ祭りに関わる密度が濃い。子どもたちが太鼓をたたき、鉦(かね)を鳴らす。大人やお年寄りが神輿やキリコと呼ばれる大きな奉灯を担ぐ。集落を挙げて、町内会を挙げての祭りだ。その祭りが新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2020年と21年は軒並み中止だった。3年ぶりでようやく「復活」のめどがついたようだ。

   能登の祭りは派手でにぎやかだ。大学教員のときに、留学生たちを何度か能登の祭りに連れて行った。中国の留学生が「能登はアジアですね」と目を輝かせた。キリコは収穫を神様に感謝する祭礼用の奉灯を巨大化したもので、大きなものは高さ16㍍にもなる=写真=。輪島塗の本体を蒔(まき)絵で装飾した何基ものキリコが地区の神社に集う。集落によっては、若者たちがドテラと呼ばれる派手な衣装まとってキリコ担ぎに参加する。もともと女性の和服用の襦袢(じゅばん)を祭りのときに粋に羽織ったのがルーツとされ、花鳥風月の柄が入る。インドネシアの留学生は「少数民族も祭りのときには多彩でキラキラとした衣装を着ますよ」と。留学生たちは興味津々だった。

   ところで、3年ぶりに祭り再開とは言え、実施に当たってはコロナ対応にかなり気遣っているようだ。地元紙の記事によると、高さ15㍍のキリコを100人の若衆で担ぎ上げ、6基が街中を練る七尾市の石崎奉燈祭(8月6日)では練り歩く範囲を町中心部の広場に限定して実施するようだ。さらに祭りの2日前に関係者のPCR検査を、当日には抗原検査を実施して陰性の人のみ参加とする。そして、祭り当日の飲酒は禁止となる(今月26日付・北國新聞)。

   祭りに酒はつきものだが、大きなキリコを担ぎ上げる際には勢いをつけるために一升瓶を回し飲みしたりするので、禁止となるようだ。石崎奉燈祭は漁師町の若衆が中心なので、ノンアルコールで勢いはつくのかどうか。

   能登のキリコ祭りは2015年4月に、日本遺産「灯り舞う半島 能登 ~熱狂のキリコ祭り~」に認定され、全国から見学や参加希望の祭りファンが増えていた。また、祭りを開催する側もおそらくこれ以上の中止が続くと、伝統行事の祭礼の継承そのものが痛手となること判断したのだろう。冒頭の「盆や正月に帰らんでいい、祭りの日には帰って来いよ」の言葉が示すように、過疎化が進行する能登にあって、祭りの継続は集落にとって価値観の共有であり、持続可能な地域づくりに欠かせない祭礼イベントなのだ。

⇒27日(月)午前・金沢の天気    はれ時々くもり


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