自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆数字が止まらない 生活の泣き笑い 

2021年07月19日 | ⇒ニュース走査

   このところ石川県内もうだる暑さだ。金沢地方気象台のデータによると、きのう18日は県内11の観測地点すべてで最高気温が30度を上回った。能登半島の七尾市では34.9度を記録した。金沢市も32.4度だった。街中を車で走行すると、運転席の外気温は33度を表示していた。気象台はきょうの予想最高気温を金沢で34度としている。そして、「熱中症警戒アラート」を3日連続できょうも発して、注意を呼び掛けている。

   金沢市内で利用しているカソリンスタンドのきょうの価格を見ると、1㍑158円だ=写真=。まもなく160円台になるのか。昨年のいまごろは新型コロナウイルスの感染拡大を警戒して不要不急の外出自粛やリモートワークなど「巣ごもり」の生活スタイルが広がっていた。このため、ガソリン需要が減り、一時120円台だったと記憶している。このところ価格が反転しているが、今後どうなるのか

   NHKニュースWeb版(7月18日付)によると、サウジアラビアが主導するOPEC(石油輸出国機構)と、ロシアなど非加盟の産油国は18日、8月以降の原油の生産量を協議した。新型コロナウイルスの影響で一時、落ち込んだ世界の原油需要は、経済活動の再開やワクチン接種の広がりにともなって増加していて、OPECは、世界の石油の消費量が来年には感染拡大前の水準に回復すると見込んでいる。これを受けて、会合では協力して続けている減産の規模を縮小し、生産量を8月以降毎月、日量40万バレルずつ増やしていくことで合意した。

   景気回復への期待から原油価格は上昇傾向にあるようだが、ガソリン価格などはこれ以値上げしてほしくないというのが庶民の願いだ。

   熱くなる数字もある。アメリカ大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手が18日のマリナーズ戦で、シーズン後半戦で初となる34号ホームランを放った。大谷選手のホームランは、オールスターゲームを挟んで5試合ぶりで、この時点で両リーグを通じ2位の選手に3本差をつけてトップを走っている(7月19日付・NHKニュースWeb版)。

   そして寒くなる数字も。週明けの19日の東京株式市場は午前中、日経平均で一時、500円以上値下げた。変異ウイルス「デルタ株」の感染が急速に拡大する国が相次いでいることから、世界経済が減速することへの懸念が強まっている。ワクチン接種率が53%のイギリスでも18日は1日の感染者が4万8161人になった。16日と17日には1月半ば以降で初めて感染者がそれぞれ5万人を超えている(7月19日付・BBCニュースWeb版)。パンデミックが治まらない。

⇒19日(月)午前・金沢の天気      はれ

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★ワクチンは「論より証拠」 次は抗体検査

2021年07月18日 | ⇒ドキュメント回廊

   きょう2回目のワクチン接種を金沢市内の病院で受けた。午前9時30分ごろ、病院に到着して受付窓口に。指定されたイスに着席すると、小型ワゴンを押しながら女性看護師2人が近づいてきた。1回目(6月27日)と同じ方式で、接種を受ける側は座ったままで、看護師が会場内を移動して接種する。病院に入って、5分後には接種が完了した。

            接種後は15分間、9時50分までイスに座り経過観察。用紙には「気分が悪くなってきた。座っているのがしんどい」「息切れがする。咳が出る」「じんましんや皮膚のかゆみがでてきた」などの体調の変化や自覚症状を感じた場合にはスタッフに告げてくださいとある。知人の何人かからは、「2回目がしんどかった」と副反応のことを聞いていたので身構えていた。

   15分間で思いついたことだが、2回目の接種を終えて2週間経つと抗体ができて新型コロナウイルスにはかかりにくくなると言われている。だったら、東京オリンピックの競技会場はほとんどが無観客となっているが、2回接種済みで2週間後の人たちは観戦可能としてはどうだろうか。接種後には「ワクチン予防接種済証(臨時)」を各病院が発行する。このシートを「パスポート」の代わりに使えばよいのではないだろうか。何しろ、ワクチン2回接種済みは2576万人で人口の20%、うち65歳以上の高齢者は1917万人と54%だ(7月15日現在、総理官邸公式ホームページ)。無観客は少々もったいない気がしないではない。。

   接種から15分間経過したが体調の変化や症状もないのでイスから立ち上がり、出口の受付へ。前述の「ワクチン予防接種済証(臨時)」をシートに貼ってもらった。副反応もなく、これで完了。すると、一枚のチラシが渡された。「新型コロナウイルス抗体検査のおしらせ」とある。読むと、「ワクチンをうった効果が感じられない」「効果を数値で確かめたい」「本当に抗体ができているのか」と思っている接種者向けに血液検査をして、抗体を持っているかを調べる、とある。料金は保険適用外で税込み6000円だ。

   さらに説明によると、ワクチン接種でヒトの細胞内にスパイクタンパク質(ウイルスのトゲトゲの部分)をつくる。このトゲトゲの構造に人体の免疫系が強く反応することで、ウイルスの感染に対する抵抗力、つまり抗体が獲得できる。スパイクタンパク質だけではウイルスとなることはないので、感染はしない。

   この抗体検査ができるのはきょうから2週間以降で、検査によって「過去の感染」や「抗体の有無」が確認できるという。論より証拠。この際、勉強だと思って抗体検査を受けてみることにした。

⇒18日(日)夜・金沢の天気      はれ

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☆「あたりめ」がほろ苦く感じるとき

2021年07月17日 | ⇒ニュース走査

   先日金沢市内のス-パーで酒のつまみにと思い、「あたりめ」を買った。パッケージには「この商品はするめいかを原料にしています」と書かれてあり、丁寧な商品づくりをしているとの印象だった。ところが、裏面を見ると、「原産国名」が「中国」とある=写真・上=。複雑な思いを抱きながら、あたりめを噛みしめた。

   日本海のスルメイカの漁場は大和堆だ。日本のEEZ(排他的経済水域)なのだが、中国漁船が大挙押しかけ、能登半島などから出漁する日本漁船に打撃を与えている。日本側はスルメイカのイカ釣り漁の漁期を6月から12月と定めているが、日本の漁船に先回りして、中国漁船は4月から大和堆などに入り込んで漁場を荒らしているのだ。

   この中国漁船による違法操業での漁獲は15万㌧(2020年)と国立研究開発法人水産研究・教育機構は推測している。これは、日本漁船による2019年の漁獲量の10倍以上に当たる(2020年10月15日付・日刊水産経済新聞Web版)。日本のイカ釣り漁とは違って、中国漁船は大きな網を2隻の船が対になって引っ張る「二艘曳き」と一網打尽の漁法だ。

   では、どのくらいの数の中国漁船が日本海に入ってきているのか。衛星データで漁船の動きを調査するグローバル海洋保護非営利団体「Global Fishing Watch」(GFW、ワシントン)は、2019年で800隻が北朝鮮海域に入っていると分析している。中国の漁船は集魚灯を使うので、中国からの海洋での照明の動きを追うと、次第に北朝鮮の漁業海域に集まって来る様子が画像で分かる。

   北朝鮮海域に中国漁船が集まるのは、中国の漁業者が北朝鮮から漁業許可証を購入しているからだと言われる。これまで北朝鮮は国連海洋法条約の締約国ではないことをタテにEEZ内で違法操業を繰り返してきた。中国漁船はその「権利」も購入したとの勝手解釈なのだろう、北に取って代わってEEZでの違法操業を行っている。そもそも、北の核実験に対応した2017年の国連制裁決議には漁業権の取引も含まれ、買い取りそものが違反なのだが。

   水産庁の漁業取締船と海上保安庁の巡視船が大和堆を中心に見回りを行っているが、水
産庁が中国漁船に対して行った2020年の退去警告数は延べ4393隻と発表している。仮に中国漁船を800隻とカウントすれば、1隻当たり5回以上も警告を発していることになる。中国漁船がこれ以上増えれば、水産庁と海上保安庁の対応能力が追い付かなくなるのではないだろうか。(※写真・下はEEZ内の違法操業船に放水措置を行う水産庁漁業取締船=水産庁公式ホームページより)

   スルメイカを中国から輸入して製造した「あたりめ」だ。そう考えながら噛みしめるとほろ苦さを感じる。中国産のスルメイカがすべて違法と言っているわけではない。
 
⇒17日(土)夜・金沢の天気      はれ
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★「蓮は泥より出でて泥に染まらず」

2021年07月16日 | ⇒ニュース走査

   JR金沢駅の西口広場に「蓮池」があり、いまが見頃と知人から聞いて、きょう午前中、さっそくカメラを携え訪れた。水面に葉を浮かべ、水底から茎を伸ばして白とピンクのツートンカラーの花びらが輝きを放っている=写真・上=。「蓮(はす)は泥より出でて泥に染まらず」という教訓めいた言葉がある。水面下はドロ沼ではあるが、清らかで美しく咲く姿に、いにしえより人々は自らの人生を想いながら「蓮の如く人生の花を咲かせたい」と願ってきたのだろう。金沢駅前のビルに囲まれた「蓮池」でも、山のふもとの寺院の池であっても、ハスの存在感には変わりなく、時空を超えた趣があった。

   自宅に戻ると、テレビの新型コロナウイルス関連のニュースが耳目を引いた。WHOのテドロス事務局は会見で、感染拡大初期のデータが中国から得られず、ウイルスの起源の調査に支障が出ていると指摘し、中国に対して透明性を高め、オープンかつ協力的になるよう求めると発言した(7月16日付・テレビ朝日ニュース)。さらにネットで調べると、イギリスのBBC(同日付)は、テドロス氏は「医療専門家として、武漢の研究所からウイルスが漏れる事故は起こり得ると考えている」と述べたと記事にしている。

   「中国寄り」とされるテドロス氏にしては随分と中国を刺激する発言だ。そもそも、露骨な中国寄りをが問題になったのは、2020年1月のこと。中国の春節の大移動で日本を含めフランスやオーストラリアなど各国でコロナ感染者が拡大していたにもかかわらず、1月23日のWHO会合で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を時期尚早と見送ったことがきっかけだった。

   テドロス氏の心境の変化を知りたくなり、WHO公式ホームページで会見内容をチェックする。このような一文だった。「 I agree that finding the origins of this virus is a scientific exercise that must be kept free from politics.For that to happen, we expect China to support this next phase of the scientific process by sharing all relevant data in a spirit of transparency. 」。以下意訳。このウイルスの起源を発見することが政治と切り離して行う、科学的な実証作業であることは言うまでもない。そのためには、中国が透明性の精神をもってすべての関連データを共有し、科学プロセスの次の段階を支援してくれることを期待する。

   テドロス氏はさらに。「it’s also important as an obligation to the families of the 4 million people who have lost someone they love, and the millions who have suffered.」。(ウイルスについて究明することは) 愛する人を失った400万人の家族や、苦しんでいる数百万人の人々への義務としても重要だ。

   上記の言葉からは慈愛を込めた研究者の精神がうかがえる。もともとテドロス氏はロンドン大学で感染症の免疫学の修士、ノッティンガム大学で保健学の博士号を取得した医学の研究者で、専門はマラリアだ(Wikipedia「テドロス・アダノム」)。BBC記事にあるように、ここにきて「medical professional」 としての自意識が頭をもたげてきたのではないだろうか。

   これまでの中国との癒着のドロ沼から踏み出て、新型コロナウイルスの感染阻止にまい進する研究者の姿勢を貫くならば評価したい。まさに「蓮は泥より出でて泥に染まらず」だ。 (※写真・下は、WHO公式ホームページ7月15日付「プレス・カンファランス」の動画より)

⇒16日(金)夜・金沢の天気   はれ

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☆「シャドー・バニング」は是か非か

2021年07月15日 | ⇒メディア時評

   前回のブログで「プラットフォーマー」であるIT大手「グーグル」とフランスのメディアとの確執について述べた。昨年のアメリカ大統領選をめぐっても大統領とプラットフォーマーとの確執が続いた。

   2020年5月、ツイッター社は当時のトランプ大統領が、カリフォルニア州知事が進める大統領選挙(11月)の郵便投票が不正につながると主張した投稿について、誤った情報や事実の裏付けのない主張と判断し、「Get the facts about mail-in ballots」とタグ付けしてファクトチェックの警告を発した。これに対しトランプ大統領は「ソーシャルメディアプラットフォームが共和党の見解を全面的に封じ込めている。これら企業を厳しく規制もしくは閉鎖する」とツイートした(2020年5月27日付・ロイター通信Web版日本語)。 

   同じ5月にミネソタ州ミネアポリスで、アフリカ系アメリカ人の男性が警察官に首を押さえつけられて死亡する事件が起き、抗議活動が広がった。トランプ大統領がツイートした内容のうち、「略奪が始まれば(軍による)射撃も始まる」との部分が個人または集団に向けた暴力をほのめかす脅迫に当たるとツイッター社は判断し、大統領のツイッターを非表示とした。削除ではなく、「表示」をクリックすれば読める。すかざす、大統領はツイートで「“Regulate Twitter if they are going to start regulating free speech.”」(言論の自由を規制するなら、ツイッターを規制する)と同社を牽制した。

    アメリカでは、SNS各社は通信品位法(CDA:the Communications Decency Act )230条に基づき、ユーザーの違法な投稿をそのまま掲載したとしても責任は問われない。だからといって、ヘイトスピーチなどを野放しにしておくわけにはいかないというのがSNS各社のスタンスだ。それがピークに達したのが、ことし1月、大統領選に敗れたトランプ氏の支持者らによるアメリカ連邦議事堂への襲撃事件だった。トランプ氏が暴徒を「愛国者だ」などとメッセージを投稿したことから、ツイッターやフェイスブック、グーグルなど各社は公共の安全が懸念されるとしてトランプ氏のアカウントを相次ぎ凍結した。

   そして半年後、トランプ氏とプラットフォーマーとの確執は再び火を噴く。BBCニュースWeb版(7月7日付)によると、トランプ氏は自分は検閲の被害者だとして、グーグル、ツイッター、フェイスブックの3社ならびに各社の最高経営責任者(CEO)を提訴した=写真=。同氏は今回の訴訟について「シャドー・バニング(ソーシャルメディアの運営側が望ましくないと判断したアカウントを公の目に触れにくくする措置)や黙らせる行為、ブラックリスト化や追放、削除といった行為の停止を求める」と述べ、ソーシャルメディア企業と民主党を激しく非難。さらに、「この国の歴史上、これほど責任を免除され守られた人はいない」と批判し、「通信品位法」230条の改正を訴えた。

         そもそも、ソーシャルメディアを政治の舞台で活用したのは、ある意味でトランプ氏だった。2017年1月の大統領就任前からゼネラル・モーターズ社やロッキード社などに対し、ツイッターで雇用創出のために自国で製造を行えと攻撃的な「つぶやき」を連発した。ホワイトハウスでの記者会見ではなく、140文字で大統領の方針を発信するという前代未聞のやり方だった。政治家が競ってツイッターなどソーシャルメディアの活用を始めたのは、トランプ氏が先導したとも言える。

    前回のブログで書いたフランスにおける著作権指令とグーグルとの交渉問題、そして、トランプ氏が訴える「通信品位法」230条の改正と巨大IT企業への提訴。デジタル時代の「あだ花」なのか、あるいは「転換点」になるのか。

⇒15日(木)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

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★著作権・商標問題 フランスの苛立ち

2021年07月14日 | ⇒ニュース走査

   紙面やネットでニュースをチェックしていて、おそらくフランス政府は相当に苛立っているのだろうと察した記事を2つ。「シャンパン」と言えば、フランスのシャンパーニュー地方で製造されたスパークリングワインを指すが、日本国内では発泡性ワインそのものを「シャンパン」と言ったりする。フランスではワインの法律(原産地呼称管理法)に規定された条件(生産地、ブドウ品種と栽培方法、伝統的な製造方法、アルコール度数など)、いわゆる「シャンパン製法」を満たして初めて「シャンパン」の商標が与えられる。

   ところが、ロシアではロシア産のスパークリングワインだけに「シャンパン」を名乗ること認める法律が発効し、騒動となっている。フランスのAFP通信(7月6日付・日本語版)によると、この新法は今月2日、プーチン大統領の署名で成立した。フランス産のボトルにフランス語で「シャンパン」と表記することは引き続き可能だが、ボトルの後ろにキリル文字(ロシア語文字)で「スパークリングワイン」と明記することが義務付けられた。

   新法により、フランスの高級ワイン大手「モエ・ヘネシー」はロシア市場への出荷を一時停止しているが、ドンペリニヨンなどの輸出を新法に従って再開すると発表している。また、シャンパン生産者らはロシアの法律の変更を求める外交的な働きかけをするよう嘆願書を政府に提出した。フランスは原産地名称の保護に関するリスボン協定に加盟しているが、ロシアは加盟していない(同)。

   フランスが苛立っているニュースをもう一つ。報道機関がコストをかけてニュースや情報を発掘する。ところが、「プラットフォーマー」であるIT大手はメディアのニュースを「ただ見せ」して広告ビジネスで稼いでいる。AFP通信(7月14日付・日本語)によると、フランスの競争評議会(公正取引委員会)は今月13日、EUの著作権規則に基づいたニュースコンテンツ使用料をめぐり、メディア企業との「誠実な交渉」を怠ったとして、アメリカのIT大手「グーグル」に5億ユーロ(650億円)の制裁金を科すと発表した。(※写真はフランス競争評議会の公式ホームページより)

   EUはデジタル化時代に対応するため、2019年4月に旧来の著作権ルールを見直し、著作権市場がより機能する公平なルールを整備する「著作権指令」を発効した。在日欧州連合代表部の公式ウエッブマガジンの解説によると、「Google、Yahoo!、AOLなどのオンラインサービスプロバイダーが新聞や雑誌の記事を使用する際、記事の発行元が報酬を受けられる新しい権利。例えば、『Googleニュース』で記事が使われた場合、発行元はその記事使用料を要求できる」としている。

   著作権指令に基づき、フランスの競争評議会は昨年4月、メディア各社がグーグルは十分な対価を支払わずに検索結果に記事や動画を表示していると批判したことを受け、グーグルに対しメディア側との「誠実な交渉」を命じた。しかし、同9月、AFP通信などメディア側が使用料支払いに向けた交渉の進展をグーグルが阻んでいるとして、競争評議会に苦情を申し立てていた。

   メディア側との「誠実な交渉」をなぜグーグルが阻んでいるのか。以下憶測だ。世界の検索の9割をグーグルが占め、膨大な検索データを広告ビジネスに活用している。問題となっているのは、検索で表示される記事の使用料についてだ。ニュースを検索すると、記事の断片が出てくる。グーグルはこの断片を「スニペット(snippet)」と称している。報道機関側はこのスニペットの段階ですでに著作使用料が発生しているとしている。

   これに対して、グーグルは「ニュース・ショーケース」のサービスをイギリスやフランスなどで始め、通常のグーグルニュースやネット検索とは別に、契約した報道メディアが提供する記事の見出しや概要を掲載している。グーグルの狙いは、このニュース・ショーケースでの契約料をもってすべての記事の著作使用権とみなしたいのだろう。なので、著作権指令に従う立場より、むしろ個別にメディア各社と契約を結びたいのではないだろうか。指令に従わないグーグルに対して、フランスの競争評議会は苛立ちを深めている。

⇒14日(水)夜・金沢の天気     はれ

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☆土砂降りの「内閣支持率」

2021年07月13日 | ⇒ニュース走査

   この梅雨の時季、「線状降水帯」の言葉をテレビでいやほど聞いた。強烈な大雨は鹿児島や島根、鳥取の両県を襲い、熱海市では土砂崩れを誘発した。痛ましいばかりの光景だった。そして、土砂降りと言えば思い出すのが、北陸新幹線だ。忘れもしない2019年10月13日、台風10号の猛烈な雨の影響で、長野県の千曲川が氾濫し、長野市の新幹線車両センターで10編成の北陸新幹線車両が水につかった。雪に強い北陸新幹線は案外にも雨にはもろかった。その想いが残った。

   話は変わるが、土砂降りと言えば、菅内閣の内閣支持率にも豪雨が襲っている。NHKの最新の世論調査(7月9-11日)によると、菅内閣を「支持する」と答えた人は、先回より4ポイント下がって33%と、昨年9月の内閣発足以降で最も低くなった。一方、「支持しない」と答えた人は、1ポイント上がって46%で内閣発足以降で最も高くなった(7月12日付・NHKニュースWeb版)。

   読売新聞の世論調査(7月9-11日)も、菅内閣の支持率は37%となり、昨年9月の内閣発足以降で最低だった前回の37%から横ばいだった。不支持率は53%(前回50%)に上がり、内閣発足後で最高となった。不支持率が支持率を上回るのは今年5月から3回連続。支持率低迷の背景には、政府の新型コロナウイルス対策や五輪対応への不満があるとみられる(7月12日付・読売新聞Web版)。

   このままだと、政局は一気に揺らぐ可能性がある。メディア業界でよくささやかれるのは、内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」と。第一次安倍改造内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売新聞の内閣支持率は29%(2007年9月調査)だった。その後の福田内閣は28%(2008年9月退陣)、麻生内閣は18%(2009年9月退陣)と、自民党内閣は支持率が20%台以下に落ち込んだときが身の引きどきだった。民主党政権が安倍内閣にバトンタッチした2012年12月の野田内閣の支持率は19%だった(数字はいずれも読売新聞の世論調査)。

   菅内閣が「危険水域」に入るのは、あと8ポイント、さらに「デッドゾーン」へは、あと18ポイント下げたときだ。

(※写真は、今月12日、土砂災害に見舞われた熱海市の現場を視察する菅総理=総理官邸公式ホームページより)

⇒13日(火)夜・金沢の天気    くもり

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★いまこそ「Byondコロナ」

2021年07月12日 | ⇒メディア時評

   昨年の今ごろは「ビヨンド(Byond)コロナ」という言葉を大学キャンパスでも何度か聞き、オンラインでのシンポジウムなどにも参加した。「コロナで世界は大きく変わる、キミはただ見ているだけか」をキャッチフレーズに学生たちがが企画したオンラインセミナー=写真=では、新型コロナウイルスのパンデミック後を見通した日本や国際社会の課題、そして、コロナ後の新しい社会をどう創造していくかをテーマに議論が交わされた。そのころから1年経つが、最近では「Byondコロナ」に一服感があるのか、耳目に触れることがめっきり減った。意義ある言葉だと思うので、再度検証してみたい。

   Byondコロナのセミナーでは、リモートワークが事例として論じられてきた。「働き方改革」は当時の安倍政権のテーマの一つだったが、進んでいるように見えなかった。ところが、コロナ禍でリモートワークやワーケーションという働き方が一気に加速した。日常の変化もある。コロナ禍で衛生観念が共有され、紙幣や硬貨にも触らないとい観念が広がり、キャッシュレス化も随分と進んだ。そして、日銀も現時点でデジタル法定通貨(CBDC)を発行する計画はないとしているが、決済システム全体の安定性と効率性を確保するよう準備するとしている。

   さらに、人が動くことによって付加価値が生み出されてきた観光や文化・芸術などの施設では、その場に行くなくても、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といったデジタル技術を取り入れた観光やエンターテイメントも盛んに行われている。Byondコロナの議論は、コロナ禍を社会変革の前倒しのチャンスととらえる発想でもある。

   では、そのByondコロナがなぜ触れられなくなったのか。きょう12日から東京は4度目の緊急事態宣言の期間(8月22日まで)に入った。政府は夏休みや旧盆の人の流れを抑えて感染拡大を防ぎたいのだろう。オリンピックは今月23日に始まり、8月8日に閉会する。1都3県ほかほとんどの競技場は無観客での開催だ。国内のワクチン接種はどうなのか。1回受けたのは国民の28%、そのうち2回は以上17%にとどまっている(7月8日付・総理官邸公式ホームページ)。いつコロナ禍が収束するのか、見えてこない。

   Byondコロナをテーマに議論した昨年のいまごろ、日本は他国に比べれば感染の抑制に比較的成功し、死亡率も低く抑えていた。国民の多くは心の中で、延長された東京オリンピックが開催するころには収束するのではないか思っていたのではないだろうか。自身もそうだった。なので、コロナ後の社会の有り様を議論する心の余裕があったのかもしれない。

   ところが、昨年後半に感染者数が急増し、ことし1月にピークに達した。いま東京ではコロナ禍の第5波が迫り、前述したように4度目の緊急事態宣言下に入った。先が見通せない中で、Byondコロナをテーマに議論することに抵抗感を持つ人は多い。むしろ、いまこそトンネルの出口を見出すためにも必要なテーマではないだろうか。

⇒12日(月)午前・金沢の天気     くもり

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☆スルメイカの巨大モニュメントを見に行く

2021年07月10日 | ⇒トピック往来

   名付けられた愛称は「イカキング」。能登半島の先端部分に位置する能登町の九十九湾に出現したスルメイカの巨大モニュメントは全長13㍍、全幅9㍍、高さ4㍍、重さは5㌧のサイズだ。素材は航空機などに使う繊維強化プラスチックのFRP製だ。子どもたちが中に入って遊んだり、大人たちが写真を撮ったりと、けっこう人気がある。自身も実物をぜひ見たいと思い、きょう能登町に行ってきた。

   同湾にある小木漁港は全国で屈指のイカ類の水揚げを誇る。このことから町では特産イカの知名度向上にと昨年6月に観光交流センター「イカの駅つくモール」をオープンさせ、イカ料理などが味わえるレストランやイカの加工品を中心とした物産販売コーナーを設けた。さらセンターの芝生庭にことし4月に創ったのがイカキングだ。新型コロナウイルスの収束後の観光誘客を狙ったものだが、制作費3000万円のうち、2500万円がコロナウイルス感染症対応として国が自治体に配分した地方創生臨時交付金だったことから、議論を呼んだ。

   担当した町ふるさと振興課の職員に直接聞くと、「コロナ対策に使うべき交付金ではないか。なぜモニュメントをつくるのかと着工の段階から疑問の声がいくつか寄せられていた」と話す。職員によると、臨時交付金には「地域の魅力磨き上げ事業」という項目があり、それに該当すると説明しているという。イカの駅つくモールは、オープン半年で6万8千人の来場があり、当初予測していた1年間で7万人の予想見込みを上回った。さらに、話題性のあるイカキングとの相乗効果に期待を寄せている。

   そして、担当者は「コロナ後はインバウンド観光客も」と口にした。モニュメントが交付金で創られたことを疑問視するニュースは本来ならばローカルニュースだ。ところが、スルメイカの巨大モニュメントというカタチの異様さが受けてか全国ニュースで取り上げられ、さらに、イギリスのBBCやフランスのAFP通信、アメリカのニューヨーク・タイムズなども写真付きで取り上げた。それがネットニュースとしても世界に拡散した。

           なぜ欧米のメディアがニュースにしたのか。憶測だが、欧米ではタコやイカはデビルフィッシュ(Devilfish)、「悪魔の魚」にたとえられ、巨大化したタコやイカと闘うアメリカ映画もある。スルメイカの巨大モニュメントそのものが、いわゆる「絵になる」のではないか。能登町の隣の珠洲市では今年9月から国際芸術祭が開催される。デビルフイッシュがこれだけ話題になると、「ついでに見に行こうか」と立ち寄る国内外の鑑賞者もいるのではないだろうか。

⇒10日(土)夜・金沢の天気       くもり 

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★大きな勘違い

2021年07月09日 | ⇒メディア時評
    これはさらに有権者の疑問を呼び起こす対応ではないだろうか。東京都議会選(今月4日)に当選した都民ファーストの会の女性都議が選挙期間中に無免許運転で人身事故を起こし、党から除名処分(今月5日)を受け、その後雲隠れしている問題は前回のブログで取り上げた。その都議が自らの公式ホーページで「都民の皆様へ」と題する釈明文を掲載している。これを読むと、選挙で選ばれた公人が取るべき姿なのだろうかと思ってしまう。以下、引用する。
 
「無免許で自動車を運転し、さらに交通事故を起こしてしまったことについて、猛省しております。 私の今回の行動が有権者の皆様の信頼を損ねることになってしまい、心よりお詫びを申し上げます。 また、多くの方々にご迷惑をおかけしており、申し訳なく思っております。」
 
   この都議に必要なのは記者会見を通して説明責任を果たすことではないだろうか。「心よりお詫び申し上げます」は自らの言葉で述べるべきであって、ホームページで発する言葉ではない。これでは誠意が有権者には伝わらない。問題の本質は、無免許運転での人身事故(今月2日)を故意に隠して4日の投開票日後に都民ファーストの会に報告したことだ。

「また、無免許で運転していたこと及び事故を起こしたことについて、警察による取り調べに真摯に対応しております。 捜査中の案件ですので、具体的な事項については、弁護士さんの助言を受けて、それが整理された段階でご説明いたしたいと考えています。」

   2日の無免許運転の人身事故のほかに、同じ板橋区での立候補者が「告示日直前の6月21日に志村坂上でご自身が街宣車を運転しているのを、私はハッキリと見た」とツイッターで証言している。この点、無免許運転を常習的に行っていたと認めるかどうかだ。警察から取り調べを受けているのはまさにこの点だろう。なぜ弁護士の助言を受ける必要があるのか。おそらく無難に略式起訴に持って行くために、弁護士をつけているのだろう。

「今後については、私にいただいた29,767票の重みを踏まえ、 有権者の方々との絆を大切にし、損ねてしまった信頼を取り戻すためにどうすれば良いか、 様々なご意見をいただきながら、熟考を重ねてまいります。」

   本人にとってはおそらく「免停中の無免許運転で人身事故」は、運が悪かったという程度の感覚なのだろう。交通ルールを無視し、不祥事を隠して得た「29,767票」は、有権者を騙してして得た得票数だとのそしりを免れない。雲隠れせずに会見を行い、率直に詫びることに尽きる。なぜそれができないのか。大きな勘違いをしているのではないだろうか。(※写真は、当選を報告する木下富美子氏のツイッター=7月5日付)

⇒9日(金)夜・金沢の天気      くもり

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