D70s with SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC Macro thru Kenko Pro1D Protector (W), Aperture priority AE (F=5.6, SS=1/50s), +0.3EV (Spot metering), ISO200, WB=Sunny (-2), f=70mm (35mm-equivalent: 105mm)
トゲを生やした生け垣の植物。カラタチだと散歩中の人が教えてくれました。恥ずかしながら、カラタチの名前を知ってはいても、実物をつぶさに観察したことはありませんでした。カメラを持ち歩くようになって、この世界にいろいろな形があふれていることを改めて実感しています。
ピンと伸びたトゲは、根元にためた濃い緑を徐々に淡くぼかしながら、幼稚園に上がったばかりの子供のように小さな爪を立てます。
こんな不思議な造形を目にして立ち去るわけにはいきません。既に日が沈みかけて暗くなりかけていますが、カメラを据えます。シャッタースピードが遅くなりすぎない程度に絞り込み、露出を決めます。
オートフォーカスを解除し、ファインダーの倍率を上げてのぞきこみます。
気がつくと、体が縮小され、小人になってファインダーに吸い込まれていました。
絵本の住人となった私の目の前に、人の背丈ほどもある大きなカラタチがそびえ立ちます。
背後の世界に残した自分の抜け殻が、ピントリングを親指と人差し指で挟んで回し始めます。
カチカチカチ……とわずかな振動が指先に伝わります。
頭の中には、リングが回るジジジ……という音だけが響き渡ります。
トゲの先端が次第に鮮明になっていきます。
リングはそのまま回され続け、やがてトゲの先端が涙でにじんだようにボケ始めました。
背後の抜け殻は、そのボケを待ちわびていたかのようにリングを少し戻しました。
バシャ
目が覚めました。
車の群れが、砂嵐となって静寂を押し流していきます。
カラタチの林に迷い込んで1時間も2時間も経ったかと感じましたが、都会に置き去りにされた私の体はほんの数秒の出来事だったと言います。
シャッターを切らなかったら、元の世界には戻らなかったかもしれません。
蔵出し企画: おもちゃ箱の奥 2005年5月20日の記事は → 「恋せよ乙女!」 【みぃのつぶやき】 私の友達は、しっかりどっぷり恋に浸る性格をしています。毎回感情が急上昇と急降下を繰り返して、ドラマでも演じてるみたい。それはそれで楽しそうです。 ※ 過去の記事へのコメントも歓迎します。恐れ入りますが、コメントは該当する記事に書いてくださるようお願いします。過去の記事に関するコメントが今日の記事に書かれていると、他の読者が脈絡を理解できず、混乱してしまいますから。 |