名義変更・実況編

戸籍上の名前を変更して以来、あちこちで名義を変更しています。今回は銀行口座の名義を変更しました。銀行口座の名義を変更するには、銀行の窓口に出向かなければなりません。

銀行は午後3時で閉まってしまうので、炎天下での外出を余儀なくされます。ふぅ。さらに、窓口での名義変更には30分以上かかるので、1日にそう何箇所も回れるものではありません。名義変更がすべて終わるのは いつのことやら。あと何回炎天下を動き回らなければならないことやら。

それでも、いったん銀行の自動ドアをくぐってしまえば快適そのもの。行内はしっかりと冷房が効いており、自宅にいるよりずっと涼しく過ごせます。銀行の唯一の利点だね。

ハンカチを取り出して汗をふきふき……。おっと、のんびり涼んでちゃダメ。とりあえず名義変更。

窓口に座っていた行員は、ピンク色のチークをしっかり乗せた、あごの細い女性。
「いらっしゃいませ」
軽く笑顔を返して、古い名義の (男性的な名前の) 通帳を窓口に差し出します。
「名義を変更したいんですが」
テラー (窓口係) が通帳をしげしげと眺めます。
「このお通帳のご名義の方は……、えーと……」
はい、いつものやり取りですね。この後、「ご家族の方でしょうか」と続くんですね。通帳の名義は明らかに男性の名前なのに、その人の通帳を持って窓口に来た人は女性だってことですね。

預金を引き出すだけなら、このまま家族のふりを通したりもするのですが、今日の目的は名義変更です。家族で通すわけにもいきません。
「失礼ですが、お客様は……」
「ご本人様です」
私です、とは言いません。ちょっとふざけて「ご本人様」と名乗ります。そうすると、窓口の空気も和みます。

どうせ名前が変わったことを証明する書類を出さなければならないので、ここで車の運転免許証を提示します。表側を見せながら、
「この名前が……」
免許証を裏返して
「この名前に変わりました」
免許証はそのまま窓口に置いておきます。
「あ、はい……」
きっと今、テラーの頭の中は真っ白。どうしたらいいか戸惑う様子が伝わってきます。今日のテラーはどぎまぎ型。

見た目は女性なのに元の性別は男性だと知ったときの反応はいろいろです。今日のように表情も声もどぎまぎしてしまう人もいれば、戸惑いをポーカーフェイスの裏に隠すプロもいますし、呆気 (あっけ) にとられて目が点になる人もいます。この顔が面白いんだよ……って、あまり面白がっててもいけませんが。

名義の変更には30分以上かかります。その間、先ほどのテラーの顔を思い出しては、ひとりで くすくす笑っていました。

でも、笑ってばかりもいられません。