目次
第1回: 切羽詰まって詰められて
第2回: 仕事運 御一行様 ご招待
第3回: もうちょっとかわいがって
「文章書くの、得意?」
「好きですよー」
文章を書く仕事もしてますしね。
「じゃーさ、これやって欲しいんだけど」
どれどれ……、キャッチコピー?
「広告を載せるんだけど、そのキャッチをね」
広告は、キャッチコピーもボディコピーも書いたことありますよー。以前の勤務先で、社長が高く評価してくれました。コピーを書いた数日後、営業マンのブースから社長の声が漏れてきたんです。「広告のコピーで困ってんの? みぃに書かせたら? あいつ、結構書くぜ。○○ (広告代理店の担当者) よりよっぽどいいぞ」ってね。あ、自慢話になっちゃいました?
見せられたのは、A4 1枚のコピー案。さっきから しかめっ面で見てたのは、これなのね。だらだらと教義くさいボディコピーと、自治体の標語みたいなキャッチコピー。コンセプトが不明確だとか、インパクトが弱いとか、そのスジの人からさんざんダメ出しがあったんだそうです。確かにダサダサのキャッチですが、それにしても……
広告屋から突き返されたものが私のところに来たわけ?
(∂_∂;) う……、とんでもないのを引き受けちゃったよ。
もう後には引けません。詳しい内容を聞く前に能書きを垂れたことを後悔するばかり。紹介する商品のことをほとんど知りませんが、コピーを書かなければなりません。
「このページに、この大きさで載せるんだよ。……あ、待って。こっちのページだった」
いつの間にか広告枠を丸ごと任されています。最初は「キャッチコピーを考えて」と言われていたはずですが、気のせいでしょうか。まぁ、キャッチだけより、枠を好きなように使えたほうがコピーを書きやすくて助かります。
「締切はいつでしょうか」
「今日か明日」
はぁ!? いきなりそれ!? ってゆーか、そんなに切羽詰まるまで放置してたの!?
ますます とんでもないことになってきました。引き受けた後にヤバい事実が次々と判明します。こんな役回りを引き受けてしまうなんて、私って世渡り下手かも。(気づくの遅すぎ。)
もう、どうにでもなれ。
いずれにしても、今回のコピーライティングは夜までの数時間で勝負を決めるつもりでいました。翌日には既に別の仕事が入っており、そのスケジュールはもう動かせませんから。
仕事モード入りまーす!
コピー機の横にあった裏紙を大量に引っ張り出し、広告主をとっ捕まえて電撃インタビュー。広告の狙いと、広告主や商品の背景をとことん聞き出します。走り書きのメモ、メモ、メモ。何だか取材記者みたい。
一通り聞き出したら、さんざん書き散らしたメモを机いっぱいに広げて、イメージを膨らませます。商品の性格を伝えるだけでは飽き足らない。広告主の思いも重ねて、物語性のあるコピーを組み立てたい。みんなであーだこーだ言いながら、思いついた言葉を書き出していきます。
きわどいフレーズも飛び出して、わーっと盛り上がった後、一段落。
落ち着いちゃったね。しばらくフレーズは出てこないかも。帰ろっと。
電車の中でも、思いついたフレーズをちょこちょこメモしていきます。
家に帰って荷物を置いた途端に、ひとつのキーワードが思い浮かびました。さらに、メイクを落としている最中に、ポッポッポッと連鎖的にいくつかのフレーズが浮かんできました。
いけるかも。
さっそくメモ。メモすれば、もうこのフレーズは忘れて構いません。次のアイデア出しに集中できます。
落ち着いたところで、先ほどのメモをキャッチコピーとボディコピーに起こします。あらかじめイメージを膨らませてあるので、フレーズはすいすい書けます。コピーの書き起こしは、ものの1分であっけなく終了。広告主から聞き出したコンセプトやストーリーがコピーのどの部分に対応しているかの説明を添えて、企画書できあがりー♪
コピーが書き上がった後も、頭の中では、無意識のうちに推敲 (すいこう) が続いています。改変案をひらめいたのは歯みがき中。企画書をちょこちょこと微修正します。基本的に、アイデアは洗面所で飛び出すみたいです。社長、私のデスクに鏡とシンクを設置してくださーい! 水道の蛇口は、シャワーヘッドが伸びるタイプで。
「キャッチコピーを考えて」と最初に言われたときは「とんでもない仕事を引き受けちゃったよー」と思いましたが、何年かぶりにコピーを考えていると、意外と面白くて、気がつけば夜遅くまでコピーをいじり回していました。「もう、どうにでもなれ」と観念した仕事が、どうにかなって、ブログのネタになりました。
「何だよー」とか言いながらも、やることはやる「みぃ」です。
えらいっ☆
ヾ(≧∇≦)〃 すぺしゃる えらいっ☆
おやすみなさいです。
一応横にはなりますが、テンションが高すぎて眠れそうにありません。うぴゅ。
(次回に続く)