(前回から続く)
公共職業安定所 (ハローワーク) が個人の戸籍上の性別を調べる可能性はあるのでしょうか。
私の性別は、戸籍と住民基本台帳に記録されています。今は女性として生活していても、もともと男の子として生まれた関係で、法的には男性として記録されています。
戸籍に性別欄はありませんが、続柄として長男・長女などと記載され、実質的に性別が表示されることになります。
(注: 条文番号などの表記は原文のまま。以下、本文中では算用数字で表記しますが、引用中では原文のまま漢数字で表記します。)
一方、住民基本台帳の記載事項は住民基本台帳法 (昭和42年7月25日法律第81号、最終改正平成21年7月15日法律第77号) 第5条と第7条で規定されています。
第3項「男女の別」をハローワークが知ることができるかどうか、ということです。
ハローワークは国 (厚生労働省) が設置する行政機関です。
住民基本台帳法では、国の機関は住民基本台帳の一部の写しを閲覧したり、住民票の写し等を交付させたりする権限を持つと規定されています。
第11条と第12条の2は、いずれも第7条第3号「男女の別」を対象としていますから、ハローワークは合法的に個人の性別を調べることが可能です。
ただし、ハローワークが個人の性別を調べられるとしても、ハローワークの職員が実務で性別を調べなければ安泰です。かつて男性として就職したときの記録と照合されないことを祈るばかりです。
住民基本台帳法では、住民の利便を増進するという目的が掲げられています。
住民基本台帳法によって私の生活の幅が狭まってしまいます。これも「住民の利便を増進」していることになるのでしょうか。
(次回に続く)
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公共職業安定所 (ハローワーク) が個人の戸籍上の性別を調べる可能性はあるのでしょうか。
私の性別は、戸籍と住民基本台帳に記録されています。今は女性として生活していても、もともと男の子として生まれた関係で、法的には男性として記録されています。
戸籍に性別欄はありませんが、続柄として長男・長女などと記載され、実質的に性別が表示されることになります。
参考: 戸籍法 (昭和22年12月22日法律224号、最終改正平成19年5月11日法律第35号)
第十三条 戸籍には、本籍の外、戸籍内の各人について、左の事項を記載しなければならない。
一 氏名
二 出生の年月日
三 戸籍に入つた原因及び年月日
四 実父母の氏名及び実父母との続柄
五 養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄
六~七 略
八 その他法務省令で定める事項
(注: 条文番号などの表記は原文のまま。以下、本文中では算用数字で表記しますが、引用中では原文のまま漢数字で表記します。)
一方、住民基本台帳の記載事項は住民基本台帳法 (昭和42年7月25日法律第81号、最終改正平成21年7月15日法律第77号) 第5条と第7条で規定されています。
(住民基本台帳の備付け)
第五条 市町村は、住民基本台帳を備え、その住民につき、第七条に規定する事項を記録するものとする。
(住民票の記載事項)
第七条 住民票には、次に掲げる事項について記載(前条第三項の規定により磁気ディスクをもつて調製する住民票にあつては、記録。以下同じ。)をする。
一 氏名
二 出生の年月日
三 男女の別
四~十二 略
十三 住民票コード(番号、記号その他の符号であつて総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)
十四 前各号に掲げる事項のほか、政令で定める事項
第3項「男女の別」をハローワークが知ることができるかどうか、ということです。
ハローワークは国 (厚生労働省) が設置する行政機関です。
参考: 厚生労働省設置法 (平成11年7月16日法律第97号、最終改正平成21年6月5日法律第49号)
第二十三条 都道府県労働局の所掌事務(前条第一項の規定により労働基準監督署に分掌された事務を除く
。)の一部を分掌させるため、所要の地に、公共職業安定所を置く。
2~3 略
住民基本台帳法では、国の機関は住民基本台帳の一部の写しを閲覧したり、住民票の写し等を交付させたりする権限を持つと規定されています。
(国又は地方公共団体の機関の請求による住民基本台帳の一部の写しの閲覧)
第十一条 国又は地方公共団体の機関は、法令で定める事務の遂行のために必要である場合には、市町村長に対し、当該市町村が備える住民基本台帳のうち第七条第一号から第三号まで及び第七号に掲げる事項(同号に掲げる事項については、住所とする。以下この項において同じ。)に係る部分の写し(第六条第三項の規定により磁気ディスクをもつて住民票を調製することにより住民基本台帳を作成している市町村にあつては、当該住民基本台帳に記録されている事項のうち第七条第一号から第三号まで及び第七号に掲げる事項を記載した書類。以下この条、次条及び第五十一条において「住民基本台帳の一部の写し」という。)を当該国又は地方公共団体の機関の職員で当該国又は地方公共団体の機関が指定するものに閲覧させることを請求することができる。
(第2項以降省略)
(国又は地方公共団体の機関の請求による住民票の写し等の交付)
第十二条の二 国又は地方公共団体の機関は、法令で定める事務の遂行のために必要である場合には、市町村長に対し、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者に係る住民票の写しで第七条第十三号に掲げる事項の記載を省略したもの又は住民票記載事項証明書で同条第一号から第十二号まで及び第十四号に掲げる事項に関するものの交付を請求することができる。
2~3 略
4 市町村長は、特別の請求がない限り、第一項に規定する住民票の写しの交付の請求があつたときは、第七条第四号、第五号、第九号から第十二号まで及び第十四号に掲げる事項の全部又は一部の記載を省略した写しを交付することができる。
5 略
第11条と第12条の2は、いずれも第7条第3号「男女の別」を対象としていますから、ハローワークは合法的に個人の性別を調べることが可能です。
ただし、ハローワークが個人の性別を調べられるとしても、ハローワークの職員が実務で性別を調べなければ安泰です。かつて男性として就職したときの記録と照合されないことを祈るばかりです。
住民基本台帳法では、住民の利便を増進するという目的が掲げられています。
(目的)
第一条 この法律は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)において、住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り、あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため、住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め、もつて住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とする。
住民基本台帳法によって私の生活の幅が狭まってしまいます。これも「住民の利便を増進」していることになるのでしょうか。
(次回に続く)
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