日本維新の会がワクチン接種会場へ大量の飲み物を寄付認める「選挙の事前運動の疑い」
2021/08/11 10:35
(AERA dot.)
「最初はみんな普通に飲んでいたのですが、貼られた紙をみて、ちょっと変だなと…」
こう話すのは、大阪市の大阪市大規模接種センターの会場であるインテックス大阪でワクチン接種に従事する医療関係者のAさんだ。AERAdot.に提供してくれた画像にはこう記されていた。
<大阪市大規模接種センターにおけるお茶等の飲料については、以下の団体からご寄付をいただいております。
・日本維新の会(6/8〜)
・株式会社〇〇〇(7/5〜)>
そして、手書きで<ご自由にお飲みください>という貼り紙もあった。
Aさんが違和感を持ったのは「日本維新の会」が提供していると記されていた点だ。
「もうすぐ衆議院が解散して、選挙があることは大抵の人が知っていることですから」(Aさん)
大阪市大規模接種センターの会場となっているインテックス大阪は普段、展示場などとして利用される。大阪市内の中心部から距離がある場所に位置するため、シャトルバスが運行され、1日で最大3500人程度が接種できる体制という。医師など医療関係者と大阪市職員ら約300人以上が毎日、接種の作業にあたっている。
会場が稼働したのは、6月7日。張り紙の日付からすると、その次の日から、飲料水が提供されたことになる。置かれているのは、水、お茶、スポーツドリンクなど。常温のものと、冷蔵庫で冷やされたものがあるという。置かれている場所は、医療関係者のロッカー室と接種会場の通路だ。
「接種会場に向かうために通る場所に置いてあるので、スタッフなら誰でもタダで貰えます」(Aさん)
そこで問題視されているのは、公職選挙法との関係だ。元法相の河井克行被告、元経産相の菅原一秀氏も公職選挙法違反を問われた。法律では有権者への政治家、その後援団体からの寄付は一切、禁じられている。日本維新の会からの提供というのは、公職選挙法で定める寄附行為に該当するのではないか、という疑いが生じているのだ。東京地検特捜部元検事の落合洋司弁護士はこう指摘する。
「飲料水を提供していることが、公職選挙法の寄付にあたるかどうか。政治家が自分の選挙区に寄付したらまずいが、日本維新の会は政党です。飲料水のお金を誰が出しているかが重要。また、日本維新の会が飲料水を提供していることで、選挙の事前運動になっていないかというポイントもありますね。衆院選では比例代表の投票は、大阪市なら近畿ブロックとなります。日本維新の会から出馬する候補者もいるでしょう。政党の名前を貼りだして寄附というのは、誤解を招きかねない。いかがなものかと思いますね」
一方。大阪市にも見解を聞いてみた。
「暑い季節に医療関係者に何か飲み物を提供できないかと、松井市長から事務方に話がありました。しかし、税金から支出をするのは難しいという判断になりました。そこで日本維新の会からご寄付として提供を頂けることになりました。お茶、水、スポーツドリンク、コーヒーなどがあります。一時期、お菓子もありました。非常に好評でした。公職選挙法の寄附行為に該当するということは特段、検討したことはございません」
日本維新の会にも見解を尋ねると、こう回答した。
「身を切る改革として寄附先を探していたところ、大規模接種会場にて好意で来ていただいたボランティアの皆様に何も無いと伺ったので飲料の提供を始めた。原資は、日本維新の会の国会議員団の身を切る改革(ボーナスの3割相当)からあてている。これまでも各地の罹災した都道府県や市町村に寄附をしている。コロナ禍においても現金や医療用マスクや手袋などを寄附している。今回もその延長線上です」
公職選挙法に触れないという見解だった。冒頭のAさんはワクチン接種業務に従事していて感じることがあるという。
「ワクチン供給量の問題があるのでしょうが、コロコロと予定がかわること。そのたびに、勤務の日程調整で『この日に出勤してもらえないか』などと言われて、大変です。6月にはじまったときは、1週間で40時間を超えるような業務を求められた人もいます。後日、労働基準監督署からチェックがあるとまずいからと見直されたようです」
また、一部の看護師には接種会場までの交通費の支払いが遅れているという。接種会場の貼り紙にもこう記されていた。
<交通費の件 6月については、入金されていると思います>
Aさんと同様に接種会場で働いているBさんはこう話す。
「ワクチン接種業務以外のこと、例えば、休憩時間を端末に記録しろと言っていたのが、急に不要と変わった。指示が朝令暮改です。ワクチン供給が足らなくて、トラブルになるのは仕方ないので我慢しますが、全体的なシステムを医療関係者に負担がかからない格好でやってほしい。個人的感想としては、仕事量が多くて、私自身も含めて、疲れ果てている人もけっこういる。人員が全体的に不足気味に思います」
大阪市にこの件についても見解を尋ねた。
「大阪市では交通費の請求は、毎月締め切りの期日があり、それに間に合わないと遅れる場合があります。人員は問題ないと思っております」
これまで大阪市ではワクチン接種を予約したにもかかわらず、ミスで取り消されたこともあった。高齢者施設従事者用のワクチン接種券を別の施設へ誤って送付するなど、複数のトラブルが判明している。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めが効かない状況でワクチン接種は国民の最大の関心事だ。これ以上、問題が生じないよう願うばかりだ。
(AERAdot.編集部 今西憲之)
こう話すのは、大阪市の大阪市大規模接種センターの会場であるインテックス大阪でワクチン接種に従事する医療関係者のAさんだ。AERAdot.に提供してくれた画像にはこう記されていた。
<大阪市大規模接種センターにおけるお茶等の飲料については、以下の団体からご寄付をいただいております。
・日本維新の会(6/8〜)
・株式会社〇〇〇(7/5〜)>
そして、手書きで<ご自由にお飲みください>という貼り紙もあった。
Aさんが違和感を持ったのは「日本維新の会」が提供していると記されていた点だ。
「もうすぐ衆議院が解散して、選挙があることは大抵の人が知っていることですから」(Aさん)
大阪市大規模接種センターの会場となっているインテックス大阪は普段、展示場などとして利用される。大阪市内の中心部から距離がある場所に位置するため、シャトルバスが運行され、1日で最大3500人程度が接種できる体制という。医師など医療関係者と大阪市職員ら約300人以上が毎日、接種の作業にあたっている。
会場が稼働したのは、6月7日。張り紙の日付からすると、その次の日から、飲料水が提供されたことになる。置かれているのは、水、お茶、スポーツドリンクなど。常温のものと、冷蔵庫で冷やされたものがあるという。置かれている場所は、医療関係者のロッカー室と接種会場の通路だ。
「接種会場に向かうために通る場所に置いてあるので、スタッフなら誰でもタダで貰えます」(Aさん)
そこで問題視されているのは、公職選挙法との関係だ。元法相の河井克行被告、元経産相の菅原一秀氏も公職選挙法違反を問われた。法律では有権者への政治家、その後援団体からの寄付は一切、禁じられている。日本維新の会からの提供というのは、公職選挙法で定める寄附行為に該当するのではないか、という疑いが生じているのだ。東京地検特捜部元検事の落合洋司弁護士はこう指摘する。
「飲料水を提供していることが、公職選挙法の寄付にあたるかどうか。政治家が自分の選挙区に寄付したらまずいが、日本維新の会は政党です。飲料水のお金を誰が出しているかが重要。また、日本維新の会が飲料水を提供していることで、選挙の事前運動になっていないかというポイントもありますね。衆院選では比例代表の投票は、大阪市なら近畿ブロックとなります。日本維新の会から出馬する候補者もいるでしょう。政党の名前を貼りだして寄附というのは、誤解を招きかねない。いかがなものかと思いますね」
一方。大阪市にも見解を聞いてみた。
「暑い季節に医療関係者に何か飲み物を提供できないかと、松井市長から事務方に話がありました。しかし、税金から支出をするのは難しいという判断になりました。そこで日本維新の会からご寄付として提供を頂けることになりました。お茶、水、スポーツドリンク、コーヒーなどがあります。一時期、お菓子もありました。非常に好評でした。公職選挙法の寄附行為に該当するということは特段、検討したことはございません」
日本維新の会にも見解を尋ねると、こう回答した。
「身を切る改革として寄附先を探していたところ、大規模接種会場にて好意で来ていただいたボランティアの皆様に何も無いと伺ったので飲料の提供を始めた。原資は、日本維新の会の国会議員団の身を切る改革(ボーナスの3割相当)からあてている。これまでも各地の罹災した都道府県や市町村に寄附をしている。コロナ禍においても現金や医療用マスクや手袋などを寄附している。今回もその延長線上です」
公職選挙法に触れないという見解だった。冒頭のAさんはワクチン接種業務に従事していて感じることがあるという。
「ワクチン供給量の問題があるのでしょうが、コロコロと予定がかわること。そのたびに、勤務の日程調整で『この日に出勤してもらえないか』などと言われて、大変です。6月にはじまったときは、1週間で40時間を超えるような業務を求められた人もいます。後日、労働基準監督署からチェックがあるとまずいからと見直されたようです」
また、一部の看護師には接種会場までの交通費の支払いが遅れているという。接種会場の貼り紙にもこう記されていた。
<交通費の件 6月については、入金されていると思います>
Aさんと同様に接種会場で働いているBさんはこう話す。
「ワクチン接種業務以外のこと、例えば、休憩時間を端末に記録しろと言っていたのが、急に不要と変わった。指示が朝令暮改です。ワクチン供給が足らなくて、トラブルになるのは仕方ないので我慢しますが、全体的なシステムを医療関係者に負担がかからない格好でやってほしい。個人的感想としては、仕事量が多くて、私自身も含めて、疲れ果てている人もけっこういる。人員が全体的に不足気味に思います」
大阪市にこの件についても見解を尋ねた。
「大阪市では交通費の請求は、毎月締め切りの期日があり、それに間に合わないと遅れる場合があります。人員は問題ないと思っております」
これまで大阪市ではワクチン接種を予約したにもかかわらず、ミスで取り消されたこともあった。高齢者施設従事者用のワクチン接種券を別の施設へ誤って送付するなど、複数のトラブルが判明している。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めが効かない状況でワクチン接種は国民の最大の関心事だ。これ以上、問題が生じないよう願うばかりだ。
(AERAdot.編集部 今西憲之)