まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか | |
クリエーター情報なし | |
ダイヤモンド社 |
「ブラック・スワン」でもよく知られるタレブ氏の一冊。
かつてのコメントではこう書いてます。
「聞き慣れない独特の用語や言い回しが多い書籍で、全体を通して耳障りがよい読み やすい書籍とは言いかねる。
が、指摘されている内容はかなり興味深いものがあり、とりわけ、あちこちで耳に する多くの「大もうけした」話のうさんくささとその意味のなさを理解するためには 有用な書籍であると言える。
本書の内容について著者が主張したかったことのすべてを理解するのは難しい。 が、いくつかの点については素直に理解することができた。
本書の中で私自身が特に納得したのは、以下のような点であった。
確率論と生存者バイアス
確率的に可能性がある生き残った「すごいパフォーマンス」は、実は実力ではなく て、確率的に当然生じるたまたまの結果にすぎない。 「株で○億大もうけ」は当然生じる結果にすぎないということ。投資関係ではこう した内容の書籍は未だに多いと感じる。
後知恵、後講釈
既にわかっている過去の結果について、それにあてはまるような法則性を後から見 つけだすことは、実はほとんど意味がない場合が多い。 多くのテクニカル分析とやらはこれに近い。
期待値
小さく高い確率で勝ったとしても、低い確率であっても破綻するほど大きく負けて しまえばなにもならない。
書名の「まぐれ」であるが、私自身、主として株式投資の経験の中でいくつかの 「まぐれ」「幸運」「たまたま」に恵まれてきた。実は個々の運用能力よりも、こう した「まぐれ」に当たるかどうかが投資の成績の上では相当に大きな位置を占めるの ではないかと常々感じてきた。
例えば、以前にIPOの公募株を最低単位で取得し、これを初値で売却しただけで 500万以上の利益を確定したことがあるのだが、これなど「まぐれ」以外の何者で もない。が、この「まぐれ」に至るには、それを実現するための前提条件の部分で自 分自身が判断を下している部分はあるため、これを単なる「まぐれ」とはとらえたく ないという心理がはたらきがちになることも否定はできない。
実はこうした「まぐれ」のおかげで、私自身は気楽に運用を続けることができてい るわけである。
実際の日々の運用や売買の中では、私自身は大きな利益が出た時は「まぐれ」、逆 に大きな損失が出た時は「もっとうまく対処できたのに」と考えることが多い。株式 投資を始めたごく最初の頃に「俺って結構うまいんと違うか~」と思ったことはある が、最近はそういうことはなくなった。
本書の中でふれられている内容ではないが、確実に言えることは、株式投資をはじ めとした投資、あるいは金融商品の売買を行うのであれば、コストを意識し、それを 安くするように心がけることは、少し考えれば誰でもできるし、それは運用成績に確 実に効果があるということだ。」
今読んでも基本的にはこのコメントどおりの感想だと思います。
それはあなたが(私が)うまいのではなくて、まぐれ、たまたま。
で、起きそうもないどえりゃー事態というのは意外にわりとよく起こったりする。
本書の内容の本質はこういうことだと思います。
表題の「なぜ」に答えるなら「そう思いたいから」ということになるかな。
投資には「まぐれ」「たまたま」「偶然」、あるいはそれとほぼ同義の「確率的必然」というのがかなり大きな要素としてあります。
それは、まあ人生全般でも同じか。
それをどう活かすか殺すか、あるいは、その「まぐれ」「たまたま」に恵まれる前提条件、確率をどう高めるか、そこが重要だと思います。
言い回しはやや難解ですが、これはじっくり読めばためになる一冊。妙なうぬぼれや思い込みは危険です。そこからは早めに脱した方がいいと思います。