続 JALウェイズ機のエンジン破損事故

 昨日に続いて、JAL系列のJALウェイズのDC-10のエンジントラブルについて、今日も書く。

事故を起こしたJO058便(福岡空港発/ホノルル空港行)の機材は旧McDonnell Douglas社(Boeing社と合併)製のDC-10-40である。登録記号はJA8545で、おそらく1980年に製造され同年12月20日にJALの機材として登録されている。現在もJAL所有の機体であるが、運行はJALグループのリゾート便を担当するJALウェイズが行っている。

 このDC-10-40はエンジンを左右の主翼の下に1発ずつ、そして垂直尾翼の付け根にもう1発のエンジンを搭載している3発機である。かつてはBoeing727やLockheed L-1011TriStar、MD-10そして今回事故を起こしたMD-10と数機種が日本の空を飛んでいた3発機であるが、退役が進み今回事故を起こしたDC-10-40も2005年度末までにはすべて退役の予定となっていた。

 さて、トラブルを起こした左翼の第1エンジンであるが、これはP&W社製のJT9D-59A型というエンジンである(大型機の場合、P&W、GE、R-Rの中からエアラインの好みで搭載エンジンを選択できるのが一般的)。このエンジンに対して今年6月に国土交通省が航空各社に対して、エンジン破損の恐れがあるとして防止措置を取るように求めるTCD(滞空性改善通報)を出していたのだという。P&W JT9D型エンジンはJALが1970年代初期に導入し100/100B/200B/300各型747にも搭載されている。先に「航空各社に通達」と書いたが、対象のなるのは実はJALのみなのである。

 6月にだされたTCDに対してJALは「2010年4月までには当該部品を改良型に交換する」と報告し、国交省はこれを了承していたという。TCDによれば、エンジン内の耐熱合金製カバーに亀裂が生じ、そばにあるタービンブレードの脱落を引き起こし、落ちたブレードにより高速回転するエンジン内部が破壊され、破片が飛散する可能性があるとされているという。今回の事故はまさにその可能性が現実のものとなった感が強いが、こればかりは詳しい調査を待つしかないだろう。

 私がここで問題にしたいのは、JALが2010年4月まで対応するとし、国交省がこれを了承した点である。先に書いたようにJT9D-59Aエンジンを搭載したDC-10-40は2006年3月までには退役することが決まっていたのである。また、同種のエンジンを搭載した初期型747もその多くが2010年4月までにはその多くの退役が予定されていたはずである。

 だとするとJALが提示した2010年4月には、JT9D型エンジンを搭載した機体は存在していないのではないのか。つまりJALはJT9D型エンジンを搭載機が退役するまで改修を待つよう国交省に申し入れをして、国交省もそれを承知の上で了承したのではないか。

 実効性のまったくないTCDを形式的に出し、これに対し自社にとって都合の良い回答をするJAL。国交省から天下ったJALの役員と、JALに天下りたい国交省の役人の間で行われた茶番劇ではないのかと勘繰りたくなるのは、私だけだろうか。


 いつもながら記事とは無関係の今日の1枚は、木槿(ムクゲ)。まずまずのが撮れたかな?と思って帰って来たのですが、確認してみたら葉っぱが虫食いでした。ちょっとがっかり。
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