唐松林の中に小屋を建て、晴れた日には畑を耕し雨の日にはセロを弾いて暮したい、そんな郷秋<Gauche>の気ままな独り言。
郷秋<Gauche>の独り言
始まりはフェリペ・マッサ
ライッコネンがタイトルへの望みをつなぎ、フェラーリが復活の狼煙を(少し)上げたハンガリーGPを終え3週間の夏休みに入ったF1サーカスだが、その間話題がなくなったかと言うとさに非ず。見ようによってはレースよりも面白く、また盛り上がるのも来シーズンに向けての移籍話である。レースのない3週間に話題提供のサービスか。
さて、噂はいろいろあったが、チームから最初に正式なニュースがリリースされたのはフェリペ・マッサのフェラーリ移籍だ。
マッサは2001年F3000ユーロシリーズにおいて 8戦中6勝の好成績を残して翌2002年ザウバーからF1にデビュー。2003年はフェラーリのテストドライバーを務め2004年から再度ザウバーのレースドライバーに復帰し今シーズンに至っているブラジル人ドライバーである。ザウバーのエンジンはフェラーリ製のものであり、2003年にはフェラーリのテストドライバーを務めているマッサでもあり、以前から噂にもなっていたのでこの移籍は驚くに値しない。
興味の中心は、このマッサのフェラーリ移籍が引き起こす玉突き現象にある。まずは2000年からチームメイトとしてワールドチャンピョンをサポートしてきた「史上最強のNo.2」バリチェロの去就である。彼は2006年までフェラーリで走る契約書にサインしていたはずだが、F1の世界では契約書など何の拘束力も持たないことは周知の事実である。
現在のF1は10チームが20台のマシンとレースドライバーを擁しているが、その他に各チーム2名程度のテストドライバーを抱えている。テストドライバーは多くの場合3rdドライバーでもあり、レースドライバーに事故があれば3rdドライバーのうちどちらかがレースに出走する。
つまり、世界でF1ドライバーと呼ばれるのはおおよそ30名と言うことになる。この30名の中からF1を卒業する(させられる)ドライバーが数名、そして下のカテゴリからF1に進級したいドライバーが10数名、合計40~50名程で30のイスを奪い合う「イス取りゲーム」(注1)をこれから約半年間かけて展開するのである。
トップチームのトップドライバーはまさしく「腕」を見込まれて移籍するが、中堅以下のチームの中堅以下のドライバーの移籍で最も重要な問題は「腕」ではなく、いったいくらのスポンサーマネーをチームに持ち込むことが出来るかということである。言ってみればカネでシートを買うという、このスポーツ特有のものでもある。
持ち込むものがカネではなく「現物」、つまりエンジンと言うこともある。日本人F1ドライバーの多くが残念ながらこの手でF1のシートを掴んで来た。
日本人初のレギュラーF1ドライバーとなった中嶋悟が当時最強と言われたホンダV6ターボエンジンを後ろ盾に名門ロータスからデビューしたのがこの良い例だ。もっとも、中嶋がチーム・ロータスのドライバーとして相応しいだけの「腕」を持っていたからこそ実現したF1デビューであったことも彼の名誉のために書いておかねばならない。
そうはいいながらも、ホンダの後ろ盾を失った中嶋がロータスからティレルに移籍することが出来たのはホンダエンジンへの期待と共に(事実後年ホンダ-無限エンジンがティレルに供給されている)EPSONとPIAAという強力なスポンサーを中嶋が持っていたからであるのもまた事実。F1は本音と建前、虚と実が常に渾然一体となった魑魅魍魎(注2)の世界なのである。
さて、日本の多くのF1ファンにとって、今年の「イス取りゲーム」最大の関心は佐藤琢磨の去就であろう。不運と共に自らのミスにより多くのレースを失ってきた今シーズンの琢磨もようやくハンガリーGPでポイントを獲得した。だがしかし、彼が来シーズンのBARのシートを確実なものにするには、残り6戦、毎レースの入賞あるいはバトンを上回る予選グリッドの獲得という高いハードルを越えなければならないだろうことは想像に難くない。
ハンガリーGPで今シーズン初ポイントを獲得し、プライベートでも嬉しいニュースのあった琢磨の更なる奮起に期待したい。
注1:この「イス取りゲーム」のことを(普通は)ストーブリーグと言います。一般的にスポーツ選手のチーム移籍話はシーズンオフである冬の間にされますので「ストーブ」リーグと呼ばれますが、F1の移籍話はシーズン中、夏の間に始まってしまいますので、ストーブじゃないだということで「プールリーグ」と呼ばれることもあります。
注2:「ちみ・もうりょう」と読みます。魑魅は山の怪物、魍魎は川の怪物の意味。「魑魅魍魎」とつなげると様々な化物という意味に、「魑魅魍魎の世界」は、普通の人には理解の出来ない、得たいの知れない世界という意味になります。
今日はモノクロームの写真を1枚。デジタルで撮影してPhotoshopで色を削除したものです。なかなかモノクロフィルムでの撮影・現像を開始できないでおります。[ 撮影:すみよしの森 ]
さて、噂はいろいろあったが、チームから最初に正式なニュースがリリースされたのはフェリペ・マッサのフェラーリ移籍だ。
マッサは2001年F3000ユーロシリーズにおいて 8戦中6勝の好成績を残して翌2002年ザウバーからF1にデビュー。2003年はフェラーリのテストドライバーを務め2004年から再度ザウバーのレースドライバーに復帰し今シーズンに至っているブラジル人ドライバーである。ザウバーのエンジンはフェラーリ製のものであり、2003年にはフェラーリのテストドライバーを務めているマッサでもあり、以前から噂にもなっていたのでこの移籍は驚くに値しない。
興味の中心は、このマッサのフェラーリ移籍が引き起こす玉突き現象にある。まずは2000年からチームメイトとしてワールドチャンピョンをサポートしてきた「史上最強のNo.2」バリチェロの去就である。彼は2006年までフェラーリで走る契約書にサインしていたはずだが、F1の世界では契約書など何の拘束力も持たないことは周知の事実である。
現在のF1は10チームが20台のマシンとレースドライバーを擁しているが、その他に各チーム2名程度のテストドライバーを抱えている。テストドライバーは多くの場合3rdドライバーでもあり、レースドライバーに事故があれば3rdドライバーのうちどちらかがレースに出走する。
つまり、世界でF1ドライバーと呼ばれるのはおおよそ30名と言うことになる。この30名の中からF1を卒業する(させられる)ドライバーが数名、そして下のカテゴリからF1に進級したいドライバーが10数名、合計40~50名程で30のイスを奪い合う「イス取りゲーム」(注1)をこれから約半年間かけて展開するのである。
トップチームのトップドライバーはまさしく「腕」を見込まれて移籍するが、中堅以下のチームの中堅以下のドライバーの移籍で最も重要な問題は「腕」ではなく、いったいくらのスポンサーマネーをチームに持ち込むことが出来るかということである。言ってみればカネでシートを買うという、このスポーツ特有のものでもある。
持ち込むものがカネではなく「現物」、つまりエンジンと言うこともある。日本人F1ドライバーの多くが残念ながらこの手でF1のシートを掴んで来た。
日本人初のレギュラーF1ドライバーとなった中嶋悟が当時最強と言われたホンダV6ターボエンジンを後ろ盾に名門ロータスからデビューしたのがこの良い例だ。もっとも、中嶋がチーム・ロータスのドライバーとして相応しいだけの「腕」を持っていたからこそ実現したF1デビューであったことも彼の名誉のために書いておかねばならない。
そうはいいながらも、ホンダの後ろ盾を失った中嶋がロータスからティレルに移籍することが出来たのはホンダエンジンへの期待と共に(事実後年ホンダ-無限エンジンがティレルに供給されている)EPSONとPIAAという強力なスポンサーを中嶋が持っていたからであるのもまた事実。F1は本音と建前、虚と実が常に渾然一体となった魑魅魍魎(注2)の世界なのである。
さて、日本の多くのF1ファンにとって、今年の「イス取りゲーム」最大の関心は佐藤琢磨の去就であろう。不運と共に自らのミスにより多くのレースを失ってきた今シーズンの琢磨もようやくハンガリーGPでポイントを獲得した。だがしかし、彼が来シーズンのBARのシートを確実なものにするには、残り6戦、毎レースの入賞あるいはバトンを上回る予選グリッドの獲得という高いハードルを越えなければならないだろうことは想像に難くない。
ハンガリーGPで今シーズン初ポイントを獲得し、プライベートでも嬉しいニュースのあった琢磨の更なる奮起に期待したい。
注1:この「イス取りゲーム」のことを(普通は)ストーブリーグと言います。一般的にスポーツ選手のチーム移籍話はシーズンオフである冬の間にされますので「ストーブ」リーグと呼ばれますが、F1の移籍話はシーズン中、夏の間に始まってしまいますので、ストーブじゃないだということで「プールリーグ」と呼ばれることもあります。
注2:「ちみ・もうりょう」と読みます。魑魅は山の怪物、魍魎は川の怪物の意味。「魑魅魍魎」とつなげると様々な化物という意味に、「魑魅魍魎の世界」は、普通の人には理解の出来ない、得たいの知れない世界という意味になります。
今日はモノクロームの写真を1枚。デジタルで撮影してPhotoshopで色を削除したものです。なかなかモノクロフィルムでの撮影・現像を開始できないでおります。[ 撮影:すみよしの森 ]
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