弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

ニューパルツの同性婚証明書とLaw&Order知事の恋人

2011年09月20日 | Law&Order

海外ドラマは一度見ただけでは理解できないことは
判事ディードの解説を始めたときに気づきました。

ということでLaw&Orderも録画してみるようにしています。
特にLaw&Orderはスピーディなので、さらにその思いがあります。
アメリカのABC放送(日本のNHKなどとも提携しているようです)の
朝番組(グッドモーニングアメリカ)のキャスターのロビン・ロバートさんは
アメリカの現実を知るためにLaw&Orderを録画し、最低5回は見ている
ということでした。
エクスパートというべき人ですらそうなのですね。

今では、ニューヨーク州でも同性婚を合法化する法律ができた(2011年)
ように法整備も整い、手続きも明確化されました。

このドラマが取り上げたニューヨーク州のニューパルツという小さな村で
緑の党から当選した若い(26歳)村長さんが同性婚について結婚証明書
を発行すると発表したのが2004年2月27日とのことです。
村長には認定証をを発行する権限がないので、結婚証明書の有効性を
巡って、ひと騒動があったようです。
Law&Orderの15シリーズの7話の知事の恋人はそこからヒントを
得たのではないでかと分析しました。

ドラマが出した結論、とりあえずは無効というのは、一つの考えなのだと
思います。

さて、この回で私が勉強したこと
1 保釈の手づづき
  保釈を認めるかどうかは検察、弁護人が裁判所に出頭して決める
  のですが、その手続きが、我々日本人にも理解できるように描写されて
  いました。 
  保釈金500万ドル、パスポートの提供が条件でした。
  パスポートを取り上げるのは、普通なのですね。
  IMF専務理事の場合もそうでしたし、イギリスではアサンジ氏の場合が
  そうでした。
  大体理解できました。

2 セリーナ検事補が大陪審の日程が入っていると言っていましたので、
  この後、大陪審で起訴をきめたのですね。
  ただ、この場面はドラマでは省略でした。

3 アメリカでは配偶者の証言免責特権があり、これが有罪証明の大きな
  障害になっているらしいことは、いろんなドラマで見ていますが、
  今回は同性婚の配偶者の場合まで、免責特権を認めるべきかどうか
  でした。
  もちろん、法律に従った同性婚の場合は、当然認められるのでしょうが、
  このドラマでは、法律はなく(ニューヨーク州の場合、前述のとおり
  今年になってからです)、小さな村の一村長さんの独断によるものだと
  いうことが争点だったのです。
  刑事事件の裁判官が免責特権を認めたので、マッコイ検事補は、上級審
  に判断を仰ぐことにしたのです。
  このやりとりも面白かったです。

4 イギリスもそうでしたが、アメリカの裁判所の仕組みもわかりにくいですが、
  今回のドラマで少しわかりました。
  これについては、また別の機会にします。

5 折角、免責特権は認めないとの判決をもらったのに、今度は、人格を否定
  されたということで、証言を拒否されました。 
  すぐに法廷侮辱罪に問われるのですね。 
  このあたりは人間心理の問題です。

6 結局、マッコイは取引をすることにしました。
  最初は絶対にしないと強気でしたが、方針転換です。
   強い動機(会社の存続にかかわる)等はあるものの、凶器との関係が
  弱いからです(どこにでもある量産品)。
  陪審員の評決について、検察側も弁護側も自信が持てないということで
  双方歩み寄ることになったのです。
  このあたりのやりとりも参考になりました。
  交渉のときに何を材料にするか、駆け引きです。神経戦です。
  日本でも同じです(刑事では取引はありませんが、民事の和解や
  示談交渉についてです)。

7 取引が成立すると、裁判官に報告、判決の言い渡しになりますが、
  この場面は省略です。
  日本の民事事件での訴訟上の和解をイメージすれば、理解が早い
  ようです。

8 地区検事のアーサー・ブランチは政治ポスト(選挙)ですが、同性婚
  の免責特権について上級審に持ち込むことは、選挙にはマイナスに
  なることや、そういう状況での記者さんに対する説明の仕方は
  なかなかうまかったと思いました。
  (残念ながらアーサー・ブランチの英語はほとんど聞き取れませんが)

日本にいて、かなり詳細なことまで勉強できるのは嬉しいことです。