弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

日本女性がアメリカからの長女連れ去りを認める(ウィスコンシン州)

2011年11月23日 | 裁判・法律

渉外結婚が離婚に終わったとき、日本の女性は大抵こどもを
連れて日本に帰ることが多いです。
アメリカでどのような判決が出ようが、女性たちが日本にいる限り
あまり関係がありません。

このいわゆるウィスコンシンの事件は、たまたま女性が永住権の更新の
ためにハワイに戻ってしまい、そこで逮捕されたものです。
かなり前に三浦氏がやはりグアムに行ってアメリカ側で逮捕されたことが
ありました。
アメリカというのはそういう国ですから、本来はハワイなどに行くべきでは
なかったのですが、軽率だったのか、あるいは逮捕の危険を冒してでも
アメリカの永住権がほしかったかです。

いずれにしても、21日、ウィスコンシン州の裁判所で親権妨害罪の裁判が
あり、当初は、女性は、無罪を主張していましたが、裁判になれば有罪となり、
最大7年半の懲役刑の可能性があるので、
有罪を認め、司法取引することにしたとのことです。
長女をクリスマスまでにアメリカに戻すこと等が条件です。
その場合には、未決勾留期間程度ですむということですし、また、アメリカに
居住することもできるということです。
アメリカの永住権に対するこだわりを考えると、司法取引しかあり得なかった
と思います。

さて、現地の報道によると、日米間で同様の連れ去りのケースは300件ほど
あり、本件はアメリカに戻すことを認めて解決した初めての事例ということで、
この9歳の少女は円満解決事例のシンボル的存在になるのではと期待されて
いるようです。
現地の報道はここをどうぞ。

アメリカの永住権がほしいのなら、やはりアメリカの法律を尊重するのは
当然のことです。

今まで日本は特別だからという理由で、G7の国のうち、ヘーグ条約を批准
していない唯一の国です。
しかしながら、子供にとっては、どちらも親です。
洗脳して父親を遠ざけるというのではなく、それぞれの法律制度の違いや
親権についての考え方の違いを認めつつも、
可能な限り譲歩・妥協し、子供のために一番いい方法も見つけるよう
工夫すべきです。

そういう意味で、今回のケースは有意義な先例と評価したいと思います。

最近のTPPもそうですが、零か100かではない現実的な解決点を見出すための
努力、そこに着地させるための努力や工夫をもっとすべきだと思います。