弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

片親引き離し症候群(Parental Alienation Syndrome)

2011年10月24日 | ひろみ塾・法律編

片親引き離し症候群て初めて知りました。

Law&Orderのスピンオフ版LAで出た言葉です。

なお、Law&Orderは、ニューヨークが舞台ですが、LA版はカリフォルニア
が舞台です。
私がみたのは、タイガー・ウッドの事件にヒントを得て制作されたものです。
ヒントはきっかけだけで、その後の展開は全く関係がないようでした。
タイガーウッドの結末はみんな知っていますし、こどももまだまだ小さかったです。

この片親引き離し症候群(Parental Alienation Syndrome)、PASという
聞きなれないコンセプトは、
ゴルファーの息子がセックス依存症の父親と関係のある女性
(実際はこの女性は同性愛者だったのですが)の一人を
殺害したとして起訴されて事件で、実行犯は息子であったとしても、
背後で糸を引いていたのは母親だと見抜いた検察が、母親、つまりは
妻を殺人教唆で起訴する根拠として持ち出したものです。

つまり、母親は夫の異常な女性関係に悩まされていたので、そういう妻としての
夫に対する嫌悪感を常々息子に伝えていたのです。
子供は、母親の言葉をそっくりそのまま、自分の言葉として話します。
こういう状況を、母親が子供を、洗脳していた、あるいは刷り込みをしていたと
考えるわけです。

例によって、裁判官室で、弁護側と検察側で激しい議論が展開されますが、
裁判官は、この概念を認めるかどうかの結論を保留にしたまま、
さしあたり、妻に対する起訴を認め審理をすることを許可しました。
ということで、法廷では専門家を呼んで証人尋問が行われました。
しかし、最終的には、判事は、陪審員に対しては、
このPASに関する部分は無視するように説示すると決めました。

また、例によってここで、いろいろな駆け引きがありますが、ここでは
無視します。
なお、例によって、脱線しますが、
日本でも裁判官と弁護士・検察側が直接こういうやり取りができると
争いの実態を裁判官が実地に勉強でき、非常識な判断、誤判がなくなる
と思います。

ということで、調べてみました。
片親引き離し症候群という訳もこういうことに関心のある個人がブログ掲載に
あたって、翻訳命名したもののようです。
そもそものParental Alienation Syndromeについては、Wilipediaで
調べてみました。
1980年代にアメリカの精神科医のガードナーという人が作り出した用語だということです。

そして、アメリカ、カナダ、イギリスで、裁判で主張されたことがあるようですが、
今のところ正式な病名としては認められていないようです。
イギリスでは、控訴審の判決(認めない)があるようです。
アメリカでは2件、いずれもニューヨークの裁判所の例ですが、認められておらず、
特に1件については、控訴審の判決(認めない)もあるということでした。
ということで、Law&Orderのスピンオフ版LAでの裁判官の説示は、こういう流れが
あったのです。

ただ、そもそもPASの本籍は親権争いの場面です。
ここでは、父親に対する単独親権を認める理由としてPAS理論が使われて
いる例もあるということです。

離婚事件をみていると、子供が親に利用される、犠牲になるということは
良くあることです。意識していないことが多いようですが・・・

定義用語があると理解が早いので、日本でも、PAS理論が法廷に現れることも
そう遠くはないかもしれません。


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