広がる格差
もうガマンできない“貧困”
子どもを養えない、低賃金で生活できない、働くことすらできない…。東京都内で二十四日、「もうガマンできない!広がる貧困」と題した初の集会が開かれ、派遣労働者やシングルマザー、DV被害者、多重債務者、難病患者らさまざまな「社会的弱者」が一堂に会して声を上げた。格差社会が招いた貧困を直視し、連携を図ろうと、幅広い支援者らが企画。「人間らしい生活と労働の保障」を求めた。 (重村敦)
「下の子たちを引き取るころに、長男の児童扶養手当が削減されたら、とても困ります」
東京都の清野美和さん(44)は、NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事に付き添われて壇上に立ち、切々と訴えた。
障害のある小学二年の長男と、三歳の三つ子の娘がいる。昨年離婚。三つ子の娘を児童養護施設に預け、長男と母子自立支援施設で暮らしている。派遣会社に登録したが、まだ仕事がなく、児童扶養手当と東京都の児童育成手当が頼りだ。
「家賃が安い都営住宅に入りたいのですが、まだ当たらなくて…」と声を落とした。
今でも苦しいのに、国が進める社会保障費の削減が一層不安をかきたてる。児童扶養手当は二〇〇八年度から、五年を超える受給者は半額に引き下げられる。生活保護費も、老齢加算の廃止に続き、母子加算が四月から三年かけ、廃止される。
また、障害者行政では、障害者自立支援法に基づくサービス利用の費用負担が始まり、移動介護やホームヘルプなどのサービスをあきらめる人が出ている。
労働の分野では、派遣労働などの規制緩和の流れが低賃金や不安定な非正規雇用を激増させた。
集会は、危機感を募らせた支援者らが「団結」を呼びかけて開いた。連合も含め労働関係、女性問題、障害者運動、精神医療、ホームレスなどさまざまな団体の関係者が参加した。
会場は定員を大幅に上回る約四百二十人で埋まった。清野さんら九人が体験を発表。月収十五万円に満たない派遣労働者、生活保護で食いつなぐ三十代の男性、暴力をふるう夫から逃れ、生活保護などで子どもを養うタイの女性、仕事が見つからず、障害者手帳も交付されない難病患者…。
なぜ貧困が広がっているのか。冒頭であいさつした実行委員長で多重債務救済に取り組む宇都宮健児弁護士は「憲法十三条の幸福追求権などを実現するのは政府の責務。それがきちっと果たされていないから貧困が広がっている」と断じた。生活が苦しいのは努力が足りないからだとの風潮もあるが、ホームレス支援のNPO「もやい」の湯浅誠事務局長は「努力しないように見える人は死んでも仕方ないのか。貧困は自己責任論を超えている」と強調した。
シンポジウムでは、各分野のリーダーたちが貧困問題の解決に向けたネットワークづくりの具体案を出し合った。
赤石理事は「同じ立場の人たちの連帯と同時に異なるバックグラウンドの人たちがどう連帯するか。貧しい人たちがバッシングし合っている現状を考えると、その論理を超えた言葉を作って共有しないと」と提案。
障害者運動の「NPO法人DPI日本会議」の三沢了議長は「障害者の問題も障害者だけでは解決せず、社会保障の仕組みを検討し直す時期だ。富の偏在をただすべき政治の怠慢を追及する必要がある」と指摘した。
連合生活福祉局長の小島茂さんは、連合が積極的雇用政策と新たな最低生活保障制度をまとめたことを紹介し、「労働組合の復権」を力説した。
実行委員会は今後、生活と労働を保障する政策などをまとめ、政府に要望する方針。宇都宮さんは「協議会のようなネットワークをつくり、政策課題を明確にし、国会へのロビー活動もしていきたい」と語った。
もうガマンできない“貧困”
子どもを養えない、低賃金で生活できない、働くことすらできない…。東京都内で二十四日、「もうガマンできない!広がる貧困」と題した初の集会が開かれ、派遣労働者やシングルマザー、DV被害者、多重債務者、難病患者らさまざまな「社会的弱者」が一堂に会して声を上げた。格差社会が招いた貧困を直視し、連携を図ろうと、幅広い支援者らが企画。「人間らしい生活と労働の保障」を求めた。 (重村敦)
「下の子たちを引き取るころに、長男の児童扶養手当が削減されたら、とても困ります」
東京都の清野美和さん(44)は、NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事に付き添われて壇上に立ち、切々と訴えた。
障害のある小学二年の長男と、三歳の三つ子の娘がいる。昨年離婚。三つ子の娘を児童養護施設に預け、長男と母子自立支援施設で暮らしている。派遣会社に登録したが、まだ仕事がなく、児童扶養手当と東京都の児童育成手当が頼りだ。
「家賃が安い都営住宅に入りたいのですが、まだ当たらなくて…」と声を落とした。
今でも苦しいのに、国が進める社会保障費の削減が一層不安をかきたてる。児童扶養手当は二〇〇八年度から、五年を超える受給者は半額に引き下げられる。生活保護費も、老齢加算の廃止に続き、母子加算が四月から三年かけ、廃止される。
また、障害者行政では、障害者自立支援法に基づくサービス利用の費用負担が始まり、移動介護やホームヘルプなどのサービスをあきらめる人が出ている。
労働の分野では、派遣労働などの規制緩和の流れが低賃金や不安定な非正規雇用を激増させた。
集会は、危機感を募らせた支援者らが「団結」を呼びかけて開いた。連合も含め労働関係、女性問題、障害者運動、精神医療、ホームレスなどさまざまな団体の関係者が参加した。
会場は定員を大幅に上回る約四百二十人で埋まった。清野さんら九人が体験を発表。月収十五万円に満たない派遣労働者、生活保護で食いつなぐ三十代の男性、暴力をふるう夫から逃れ、生活保護などで子どもを養うタイの女性、仕事が見つからず、障害者手帳も交付されない難病患者…。
なぜ貧困が広がっているのか。冒頭であいさつした実行委員長で多重債務救済に取り組む宇都宮健児弁護士は「憲法十三条の幸福追求権などを実現するのは政府の責務。それがきちっと果たされていないから貧困が広がっている」と断じた。生活が苦しいのは努力が足りないからだとの風潮もあるが、ホームレス支援のNPO「もやい」の湯浅誠事務局長は「努力しないように見える人は死んでも仕方ないのか。貧困は自己責任論を超えている」と強調した。
シンポジウムでは、各分野のリーダーたちが貧困問題の解決に向けたネットワークづくりの具体案を出し合った。
赤石理事は「同じ立場の人たちの連帯と同時に異なるバックグラウンドの人たちがどう連帯するか。貧しい人たちがバッシングし合っている現状を考えると、その論理を超えた言葉を作って共有しないと」と提案。
障害者運動の「NPO法人DPI日本会議」の三沢了議長は「障害者の問題も障害者だけでは解決せず、社会保障の仕組みを検討し直す時期だ。富の偏在をただすべき政治の怠慢を追及する必要がある」と指摘した。
連合生活福祉局長の小島茂さんは、連合が積極的雇用政策と新たな最低生活保障制度をまとめたことを紹介し、「労働組合の復権」を力説した。
実行委員会は今後、生活と労働を保障する政策などをまとめ、政府に要望する方針。宇都宮さんは「協議会のようなネットワークをつくり、政策課題を明確にし、国会へのロビー活動もしていきたい」と語った。