国連の「障がい者の権利条約」が採択されて、8月で1年になります。
それでも日本政府は署名も未だにしておりません。
こんな事で、本当に障がい者の社会参加は進むのでしょうか・・・・・・・?
障がい者の社会参加は進むのか
障害者権利条約 日本は署名もいまだせず
(2007-06-03 15:30)
総理官邸に障がい者を招いてのパフォーマンスをしている政府ですが、国連で採択された「障害者の権利条約」(以下、権利条約)を批准するとしながら、国内法を整備する動きがほとんどありません。今度の権利条約は「子ども」「女性」などに続く8番目のもので、3月に80カ国以上が署名していますが、日本は署名すらしていません。
内閣府が2月に発表した「障害者に関する世論調査」で、「障害者権利条約の周知度」を調べています。「知っている人」が18.3%、「知らない」が78.7%であり、まだあまり知られていませんし、関係者の中でもまだ問題意識が低いように思われます。
差別禁止・障害者施策の改善を
千葉県で都道府県単位初の差別禁止条例が成立し、今年から施行されます。地域で暮らしたい障害者を受け入れてもらったり、施設内での虐待をなくしたりなど、障害者が普通に生きていくための応援をしてくれるものとして期待されています。これを国レベルに広げたいという関係者の思いを後押しするのが、今回の権利条約です。
条約第2条「定義」では「障害に基づく差別」は、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であるとして、それを除去するために「合理的配慮」を求めています。「合理的配慮」とは、障害がない人と同じ権利と基本的自由を行使するために必要ことを指しています。例えば、障害者自立支援法では働くのにも1割負担が必要です。障害がない人が働くのに1割負担を求められることはありません。これは、「合理的配慮」を欠いていると言わざるを得ません。特別の保護を求めるのでなく、普通の市民が持つ権利を障がい者にも保障すべきというものです。
福岡市営地下鉄トイレ(撮影:下川悦治) 右の写真は福岡市営地下鉄のトイレです。「みんなのトイレ」と呼ばれていて「車いす使用者」だけのものではありません。オストメイト(人工肛門装着)、赤ちゃんのためのベッドなど、みんなにやさしいトイレです。これは、ひとつのユニバーサルデザインといえるでしょう。こうした設備を普及していくのを法的に後押ししていくためにも、権利条約の批准と国内法の整備が求められます。
差別の禁止については、2004年の「障害者基本法」改正によって「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。」と第3条第3項に追加されました。しかし、これについての実定法が無いので、なんら強制力がありません。そこで、「差別禁止法」制定の願いが強まっています。今回の権利条約の批准を求めていく中でさらに要望は高まっていくでしょう。
「黒船」待望論――制定に至る過程
2001年12月、第56回国連総会は、メキシコ提案の「障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的総合的な国際条約」決議案が出されて、論議が開始されました。1980年代に国連は世界行動計画を策定、1983年~1992年を「国連・障害者の10年」として計画実現を各国に呼びかけました。それは、世界的に大きな動きとなり、日本でも大きな転換点となりました。障がい者問題を政策課題として位置づけざるを得なくなり、地方自治体を巻き込んでの行動計画策定へと動き出しました。現在の障がい者福祉の起点だったと言えるでしょう。1990年にはアメリカでの差別禁止法 ADA法が制定されました。しかし、日本での反応は弱く、国連などへの期待は高まっていました。しかしながら、ADA法が本当に障がい者に役立っているかについては異論もありますが、障がい者の権利擁護の動きは強まっています。
早急の批准と国内法の整備を
日本政府の反応は芳しくありません。国内法の整備が必要なのに「合理的配慮」の状態の確認と法整備の動きが見えてきません。「子どもの権利条約」の批准も世界で158番目です。これまでの権利条約に対する姿勢、千葉での条例制定に対する厚い壁などを考えると容易なことではなさそうです。これには、思いやりとか、ふれあいなどとかいった情緒的な観念でなく、何が、「合理的配慮」なのかという基準が必要です。例えば、ホームドアのない駅のへホームは、視覚障がい者、てんかんの人など転落の危険を抱えている人の外出を抑制していないかなどもあるでしょう。その改善のための国内法の見直し、差別禁止法の制定などが必要です。
それでも日本政府は署名も未だにしておりません。
こんな事で、本当に障がい者の社会参加は進むのでしょうか・・・・・・・?
障がい者の社会参加は進むのか
障害者権利条約 日本は署名もいまだせず
(2007-06-03 15:30)
総理官邸に障がい者を招いてのパフォーマンスをしている政府ですが、国連で採択された「障害者の権利条約」(以下、権利条約)を批准するとしながら、国内法を整備する動きがほとんどありません。今度の権利条約は「子ども」「女性」などに続く8番目のもので、3月に80カ国以上が署名していますが、日本は署名すらしていません。
内閣府が2月に発表した「障害者に関する世論調査」で、「障害者権利条約の周知度」を調べています。「知っている人」が18.3%、「知らない」が78.7%であり、まだあまり知られていませんし、関係者の中でもまだ問題意識が低いように思われます。
差別禁止・障害者施策の改善を
千葉県で都道府県単位初の差別禁止条例が成立し、今年から施行されます。地域で暮らしたい障害者を受け入れてもらったり、施設内での虐待をなくしたりなど、障害者が普通に生きていくための応援をしてくれるものとして期待されています。これを国レベルに広げたいという関係者の思いを後押しするのが、今回の権利条約です。
条約第2条「定義」では「障害に基づく差別」は、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であるとして、それを除去するために「合理的配慮」を求めています。「合理的配慮」とは、障害がない人と同じ権利と基本的自由を行使するために必要ことを指しています。例えば、障害者自立支援法では働くのにも1割負担が必要です。障害がない人が働くのに1割負担を求められることはありません。これは、「合理的配慮」を欠いていると言わざるを得ません。特別の保護を求めるのでなく、普通の市民が持つ権利を障がい者にも保障すべきというものです。
福岡市営地下鉄トイレ(撮影:下川悦治) 右の写真は福岡市営地下鉄のトイレです。「みんなのトイレ」と呼ばれていて「車いす使用者」だけのものではありません。オストメイト(人工肛門装着)、赤ちゃんのためのベッドなど、みんなにやさしいトイレです。これは、ひとつのユニバーサルデザインといえるでしょう。こうした設備を普及していくのを法的に後押ししていくためにも、権利条約の批准と国内法の整備が求められます。
差別の禁止については、2004年の「障害者基本法」改正によって「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。」と第3条第3項に追加されました。しかし、これについての実定法が無いので、なんら強制力がありません。そこで、「差別禁止法」制定の願いが強まっています。今回の権利条約の批准を求めていく中でさらに要望は高まっていくでしょう。
「黒船」待望論――制定に至る過程
2001年12月、第56回国連総会は、メキシコ提案の「障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的総合的な国際条約」決議案が出されて、論議が開始されました。1980年代に国連は世界行動計画を策定、1983年~1992年を「国連・障害者の10年」として計画実現を各国に呼びかけました。それは、世界的に大きな動きとなり、日本でも大きな転換点となりました。障がい者問題を政策課題として位置づけざるを得なくなり、地方自治体を巻き込んでの行動計画策定へと動き出しました。現在の障がい者福祉の起点だったと言えるでしょう。1990年にはアメリカでの差別禁止法 ADA法が制定されました。しかし、日本での反応は弱く、国連などへの期待は高まっていました。しかしながら、ADA法が本当に障がい者に役立っているかについては異論もありますが、障がい者の権利擁護の動きは強まっています。
早急の批准と国内法の整備を
日本政府の反応は芳しくありません。国内法の整備が必要なのに「合理的配慮」の状態の確認と法整備の動きが見えてきません。「子どもの権利条約」の批准も世界で158番目です。これまでの権利条約に対する姿勢、千葉での条例制定に対する厚い壁などを考えると容易なことではなさそうです。これには、思いやりとか、ふれあいなどとかいった情緒的な観念でなく、何が、「合理的配慮」なのかという基準が必要です。例えば、ホームドアのない駅のへホームは、視覚障がい者、てんかんの人など転落の危険を抱えている人の外出を抑制していないかなどもあるでしょう。その改善のための国内法の見直し、差別禁止法の制定などが必要です。