きのう、日本の暗澹たる経済予測をBSTBS『報道1930』で聞いて、2009年に民主党政権ができたときが、妙に懐かしく思い出された。当時、日本は何かとても明るい未来が広がっていたような気がする。
民主党が、日本初のマニフェスト選挙で、自民党を破ったのである。「コンクリートからヒトへ」の方針が約束されていた。それまで、自民党政権は景気浮揚のために、赤字予算を組んで、公共事業(コンクリート)への財政出動をしてきたが、その効果がないことが、社会的に共通認識になっていた。それより福祉や教育に税金を使おうということである。子どもはみんなで育てるものという考えもマニフェストに打ち出された。
自民党が2012年12月16日の総選挙で勝ち、マニフェスト選挙が日本社会から失われた。「ヒトからコンクリートへ」の逆襲が始まった。利益誘導型の政治に戻った。
2011年3月11日に岩手、宮城、福島、茨城、千葉に高さ30メートルの津波が襲い、堤防、港湾施設、家屋が破壊された。この復興が日本の経済浮揚に寄与するとエコノミストが言ったが、そうはならなかった。津波の被害を受けた地元の経済復興に恩恵がいかず、東京の土木建設業界に恩恵が行っただけである。
「コンクリート」事業は基本的にいまも続いているが、東京の土木建設企業が潤っているだけで、現場ではたらいているのは外国人労働者だという状態が続いている。
安倍政権は、「アベノミクス」「3本の矢」を掲げた。財政出動、金利政策、経済成長戦略のことである。これ自体は別に新しいものではない。が、なぜかメディアはこれを賞賛した。安倍政権はメディアを取り込むことでなりたっていたのである。選挙には、自民党のために広告業界がすばらしいキャッチコピーとポスターを用意した。
金利政策は円安を意図したものである。「異次元の金融緩和」とか、電通の組んで言葉で飾ったものである。
メディアは「経済成長戦略」がないと批判したが、本当の問題は規制緩和という名目で経営者を甘やかしたことである。経営者のモラル崩壊を促したのである。
日本の財政出動の問題は、金の流れ先がどう決まるのか、公平なのか、また額は妥当なのか、それが不透明なのである。仕事は政府から元請けに流され、そこから下請け、孫請け、ひ孫請けとどんどん末端にいくが、複雑怪奇になっており、景気浮揚に効果なく、単に、経済界、政治家たちの腐敗を育てるだけである。
もともと、経済成長戦略を政府が企画し実行することなんてできっこない。政府の仕事は、世界の農業を含む全産業の動向の報告と日本経済の実態を示す統計データを出すことである。何が成長産業なのか、日本や世界ではどのような需要があり、どう変わっていくのかの予測をだすことである。政府は別に製造業や農業の生産活動を管理する権限も能力もない。また、政府が国民の税金を使って特定の企業を応援してはいけない。
安倍政権のもっともしてはならない犯罪は、株価操作をして、株価を上げ続けたことである。赤字国債を膨らましただけでなく、年金機構や日銀を破綻の危機に晒している。今、赤字国債は膨らみ続け、円安はどんどん進み、物価高は今後も加速することが予測されている。岩井克人が資本主義の危機というハイパー・インフレーションの入り口に日本はいる。円安をくいとめるには、日銀がマイナス金利政策をやめる必要があるが、日銀がそうした場合、株価が急落し、また、赤字国債を抱えた日銀が破産するリスクあるという。
きのうの『報道1930』は、岸田文雄がアベノミクスを否定し、政府の強いリーダシップののもとに、日本の経済危機脱出を図るべきだということである。
しかし、参院選をみていると、安倍晋三が自民党候補の応援を行っている。岸田文雄には危機意識があるのだろうか。自民党が自ら招いた日本の経済的危機を、中国が敵国だ、ロシアが敵国だ、北朝鮮が敵国だと、軍事的危機を煽り、ごまかして乗り切ろうとしているように見える。日本の未来をますます暗くしている。日本には軍事費を2倍にする経済的余裕は全くない。それだけなく、モラルがなく、ただただ暴力的な日本人がふえていくのが私は怖い。