またもや、役人が安倍晋三首相にそんたくして、オーストリアの首都ウィーンで開かれている芸術展「ジャパン・アンリミテッド」の共催を取り消し、助成金の交付を拒否した。
この芸術展は、オーストリアと日本との国交樹立150年を記念した事業の一環として、今年の1月に共催が決まっていたものである。そして、9月26日から展示がすでに始まっていた。
ところが、日本のネット上で、10月半ば以降、同展について「反日プロパガンダ」「日本を誹謗(ひぼう)中傷している」などの書き込みが相次いだ。日本会議国会議員懇談会の自民党の大西宏幸や長尾敬も共催とりやめを働きかけたと新聞記事にある。
菅官房長官は、記者会見で、10月30日に外務省が共催を取り消し、助成金の交付をやめたという。理由は外務省に聞けという。
じつは、芸術展「ジャパン・アンリミテッド」とは、日本の政治的表現の制限に立ち向かう芸術家というテーマで企画されたものだから、日本政府のタブーにふれるのはあたりまえである。
同展のホームページに次のようにはっきりと書かれている。
“the exhibition "Japan Unlimited" will feature some of the most prominent and active artists from Japan who confront the limits and freedoms of political-sociocritical art”
“confront”は「立ち向かう」という意味である。
だから、今回の事件は、表現の自由に不寛容な日本を、国際的に示すものである。
新聞記事などによると、「反日的」といわれるものは、安倍晋三に似た人物が中国や韓国に謝罪する動画や、東電の社長や副社長が原発事故を謝罪する作品や動画や、昭和天皇とマッカーサーが並ぶ写真に似せた作品などらしい。別に反日的であるのではなく、日本の権力者に対する「嘲笑」である。これらの展示を理由に共催を突然やめ、助成金をださないというのは、政治的表現の自由を否定するものと言わざるを得ない。
丸山眞男は日本にはファシズムがなかったというが、私が思うに、幕末や明治維新の尊王攘夷、富国強兵はまさに日本型ファシズムで、イタリア型やドイツ型と違い、一人による独裁が行われなかったが、天皇を精神的象徴に祭り上げ、元老集団による専制政治が行われ、大国日本、軍国日本にばく進した。
戦後、私たちの親の世代は、これらの日本型ファシズムを追放できなかった。昭和天皇は下剋上で自分の思うように政治を動かせなかったと後悔の念を側近にいう。ファシズムは「下剋上」なのである。
そして、岸信介が再建しようとした日本型ファシズム復活の応援団が、孫の安倍晋三の時代になって、日本会議やネット右翼の形で、実を結びそうになっている。
テレビによると、女系天皇反対に関連して、安倍晋三は、たかだか70年の憲法よりも、2000年の歴史をもつ天皇制の伝統を守らなければいけない、と言っているようだ。
だから、表現の自由にたいする不寛容は、許してはならない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます