きょうの朝日新聞に『ミスター円・榊原氏が語った円安 「円安がプラスの時代は終わった」』の記事が載った。1ドルが何円に相当するかの為替レートのグラフがとくに興味をひいた。円安と円高が思いほか繰り返している。1ドル何円かの縦軸は上下反転しているから、上が円高で、下が円安である。
榊原英資は、昔「ミスター円」と言われた人で、財務省役人時代、アメリカ政府と議論ができ、1995年の円高をアメリカとの協調介入で下げた人である。その後は一転して円高が望ましいという論陣を張った人である。私には懐かしい人だが、現役の官僚は老人の発言をどう受け止めているのだろう。
よく円安が良いとか悪いとかは言うが、絶対値の問題ではない。円安に進んでいるか、円高に進んでいるかの問題である。
私は1977年にカナダに研究者として渡って行ったとき、私の妻は全貯金をカナダ・ドルに換えた。その後、円高、カナダ・ドル安が進み、4年後に日本に戻るとき、手持ちのドルを円に交換しても、元の半値にもならないので、癪だから、持ち金をすべてカナダでの買い物に使って帰国した。
ドル安とはドルの価値がなくなることで、円安とは円の価値がなくなることである。
日本に生活していて日本円で貯蓄していれば、円高になれば金持ちになる。円安になれば貧乏になる。だから、円安が進むなら悪い、円高が進む方が良いのに決まっている。
80歳を超えた榊原が「円安がプラスの時代は終わった」と、いま、わざわざ言わなければならないほど、「円安がプラス」と考えている人が多数いるのだろうか、不思議である。
昔は、日本国が絶対的に貧乏だったから、すなわち、ドル建ての外貨準備が少なかったから、輸出輸入のバランスがプラスでないといけなかった。円安に傾くことは、日本人の賃金が国際比較で安くなることだから、安い価格の商品を輸出できることになる。それで、円安はプラスと考える経営者や官僚や政治家が多かった。
しかし、いま、日本人の食生活は昔と違い外国産のものを多く食しているから、円高は直に物価高を招く。賃金が国際比較で安くなったことをみんなが肌で感ずる。
榊原が円安が悪いとの発言をわざわざしたのは、対アベノミクスの観点からではないか。アベノミクスは日本経済に害以外なんにも与えなかった。
株価を操作して釣り上げた。株価がずっと上がり続けるのなら、経済の拡大に寄与するかもしれない。しかし、株価を操作で上げ続けることは無理である。
同じように、金利を下げつづけることも無理である。銀行の経営が難しくなるからだ。銀行の窓口に行くとリストラや店舗の縮小がすすみ、行員がかわいそうなほどピリピリしている。
きのうの朝日新聞には、安倍晋三が自民党内や財務省のアベノミクス批判に激怒しているとある。安倍晋三の自慢は、日銀を政府の子会社にしたこと、円安を招いたことである。年老いた榊原は、人生最後の一仕事として、現役官僚のアベノミクス批判に援護の手を差し伸べたのではないか、と思う。
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