いよいよ

２年前に胃癌の再発が判明し
その後抗がん剤治療が始まったＳさん
手を変え品を変え
治療を行ってきた

腫瘍マーカーが上がればがっくりし
治療を変えてマーカーが下がると
Ｓさんも私も喜んだ

抗がん剤での完治がまずないことは
治療当初からお話していたが
Ｓさんやその奥さんだけでなく
私自身もまだいけるのではないかとついつい思っていた

しかし

３か月前まで
大好きな五るつを楽しんでいたＳさんも
今や病院のベッドで
夢と現を行ったり来たり

別れの日は
近い

因果応報

いかなる個人も
善悪併せ持つ
善き面　悪しき面が
その時々に顔をのぞかせる

癌になると
過去の己の悪しき面にスポットを当て
反省や後悔しきりの人がいる

でも
短い個人の人生の中で
因果応報なんて
必ず成り立つ法則でも何でもないし
発がんに至っては
己が行動とはほとんど関係なく
長生きするほどに避けがたい現象なのだ

ひょっとしたら
悪い奴ほど長生きするということがあるのかもしれないが
自分が悪いから
癌になるわけではない

多少生活習慣が影響することがあったかもしれないが
そんなの微々たるものだろうし
なってからそこのところをほじくり返しても無意味
なぜ癌になったのかと自分の落ち度を探そうなんてことは止めましょう

日本人の三分の一が癌で死に
　　　　二分の一が癌になる
　じゃあ　日本人の半数が悪人？

日本人のほとんどが何らかの病を得て死ぬ
　じゃあ　日本人のほとんどが悪人？

日本人のすべてが　　　　　死ぬ
　全員悪人だ！

余命は？

長い時間を共にしてきた家族が
癌のために衰弱し始めた時
その家族は余命を比較的長く思い描くような気がする

いつ急変してもおかしくないことを伝えようとしていた矢先に
介護保険の申請の相談を受けたりすることもある

そこには願いも込められているのだろうが
何よりもこれまで共に生きてきた人が
月単位　週単位　日単にで最期を迎えることが
納得いかないし　ピンとこないということがあるのだろう

亡くなった後でも
当分はその事実に得心がいかないのが人間だから
仕方ないですね

そこのところを理解したうえで
説明していくように心がけているけれど
理解と言うより
情の上での納得ということなので
なかなか難しい

老体に鞭打ち

今週は
日本内視鏡外科学会に参加してきた

鏡視下手術は好きなので
ほぼ毎年演題をエントリーして参加している

外科領域で
熱い分野なので
集まる人間もやる気満々
自分の発表だけでなく
三日間さまざまな発表を聞いてきた

もう少し現役を続け
よりよいものを後進に残したい
と強く思った

脂っ気

手術中に頭がかゆくなってもかけないので
若いころから毎日頭を洗う

ただ数年前から
頭がかゆくなることがほとんどなくなった

脂っ気が
抜けてきたかなぁ…

程遠い

バイクを乗り換え一カ月弱
２０００Ｋｍほど乗ったが
まだまだ一体感には程遠い

やはり最低１万ｋｍは跨らないと
人馬一体
とはならないのでしょうね

バイクに限らず

技術というのは
見えたと思っても
次の瞬間
それまで見えていなかったものが現れ
まだまだ
と思い知らされるものですけどね

一病息災

再発の可能性が高い
と予想された
直腸がんのＹさん
手術の時には
癌に小腸も巻き込まれ
低位前方切除と共に小腸も切除した方だ

術後６年が経ち
再発の可能性も極めて低くなった

こうなってくると
直腸癌ではなく
余病への注意が必要になってくる

今回
コレステロールが
正常値を越えてきた

聞くと
血圧が高いとも言われたらしい

やせた方なのだが
こうなってくると
成人病対策をする必要が出て来る

次回もう一度
脂質の検査をして
必要なら
内科に紹介ですね

オリオン

朝早く
新聞を取りに玄関を出ると
まだ暗い空に
オリオン座が輝いている

１～２週間前には
ちょうど南中していたが
今日は既に少し西に傾いでいる

これから冬に向け
夜の星座となる準備に入っている

時はずんずん流れる

早めに

癌の末期には
徐々に全身状態が悪くなる
と思っている人が多い

しかし多くの場合
階段を下りるように
ストン　ストン　と悪くなる
時にはまさに転げ落ちるようなことも

まだまだ大丈夫
と思っているうちに
思えるうちに
やろうと思うことは
早めにやっておく必要がある

急に状態が悪くなり
緊急入院となったら
そのまま家に帰れない
というようなことも珍しくないのだから

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進行胃癌に対して治療を行ってきたNさん
春頃には黄疸が出現
一旦入院していただいたが
放射線治療が効を奏して
外来治療を行ってきた
その間大好きなゴルフも続けてきた
しかしここに来て急に体調が悪くなり
緊急入院

黄疸を軽減するためにドレーンを入れ
消化管の通過が悪いので鼻からチューブを入れ
胸に水がたまり肺を圧迫しているので胸にもチューブを入れ・・・

なんとかもう一度家に帰ることができないか
いろいろ模索中だが
かなり難しい状況だ

なかなか…

なかなか
死ぬのも大変ね
もっと楽に逝けると
思っていたのに…

肺がん末期
骨転移による痛みが強いときの
訴え


楽に逝けるかどうか
生き様とと同様
さまざま

少しでも
苦痛を少なくする努力はしますが

ある日

いい子だ
と思われていた子が
ある日突然暴れだす
なんてことが世の中にはあります

本人の中では
我慢に我慢を重ね
鬱々たるものがあったのかもしれず
ある日
ぷっちーん
となるのでしょうか


抗がん剤で
手を変え品を変え
抑え続けた癌にも
同じようなことが起きる

一年　二年
とコントロール出来ていた癌が
あるとき
一気に牙を剥くのだ

その変化は
驚くべきもので
週単位でみるみる状態が悪化する

治療を受ける側も　行う側も
まだしばらくいけるかもしれない
と思う心の油断をあざ笑うかのように
猛威をふるい始めると
もう何をやってもなだめることはできない

昼夜兼行

突貫工事
不眠不休
昼夜兼行

最近は
夜働く人間が
多くなり
当たり前になってきたせいなのか
上記の四字熟語を見かける機会が少なくなった気がする

ライトに照らし出される
明るい夜が出現し
夜の闇が身近で無くなったから
「夜」を意識しなくなってきたこともあるのかもしれない

そう言えば
夜のお仕事
というのも
何を指すのか
わかりづらくなったかな

やりたいことを

山好きには
よいシーズン到来

大腸がんの再発に対し
抗がん剤治療を続けている　Ｉさんは
山登りが趣味

治療の選択肢が少なくなり
主治医は
手術の可能性を探り
ＰＥＴ検査を行ったが
再発巣は複数あり
手術適応とはならなかった

「山登りは止めたほうがよいですかね？」

「山登りが直接癌に悪影響を及ぼすとは聞いたことがありませんよ。
しっかり楽しんでください」

「よかった」

抗がん剤治療で
完治することはまずない

少しでもやりたいこと
やり残したことを行ってもらうために
治療を進めているのである

治療のための治療ではない
患者さんの人生の応援のための治療である