Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

ダンディー爺さんを目指して 日々を生き抜く
ダンジーブログ

病院低栄養(Hospital Malnutrition)

2006-02-28 | 想い・雑感
 病院低栄養という言葉がある。
 病院に入ることにより、栄養状態が悪化する場合に使う。
 病院に入れば、状態が良くなりそうなものだが、なかなかどうして、このような事態は稀なことではないようだ。

 概して、医師には栄養に注意が向かない人が多い。系統だった臨床栄養学の講義が大学でなされないことも大きな要因と思われる。病んでいる人の状態を良くするのが大きな目的である医療現場で、病気にばかり目がいき、人が生きていくのに最も必要な栄養に目がいかないというのは、何とも皮肉なものである。

 入院が必要な方は、ご自分の口から十分な栄養を取れない状態の方も多い。その場合、ある程度強制的に、栄養を補給する必要がある。特に2週間を超えて食事が取れないような場合には、一日に必要な栄養を、管を通して消化管に入れるか、点滴(中心静脈栄養)で補給するかすることが必須である。

 もし身内や知人に入院されている方がおられたら、栄養が足りているかちょっとチェックして頂きたい。長期間にわたり一日1000Kcal未満のエネルギーでやっていける人はほとんどいない。さらに5大栄養素も必要量補給されなくてはならない。そこをきちっと管理しなければ、人は容易に低栄養状態へ突入していく。

薬の副作用

2006-02-28 | 想い・雑感
 うつ病治療薬の注意書きに、自殺企図を誘発する危険について加えられることになったらしい。外科医が抗うつ薬を処方することはあまり無いが、一般的にうつ病の方が、うつ状態から快復に向かう際に自殺が多いことは以前からいわれていた。自殺企図が実際に薬の副作用の範疇にはいるかどうか、よく分からない。

 すべての薬には、副作用の危険がついて回る。口から飲むにしろ注射で使うにしろ、薬は体にとっては異物であるし、薬の効果自体が副作用という面もある。薬の注意書きには、ごくまれな副作用も含めて非常に多くの副作用が列挙してある。書いておけば製薬会社の責任を果たしたといわんばかりである。

 副作用は処方する医師が知っておく必要性は当然だが、使用する患者さん自身も知っておく必要があるだろう。しかしそのすべてを医師が説明することは不可能。すべての薬について、患者さん向けの説明書がついていればいいのだが、そんなことしてくれる会社は今のところ無い。

 山のように列挙してある副作用をみて、薬が大好きな人が服用を控えるようになると、医療費も下がるかもしれない。ただ、逆に必要な薬を飲みたがらない人が増えても困るのだが。

外道

2006-02-27 | 想い・雑感
 漢方の流れでは、医を上、中、下に分けているようだ。「上医はいまだ病まざるものの病を治し,中医は病まんとするものの病を治し,下医はすでに病みたる病を治す」としている。この分類でいくと、現在行われている医療の多くは、下医ということになる。

 また中世ヨーロッパにおいて、人体にメスを入れることは医師たるものやってはならないことだったらしい。外科の外は外道に通じるという話しを聞いたこともある。体を傷つけると言うことは、本来あってはならないことなのだろう。

 では体を傷つける所業を医療たらしめるものは何なのだろうか。

 それは、artとknowledgeであり、それを支えるhearだと思う。

Artというと芸術と考えがちだが、当然手術は人に見せることを目的としたものではない。この場合のartは繊細で正確な技術である。その技を磨くために外科医は多くの時間を費やす。

Knowledgeは自分の中で体系づけられたものにする必要がある。そして、新たな知識を常に吸収していく情熱と努力が必要である。

 Heartはもちろん心である。優しさ、倫理観、冷静さ、剛胆さ、決断力、想像力などさまざまな要素の総合力である。

 理想を言えば以上のようなことになる。外科医はこれを目指しているが、やはり人間。100%これを満たすことが出来れば、すでに神の領域なのかもしれない。逆に言えば神でないからこそ、努力が必要なのであろう。

 さあ、いくつになるまで、その気力を維持できるだろうか。

卵酒

2006-02-26 | 想い・雑感
 時々卵酒を作る。
 昔から、カゼに卵酒といわれているが、実際に効くかどうかは断定できない。
 
 もしカゼによいとしたら
 1:卵というバランスの良い栄養食品を補給できる
 2:お酒により、体が温まり、よく眠れる
 3:砂糖により炭水化物の補給にもなる
 4:卵に含まれる、塩化リゾチームの殺菌作用も効くとの話しもある

 などが考えられるかな。

 まあそんなことはさておき、とろーりとして甘くて温かい卵酒。
 一度試してみてください。

 正しい作り方は知りませんが、私の場合は

 卵を湯飲みに落とす
 お酒を飲みたい量入れる
 砂糖を好みで入れる
 よーーーーく混ぜる
 電子レンジに30秒かけ一度出してよく混ぜる
 以後10から15秒毎に出してはよくかき混ぜ好みの温度でやめる

 はじめから長い時間レンジにかけると、卵が固まりおいしくないのでご用心。
 

林野庁の「粉飾?」

2006-02-25 | 想い・雑感
 杉の伐採時に、雄花の多い株を選んで伐採することにより、雄花が減少したというデータを林野庁が誇張して発表したことが問題となっている。

 花粉問題との絡みがあるため、「粉」飾という言葉を使っている報道が目に付く。しかし、カネボウやホリエモンの問題は確かに粉飾であろうが、林野庁の問題の本質は、飾ることにあると言うよりは隠すことにあるとおもう。

 情報公開に逆行する体質が、行政にも色濃く残っていることの一端を示すものであろう。嘘をついているわけでも、データを捏造しているわけでもないが、一部を隠すことにより、国民を欺いているわけである。

 統計は数字として出てくるので、私たちはそれを信用しやすい。それにデータを全部見せてもらい検証するわけでもないので、信用するしか無いとも言える。そんなことは林野庁の優秀な人間は十分知っているはずである。信用を裏切るという意味で、データ捏造よりかえって罪が重いという面があることを認識して頂きたい。

 事実も交えて全体としては人を欺く。まさに詐欺の手口である。

 まあ、林野庁の方も、林業の振興その他、たくさん考えないといけないことがあり大変なのでしょうが、こういう風にごまかしととられることが出てくると、世論としては信用失墜。林業もなかなか厳しい状況でしょうから、なんとか、山で働いている人には、迷惑がかからないようにして欲しいものです。

玉川温泉

2006-02-25 | 想い・雑感
 詳しくは知らないが、秋田県に癌患者の間でちょっと有名な玉川温泉というのがある。強酸の泉質と岩盤浴で有名であるとともに、癌に効くと言われているらしい。その真偽のほどは知らないが、湯治客の多くは、癌を患っている方のようだ。

 その温泉近くで雪崩があったらしい。念のために温泉への道は通行止めになっている模様だ。

 雪崩くらい些事だ、と動じない人がほとんどかもしれないが、
近隣の医療施設までかなり離れているということなので気になる。

 通行止め解除となるまで、急変するような方がおられないよう、祈るばかりである。

 雪崩は、40mにわたり50cmの高さで起こっているとのこと。50cmなんてたいしたこと無いと感じる方も多いだろうが、雪って重いでしょう。実際それに巻き込まれると、かなり危険だと思う。

 学生時代に、低い山だが冬山に連れて行ってもらったことがある。頂上近くで、数十メートルにわたり50cmくらいの雪の段差を見たことがある。雪崩の跡である。その時はそれほどでもなかったが、後で考えて、随分危険なところに近づいていたものだとぞっとしたことを思い出す。

自分の命と向き合わなければ保険は受けられない?

2006-02-24 | 想い・雑感
 介護保険制度改正に伴い、4月から40歳から64歳までの末期がん患者も介護保険を利用できるようになるそうです。自宅で最期を迎えたいというニーズに応えるかたちです。

 この場合の末期癌の定義は

(1)治癒を目的にした治療に効果が見られない
(2)進行性
(3)余命6カ月で治癒困難な状態とし、医師がそう判断した人

となっている。分かるような分からないような…。

 まず患者本人は、間違いなく末期癌の定義に自分が当てはまるという事実に
対峙しなければなくなる。現在悪性疾患で在ることは告げても、あまり余命まではっきり告げることは少ない。でも自分の寿命と向き合わなければ、保険は下りないと言うことなのだろうか。

 また、医師が6ヶ月と判断しても2年経っても大丈夫な方だって現実におられる。その場合どうなるのだろうか。

 化学療法で腫瘍マーカーが減少したり、上昇が止まったりした場合、またいずれ上昇に転ずる場合がほとんどだが、この時期は進行性でないということで保険が利用できないのであろうか。

 ニュースの文面だけではなかなか理解できないが、すぐにこれくらいの疑問は湧いてくる。これに対する答えがないのなら、机上の空論かな。

 ただ厚生労働省が、適応される患者数を全国で年間300~2000名程度と推測しているところから、よっぽどでないと適応されないと思われる。64歳未満で癌により無くなる方は、もっと多いはずですから。





ウナギの出身地

2006-02-24 | 想い・雑感
 ヒトの体、生命活動は分からないことだらけ。
 医学は進歩しているが、命のほんの一部を認識しただけ。
 地球上に生命といわれるものが誕生して、現在に至るまでの
命の系譜を、そのDNAに刻み込んでいるのだから、
つい最近地上に出現した人間が、そう簡単にすべてを理解できるわけがない。

 この度、東大の研究チームが、ウナギの孵化する場所を特定した。
 日本から3000Kmも離れたマリアナ諸島沖の海山だそうだ。
 このチームを指揮した塚本勝巳教授という方も、ウナギの生態を通して
生命の神秘に魅せられたのかもしれない。とてつもなく広い海洋で、
ほとんどピンポイントであるこの場所を特定するなどというのは、
並大抵のことではないだろう。調査をしては、そのデータを徹底的に分析し
次の調査をプランする。すごい忍耐力。やはりウナギに魅せられたということでしょう。

 こういうニュースに触れると、命の神秘、荘厳さ、美しさに謙虚になるとともに、一つのことを追い求めるすばらしさにも、唸ってしまう。

 それにしても天然のウナギさんは、随分長い旅をしているのですね。

よみがえる記憶

2006-02-23 | 想い・雑感
 数日前、同じ町にある他の病院からの要請で、手術の手伝いに行った。
 術後、手術場のすぐ横に併設されている、ICUを覗いた。
 私の母が息を引き取ったベッドには、あの日と同様、呼吸器につながれた人がやすんでいた。
 思わず目をそらし、その場を離れた。

 今から9年ほど前、母が倒れたとの連絡を受け、病院に駆けつけたとき、ちょうどCT室から出てきた母の右手がわずかに動いていた。

 脳梗塞であった。それもかなり広範囲に梗塞巣は及んでいた。

 その後気管内チューブが挿入され、人工呼吸が開始された。

 極めて低い可能性だが、生あることを祈った。

 しかし、約10日後、心拍は徐々にその間隔を広げ、ついに止まった。

 倒れてから亡くなるまで、ついに会話することはかなわなかった。

2006-02-22 | 想い・雑感
 痔と言われるものの中で最も多いのは内痔核、いわゆるイボ痔です。イボのように隆起するのでこのように呼ばれていると思われます。

 その本体は静脈瘤(静脈がこぶのように腫れてくる)といって良いと思います。肛門から少し入った直腸の粘膜の下には、細かい静脈が網の目のように走っています。ここから流れ出た血液は、門脈から肝臓に流れ込みます。

 一般的に静脈には血液の逆流を防ぐための弁がありますが、門脈という静脈には弁がありません。そこで2足歩行をする人間は、弁が無い門脈から、肛門周囲の静脈に圧力がかかりやすく、静脈が腫れてきやすいのです。

 イボ痔は当然悪性疾患では在りませんが、あまり放置していると、肛門粘膜が肛門の外に出たり、さらにひどくなると直腸が肛門から出てきたりするようになることもあります。

 やはり他の疾患と同様に、早い時期に治療すれば、簡単な治療でコントロール出来るのです。ちっとも恥ずかしい病気ではありません。ひどくなる前に、気軽に外科を訪れてください。

カウントダウン

2006-02-22 | 想い・雑感
 カウントダウン。
 イメージとすると、カウントがゼロになったところから
新たな時代、出来事が始まるという、未来への希望というところだろうか。

 ロケットの発射、正月の午前0時、試験当日にむけて、
人はカウントダウンをする。しかし、ゼロは新たなる旅立ちであると同時に
それまでの終末という意味合いを含む、時の区切りである。

 生きる者の記録(佐藤健 著)のなかで、死へのカウントダウンという言葉を使っていた。
癌末期と診断されれば、自分の死が現実のものとして実感され、まさにカウントダウンという
状況であろう。私を含め多くの日本人は確固たる宗教を持っていないので、死が新たな旅立ちという実感がもてず、まさに終末へのカウントダウンである。

 でも、末期の人に限らず、すべての人にカウントダウンは進行している。
しかし、誰にもその日がいつ来るか分からない。
分からないのであれば、「今」を生きるしかない。
それも精一杯、大切に、楽しく。

 みんな、行く道。

食育?

2006-02-21 | 想い・雑感
 数年前から、食育という言葉を聞く機会が増えたが、食育基本法なるものが制定されていたとは、不勉強にして知らなかった。正しい食生活の普及を目指して、昨年(2005年)の7月に施行となっているらしい。

 何をもって正しい食生活とするのか、何を根拠に正しいとするのか、詳細は知らないが、国民の食生活が乱れていることや、不規則な食事が子どもの成長に悪影響を与えていることなどを憂えて、立法されたらしい。

 栄養の問題が重要であることは、全く賛成である。しかし基本法なるものの概略を読むと、食という視点からあまりにも精神論へ広げて提示しすぎているように感じる。

 その基本法を背景に、具体的計画案の一つとして、朝食を抜く「欠食」の小学生を0%にすることを目指す推進案が提出されたらしい。よけいなお世話という感じもする。2000年の調査では4%の小学生が朝食を食べていないらしいが、そもそもこの割合が増えているのか減っているのか分からないし、思ったよりみなちゃんと朝食取っているじゃないかとも思う。さらに、朝食を取らない不利益というのはどういうものがあり、それを支持するきちっとしたデータが在るのかも分からない。

 食育というのは、食を通じて、育み、教育するという意味が込められているのだろうから、食育を推進していく過程で、政府はしっかりと私たち国民にわかりやすい授業をして頂きたい。

 ただ、私には、「食育を推進するための法人や団体を作ることにより、食を通じて天下り先を育成する」という文脈も在るように思えるのだがいかがだろうか。
 

術後の定期検査

2006-02-21 | 医療・病気・いのち
 胃癌の術後には定期的にいくつかの検査をします。

 術後の合併症が出ていないかを調べることと、再発してないかを検討するためです。

 早期癌ならば最初の1年は3ヶ月毎、2年目3年目は半年に一回、4年目と5年目は年一回と言うところでしょうか。
 進行癌ならば3年間は3ヶ月毎、4年目5年目は半年に一度。

 胃癌の場合再発すると根治は難しい場合が多いですが、それでも少しでも早く見つけた方が、治癒の可能性が出てきます。

 ちょうど手術を受けた月に、年ごとの検査を行います。2年経ちましたね3年経ちましたね、と無再発アニバーサリーはどちらにとってもうれしいものです。

手術前の禁煙

2006-02-21 | 想い・雑感
 全身麻酔が必要となる手術前には一ヶ月程度の禁煙が必要です。
それが出来ない方の手術はお断りします。

 喫煙により気管支の慢性炎症が起こるため、術後の痰が非常に多くなります。それにより術後の肺感染症の危険が高くなります。術後の肺炎は命にも関わりうる合併症です。

 喫煙により、赤血球の中のヘモグロビンに一酸化炭素が強く結合します。本来ヘモグロビンが体の隅々まで運搬する酸素より一酸化炭素の方が強く結合するために、酸素の運び手が少ない状況となります。術後の回復にも当然体は酸素を必要としているので、回復が遅れる可能性があります。

 患者さん自身の姿勢で手術のリスクを減らす術があるのに、それを実行できない方に、危険を押してまで手術をお引き受けするつもりはありません。

混合診療

2006-02-20 | 想い・雑感
 小泉さんは改革と言いますが、お金の無い人にはつらい世の中になっていっているような気がします。

 国民の健康と命を守るのは、政府の最重要課題でしょう。

 アメリカでは、個人的に保険に入る余裕が無ければ、受けられない医療があるようです。救急車で運び込まれても、保険に入っていることが分からなければ治療がはじまらないという話も聞きます。

 政府が導入を図る混合診療は、そのようなアメリカと同様な方向へ行く第一歩のような気がします。

 公的保険でまだ認められていないような治療は、私費で払えといっているだけかと思っていたら、現在公的保険で支払われている治療まで一部私費にしようと考えているようです。

 日本中どこでも、公的保険に加入していれば、平均的治療は確実に受けられている国から、お金がなければ十分な医療を受けられない、政府が健康を護ってくれない国に変わっていくようです。