チップス争奪

山間の低い崖の上に
黒猫が身を潜めていた

そっと近づき
バイクに少し積んでいたチップを
落ちていたプラスチックトレイに入れた

20m程離れようとしていると
背後にバサバサという音
振り返ると二羽のカラスが
チップを啄ばんでいる

カラスも生きるために大変でしょうが
痩せた猫の為に遠慮してもらい
今度はもっと猫が近づきやすくした

10mだけ離れて
カラスを牽制しつつ見守った

さあ今後生き抜いて行けるかどうか

まあ猫もカラスも人も
いずれは旅たちますが
少しでも穏やかな生を
享受してもらいたいものです

生 ⇒ 死

年間百数十万の人が死んでいる日本

一年３６５（６）日
毎日誰かが
旅立っている

計算上は
約30秒に一人が亡くなっているわけだから
誰かの誕生日に誰かが息を引き取ったからと言って
なんの不思議もない

でも
自分の誕生日に人を見送ったのは初めて

生と死の対比を感じるとともに
生から死への連続も思いしらされる

我や先
　彼や先
　　幻の如くなる一期

完治後

廊下で挨拶をされたお婆さん
顔ははっきり覚えているが
名前は思い出せない
ご主人の手術を担当したようだ

そのご主人が内科に入院中とのこと
病棟に行き名札を見て行くと
確かに記憶のある名前を発見
病室に行くと
随分年月の影響を受けてはいるが
見知っているお顔でした
少しお話をして部屋を後にした

もう十年以上前に手術をした患者さん
早期胃癌でありそれは完治しているが
脳梗塞を起こし体が弱って
ちょくちょく入院となるらしい

私の方が倒れそうと
奥さんもつい愚痴が出る

癌が治っても
長生きすれば
何らかの病を得て
いずれ旅立つ

全ての人が
背負っている運命だ

鎮静

もう息をしたくなくなりました
疲れてしまいました
先生を困らせるつもりでは
ないのですけどね

苦しみから
完全に解放してあげることは
難しい
夜間の眠りも不十分

ご本人といつも付き添う娘さん
ともに薬の力で眠ることを希望

様々な工夫をしても
ぬぐいきれない苦痛を
鎮静と言って
意識レベルを下げることにより
本人が感じない状態にする

最後には
こうするしかないことも
少なくはない

今を

この時期は
新たにやって来た
新人の歓迎会
の季節

一方
年寄りにとったら
過ぎ去る時の速さに
慄く季節

見る方向によって見え方が全く違う
面白いよね

本当に
順繰り 順繰り

二度と帰らぬ今を
心底大切にしないとね…

自覚

朝 病室に入ると
胸の前で合掌し
天井を見つめている

目を覗き込み
おはようございます
と声を掛けると

ああ 先生
ありがとうございました
お世話になりました
と弱いけれどはっきりした口調で
挨拶を返された

手を握ると
両の手で包んでくれた

何処か遠くを見つめるような
その視線の先には
何が見えているのだろうか

一日のモルヒネ量が
500mgを超えたところで
痛みが無くなった

肉体的苦痛が軽減した状態が
このまま続いてくれることを願います

オピオイド

癌による痛みに対し
モルヒネなどのオピオイドを使用する

少量から始めて
夜痛みで眠れないことがないようにする
じっとしていれば痛くないようにする
動いても痛くないようにする
という目標を目指して
適切な量を見極める

多くの場合
少量から中等量で目標クリアとなるが
時に大量のモルヒネが必要となる

通常なら考えられないような量を
使用することで
ようやく痛みがコントロールできた時
モルヒネの副作用が強く出るかと言うと
ちっともそんなことはない
呼吸抑制も精神的副作用も出ない

副作用を怖がって
十分な除痛ができないことの方が
よほど患者さんにとって
悪い影響を及ぼすものである

Mall of America

二十数年前
留学先のアメリカで驚いたものの一つに
巨大なモールがある

全米初のショッピングモールと教えられた
その名も　モール・オブ・アメリカ

そこには有名なデパートとともに
数多くの小売店が入っており
飲食店はもちろん
子供の遊び場も併設してあった
その中にはジェットコースターまで走っていたのだから
想像を超えたモールであり
一大アミューズメントパークだった

そこまで巨大なものは珍しいとしても
数多くのモールが存在していた

しかしそのアメリカで
モールが役目を終えてきているとのことだ
テレビやインターネットでのショッピングが伸びてきているためらしい
寂れたモールの一部は教会に生まれ変わったり
社屋として利用されたりしているようだが
廃墟となるモールも数多くあるという

時代は流れる

日本ではどうかな

分裂加速

親や教師に抑えつけられた子供は
いずれ爆発する可能性がある

圧政に虐げられ抑圧された民衆は
いずれ大きく反発する時がやってくる

同じように
癌の増殖を抑えるために
薬剤を使い続けていると
癌はどこかで一気に暴れだし
薬という攻撃など簡単に振り払い
細胞分裂を加速し始める

そうなると癌自体の縮小など無理
いわゆる抗ガン治療は撤収となる
しかし荒れ狂う腫瘍に振り落とされず
あれやこれやの手を使って
肉体的苦痛を取り除く努力は続ける

でも精神的な苦しみはどうだろう
差し迫った死を自覚していない他者が
そこにかかわることはむつかしい

急に大きくなるしこり
強度を増す痛み
ぬぐいようのない倦怠感
そして死の接近
最後は一人一人が孤独に死と対峙するしかないのかもしれない

われわれは
そばでできることをさせてもらうのみである
いずれ自分も逝く身であることを感じつつ

巨人Google

Googleが
ロボット技術の分野に乗り出す
という

民間用ロボットの開発がメイン
との推測がなされているようだが
開発された技術や
蓄積された莫大な情報が
軍事目的に
あるいは強者の支配目的に
流用されないという保証はないだろう

GoogleMAPのストリートヴュー
地方都市にある我が家の写真も
この春更新されたばかりのようだ
ほんの数年前に見ることのできたviewは
この街の一部でしかなかった
凄い勢いで情報が集積されている

巨人Googleが
地球上の多くの情報を掌握し
あらゆるロボットを開発する
となると
恐ろしい状況もあり得る

それを認識した上で
そうならないような智慧が必要でしょう

冬の大三角形

先週末は西高東低の厳しい天候でした
４月だというのに
みぞれまで降りました

冬に逆戻りだと思いそうですが
夜空を見上げると
冬の大三角形は
既に主役ではありませんでした

当たり前のことですが
時は移ろいます

生まれ 育ち 生き
喜び 悲しみ 怒り 楽しみ 歯噛みし 和み
そして
いずれ皆旅立つ

冷静に見つめれば
どうでも良いことに振り回され
多くのエネルギーと時間を費やし
大切な今を手放す

できればそうならないよう
心を荒立てず
宇宙 大いなる自然に身を委ね
生き切れたらいいなと思います