絵手紙

パソコンによる絵手紙をはじめて・・・

砦なき者    (野沢尚)

2006-02-28 21:14:20 | 読書
「破線のマリス」と同じ首都テレビ報道局放送センターの
報道番組「ナイン・トゥ・テン」のスタッフ達の事件報道に対する
姿が生々しく描かれている。
『マスコミとは本来何らかの事件を伝達するものだと考えられている。
しかしマスメディアの発達に伴って、伝達する為の内容をメディア自体が作り出す事になった。
これを「擬似イベント」と称する。町興しなどがその一例で、
イベントがあるから報道するのではなく、報道される為にイベントが作られる。
現代ではこうした逆転現象が政治や経済、様々な領域に見ることが出来る。
メディアの中では人は英雄的な行為によって有名になるのではなく、
メディアでの露出度が高く、有名であるために崇められる』
これを実践した?八尋樹一郎の栄光と転落の姿・・・
★★★★

黒龍の柩  上・下  (北方謙三)

2006-02-23 20:50:35 | 読書
維新を駆け抜けた土方歳三。
人によってこんなにも解釈が違う物なのか
山南敬助とは肝胆相照らす仲・・・(山南ファンとしてはそのほうが嬉しい!)
蝦夷地に新国家建設を夢に見て精力的な行動!
今まで思っていたより、ひと回りもふた回りも大きく
一味違った歳三!歳三ファンには嬉しい解釈かも・・・
函館で亡くなったのは影武者で、彼は蝦夷地で生き抜く。
1つの夢は費えても、新しい夢に命を懸け生ききろうと・・・

歳三資料館へ行ったとき館長さんが「そういう解釈もあるようですが
私は函館の闘いで亡くなったと思っています」とのことでした。
★★★★



リミット   (野沢尚)

2006-02-12 17:02:36 | 読書
なぜか身代金を要求されない連続幼児誘拐事件!
警視庁捜査一課の有働公子は婦警としてでなく一人の母親として事件の当事者となってしまう。
身代金を要求された4っめの誘拐事件、送りつけられた小指は、公子の息子の物だった。
我が子を取り戻す為公子は身代金を持ったまま行方をくらます。
誘拐犯と警視庁、ふたつの敵を相手に孤独で絶望的な戦いが始まる。
フライトプランのジョディのように子供のために、なりふりかまわず猛然と強くなる母!鬼子母神そのものです。
幼児誘拐には臓器売買が絡んでいてこんな恐ろしい事が、なんて・・・
背筋が寒くなる。
★★★★

未練  (乃南アサ)

2006-01-23 15:46:49 | 読書
お馴染の、音道貴子シリーズ。
読み始めて”前に読んだ・・と気がつくが
面白い物は何度読んでも面白い!
6篇の短編。中でも「聖夜まで」が面白い?と言うより考えさせられた
貴子の先輩警察官夫婦の子供(7歳)が犯す殺人・・・
なぜ?7歳の子がなぜ?・・映し出されたのは
幼児虐待?・・・優しかった先輩がなぜ?
夫婦であっても夫婦でない、親であっても親でない・・・
悲しい現実が見えてくる。
★★★★★

OUT〔アウト)    桐野夏生

2006-01-13 21:07:07 | 読書
弁当工場で深夜のパートをしている4人の主婦
ごく平凡な主婦達が殺人を犯し、死体をバラバラに切り刻む。
完全犯罪にはほど遠くもろくも崩れていく計画・・・
次第に奈落の底へと落ちていく。
落ちた先にあるものは・・・・
暗くやりきれない話だが、最後まで気が抜けずに読ませるのは
この人の文章力??
★★★★★

女たちのジハード  (篠田 節子)

2005-12-06 10:36:59 | 読書
損保会社に勤める女性5人の生き方・・・
最年長の康子はマンション購入に突き進む
美人で仕事も家事も出来て男性社員には人気があるが女性社員には反感をかってしまうリサ。仕事も家事も出来なくて結婚に失敗するが、すぐに又結婚相手が見つかる紀子、有能ながら左遷されるみどり。英語能力を生かして転職を考える沙織
それぞれが、男性社会の中で精一杯メゲズ、挫けず人生を切り開いていく「聖戦<ジハード>」頑張ってるね~と声を掛けたくなるような・・・パワフルな物語です

*昨年劇を見る会で観たことを思い出しました。
 舞台も笑いの渦で楽しくパワーに溢れていました。
★★★★★

流れる星は生きている   (藤原てい)

2005-11-18 20:58:35 | 読書
この本は、敗戦まじか昭和20年8月9日新京から釜山を経て、
苦難の末日本に引きあげてきた作者藤原ていさんの体験記です。
気象台の官舎にも立ち退きの勧告があり慌ただしく移動の準備
長男6歳、次男3歳、長女1ヶ月。寒さに備え持てるだけの荷物を持ち駅で夫(新田次郎)を待つ
しかし夫は気象台にまだ仕事が残っているので一緒に発てないと言う。
それからが苦難の連続・・・21年9月末日本の地を踏むまでの孤軍奮闘・・・
まだ幼い三人の子を引きつれ、よくぞ日本に辿り着けたものだと、母なる強さには頭が下がる。
故郷にたどり着いたときの安堵感・・・涙・涙・涙・・・
本当に無事帰ってこれて良かったですね~ご苦労様・・・
戦争は二度と御免です!
★★★★★

雨あがる   (山本周五郎)

2005-11-15 21:36:41 | 読書
日日平安、つゆのひぬま、なんの花か薫る、雨あがる、の短編集
「雨あがる」は映画化され「つゆのひぬま」はドラマ化されている。
周五郎の作品は市井の底辺に光を当てたものが多いような気がします。
雨あがるも立派な腕を持ちながらその力で出世出来ないめぐり合わせの悪い
浪人の話。最初は仕官してほしいと願っていた妻たえも次第に夫伊兵衛の
不器用な生き方に、人としての温かさを感じて
「他人を押除けず他人の席を奪わず、貧しいけれど真実な方たちに混じって、
機会さえあればみんなに喜びや望みをお与えなさる、このままの貴方も御立派ですわ」と共感していく。
温かさに溢れた物語です。
★★★★★