ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
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『鉄路の果てに』

2021-03-05 22:40:23 | 
『鉄路の果てに』 清水潔 マガジンハウス
 本棚で見つけた亡き父の「だまされた」というメモ書き。添えられた地図には、75年前の戦争で父が辿った足跡が記されていた。どんな思いで戦地に赴き抑留されたか。なぜ、犠牲にならねばならなかったか。薄れゆく事実に迫るために、韓国・中国・ロシアへ。
 この作家の『桶川ストーカー殺人事件』『殺人者はそこにいる』を読んだことのある私にしたら、ちょっと肩すかしの感じ。グイグイと事件に迫り、真実を突き詰めようとする気迫が弱いというか。本作は、同行者との弥次喜多道中の感もあるからか、鉄道オタクっぽい話を挟むからか、内容が薄まった感じ。「だまされた」のメモと地図にサインペンで記された父親の足跡という導入に期待がふくらんだだけに、やや物足りない。戦争体験を聞こうとする息子に「思い出したくないんだ」と父は言い、亡くなってしまったので、しょうがないとはいえ。身内だからこそ、踏み込めないと思う。
 しかし、父のわずかな手掛かりを日本の近代史に広げ考察する手腕は見事。負け戦を「ノモンハン事件」「シベリア出兵」と済ませる。など知らなかったこともあった。関東軍に捨てられた開拓団。「略奪は兵士の報酬である」と勝った兵士を野放しにする。「鉄道と戦争は切っても切れない関係」など唸ってしまう。

 
コメント
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