1968年4月から'73年4月まで、TBS系列の土曜夜9時枠で全262話が放映されたアクションドラマの第1話です。制作はTBS&東映。
元国際警察外事局スパイの黒木(丹波哲郎)、元フランス情報局の女スパイにして私立探偵・啓子(野際陽子)、天才的ドライバーの島(谷 隼人)、驚異的な記憶力を持つユミ(大川栄子)、そして元敏腕新聞記者にしてスポーツ万能の風間(千葉真一)の6人が、秘密部隊「キイハンター」として警察の手に負えない事件を解決していきます。
ほか、キイハンターの創設者である国際警察特別室の村岡室長(仲谷 昇)、#60からキイハンターに加入する元FBI捜査官・吹雪(川口 浩)、#92から登場する潜入捜査官・壇(宮内 洋)、#210から登場する私立探偵・滝(沖 雅也)といったメンバーが絡んでくる事になります。
ご存じのように東映アクションドラマを代表する大ヒット作で、当初1年の放映予定が5年にまで延長。中でも数々のスーパーアクションを自らこなした千葉真一さんが海外でも人気を集め、ブルース・リーやジャッキー・チェン等にも影響を与え、レギュラー共演者の野際陽子さんと結婚されるなど話題を集められました。
その千葉さんがイメージの固定を懸念し降板を申し入れた事や、度重なる予算の超過による赤字で番組は丸5年で終了。その後やはり丹波哲郎主演による探偵アクション『アイフル大作戦』『バーディ大作戦』が制作され、ハードボイルドの原点に立ち返った『Gメン'75』へと続いていく事になります。
なお、本作はモノクロ放送でスタートし、'70年4月の第105話からカラー放送にチェンジされました。前ブログも含めてモノクロ作品のレビューは今回が初めてです。
ナレーションは芥川隆行さん、音楽は『五番目の刑事』の渡辺宙明さんと並ぶヒーローサウンドの巨匠=菊池俊輔さん。この方の音楽が入ると昭和『仮面ライダー』を観てるような錯覚に陥りますw
そして主題歌『非情のライセンス』を唄われたのはヒロイン・野際陽子さんです。
☆第1話『裏切りのブルース』(1968.4.6.OA/脚本=高久 進&深作欣二/監督=深作欣二)
エレナと名乗るスイス人の金髪美女が、キイハンター事務所の黒木ボスを訪ねて来ます。彼女は行方不明になった婚約者を探しており、その男がなぜか黒木の名を語っていたのでした。
エレナが持つペンダントの顔写真を見て、黒木は「その男のことは忘れるんだ」とクールに言い、彼女を突き放します。その男=藤崎(南原宏治)は黒木のかつての同僚、すなわち現役の国際スパイなのでした。
泣きながら事務所を飛び出したエレナは、車にはねられて死んじゃいます。彼女は犯罪組織の殺し屋に殺されたのでした。
村岡室長は、エレナのペンダントには藤崎の写真以外に何か重要な物が隠されていたこと、藤崎はジュネーブで交通事故死したこと、そしてその事故は恐らく偽装で、藤崎は同じ組織に消されたであろうことを黒木に伝えます。
藤崎は、現役時代に黒木の命を救ってくれた恩人であり、親友でもあった。黒木は藤崎とエレナの弔い合戦に燃えます。
調べてみると、組織はどうやらエレナが持っていたのと同じチャーチルコインのペンダントを狙っているらしい。黒木、風間、島、ユミのキイハンターメンバーに、同じペンダントを探すフランスの女探偵=啓子も合流し、組織の正体へと迫って行くのでした。
どうやら組織の真の狙いは、ペンダントに隠されたフィルムの切れ端。日本の政財界の裏金リストを撮影したフィルムが3つに切り離され、それぞれ別のペンダントに隠された。それを強請のネタに使って儲けるのが組織の狙いで、恐らくペンダントの1つを手に入れた藤崎、もう1つを託されたエレナが殺された。
そこまで掴んだところで、ユミが敵に拉致されてしまいます。黒木が倒した殺し屋が持っていたフィルムの切れ端と、ユミの身柄を交換するという取引に応じた黒木は、その現場で敵の意外な正体を知ることになります。
「やっぱりお前だったのか……藤崎」
死んだ筈の藤崎は生きていた! かつての親友はエレナと同じように黒木を車で牽き殺そうとしますが、黒木が咄嗟に投げたチャーチルコインによりハンドル操作を誤り、横転炎上。
「皮肉なもんだな。三人とも死んで、フィルムだけが残ったとは……」
結局、組織の正体は何だったのか? なぜ藤崎が裏切り、エレナを殺す必要があったのか?など、数々残された謎にはいっさい触れず、Gメン歩きして颯爽と去っていくキイハンター達なのでした。
ツッコミどころは山ほどあるんだけどw、とにかくハードボイルドかつ無国籍な世界観、要するに雰囲気とアクションを楽しめばそれで良いのだと思います。
そんなアダルトなムードに渋いモノクロ映像が見事にマッチして、カラー作品では味わえない格好良さがあります。特にこの第1話は深作欣二監督が2ヶ月もかけて撮影されたそうで(そりゃ赤字になるわw)、TVドラマとは思えないスケールの大きさも堪能できます。
丹波哲郎さん扮する黒木鉄也は、本作の前年に公開されたイギリス映画『007は二度死ぬ』でやはり丹波さんが演じた国際スパイ「タイガー田中」をモチーフにしており、作風も当時の『007』シリーズを彷彿させます。
そこに『スパイ大作戦 (ミッション:インポッシブル)』ばりのチームプレイも加味して出来上がったのが『キイハンター』の世界観で、'60年代の作品とは思えない「洗練」を感じます。
それが後年、千葉真一さんを中心としたアクション活劇やドタバタ喜劇、ホラー、ミステリー、西部劇、果てはSFと作風のバリエーションを増やし続け、カラー放映に切り替わる頃にはすっかり「何でもアリ」のドラマになってたそうですw それはそれで楽しいでしょうから、後年のエピソードもこれからチェックしていきたいと思ってます。
それにしても丹波さんの出番がとても多く、アクションも自ら精力的にこなしておられるのが驚きです。思えば主役なんだから当たり前の事なんだけど、ほんのちょっと顔を出して二言三言のセリフを棒読みするだけの『Gメン'75』とはえらい違いですw
そのへんは『太陽にほえろ!』における石原裕次郎さんの扱われ方を見て「なんだ、主役でもそれで成立しちゃうんだ」って、手抜きを覚えちゃったのかも知れませんw
それだけ丹波さんがフィーチャーされてるだけに、千葉真一さんや谷隼人さんにはこれといった見せ場がありません。彼らが本格的に活躍するのは、もっと回を重ねてから(丹波さんがサボり始めてからw)になるんでしょう。
そんな男性陣よりも、オシャレ探偵=野際陽子さんの洗練された美しさ、マスコット的存在の大川栄子さんの可愛らしさに目を奪われます。特に大川さんのタヌキ顔は私のストライクど真ん中で、萌えますw