☆第25話『さらば!わが街 新宿』(最終回)
(1970.3.26.OA/脚本=池田一朗/監督=吉川一義)
街に出回る密造拳銃の出処を捜査中の原田刑事(原田芳雄)に、フーテン娘のマサミ(小林千枝)が何かとちょっかいを出して来ます。
ただの冷やかしかと思いきや、実はマサミの父親=伊原(増田順司)が拳銃密造に関わっており、彼女は父にそれを辞めさせたくて刑事の原田に近づいたのでした。
だけど知らず知らず原田にマジ惚れしてしまったマサミは、やはり原田に気があるバーの歌手・お時(荒砂ゆき)と壮絶なキャットファイトを繰り広げ、傷だらけになってマンションの部屋まで原田に送ってもらい、裸になって抱きつきます。
乳首は見えないよう巧みに撮影されてはいるものの、夜8時台でこれだけのお色気シーンが観られるとはホント素晴らしい時代でした。
しかし残念ながら、マサミはチョメチョメ未遂のまま原田の目の前で、密売組織の殺し屋(浜田 晃)に射殺されちゃいます。
彼女を憎からず思ってた原田は今回も怒りを爆発させ、組織の元締め(小瀬 格)を誘き出すために伊原を拉致し、マサミの部屋に監禁します。
もちろん違法捜査ゆえ同僚刑事たち=庄田(常田富士男)、野呂(殿山康司)、立花(工藤堅太郎)は止めようとするんだけど、すでに辞表を用意してる原田にはどんな言葉も響きません。
「奴の流した血は、奴らの血で洗わせるんだ!」
「俺たちは、キミを引きずって帰ることも出来るんだぞ?」
「やってみな。簡単にはいかねえぜ」
これまでの付き合いで原田の性格をよく知ってる同僚たちは、説得を諦め、覚悟を決めて、その無謀な賭けに協力する道を選択するのでした。
そうして組織の元締めを追い詰めた原田は、西部劇チックな相撃ちにより、そいつを射殺します。台詞では語られませんが、直後に原田が見せた表情から、それが彼にとって初めての射殺であることが伺えます。
違法捜査の責任よりも、たぶん憎しみに駆られて人の命を奪った自分が許せなかったんでしょう。大事件を解決させたにも関わらず、原田は正式に辞表を山田デカチョウ(中村竹弥)に提出します。
「……一応、預かっておこう」
「長らくお世話になりました」
同僚たち1人1人に深々と頭を下げ、原田は刑事部屋を去って行きます。
すると今度は、残された庄田、野呂、立花も辞表を差し出すのでした。
「おいおい、なんの真似だ?」
「原田の手助けをしたんスからね」
「原田と同罪ですから」
「やはり筋を通さなくっちゃ」
唖然とするデカチョウに頭を下げ、3人も部屋を出ていきます。この時、若手エリートの立花だけが、あからさまに後ろ髪を引かれてる様子で、やっぱりこの人は面白いですw
原田が署の表にチョークで「お先に失礼」って落書きしてると、さっき別れを告げた筈の仲間たちも一緒になって書き始めるもんだから、原田は面食らいます。そして……
「部下のいないデカチョウなんているか? 俺もせいせいしたよ」
結局、デカチョウも辞表を提出し、捜査課全員が一斉辞職!という衝撃の結末w
この約11年後に登場する番組『警視庁殺人課』の最終回では「レギュラー全員殉職!」という伝説が生まれますが、死にたくて死ぬ刑事は1人もいないワケで、全員が自分の意志で警察を辞めちゃう『五番目の刑事』の方がタチ悪いですw(たぶん、本当に辞めやしないだろうと思いますが)
後の『西部警察』ならそういうことも日常茶飯事だけど、とにかく私は、こんな刑事ドラマが『太陽にほえろ!』より2年以上も早く登場していた事実に衝撃を受けました。
いや、刑事物と青春物を融合させた『太陽~』も間違いなく斬新なんだけど、時代の最先端だと思ってたマカロニ(萩原健一)やジーパン(松田優作)のキャラクターが、あからさまに『五番目の刑事』の影響下にあったという事実はホントに衝撃です。特にジーパンは原田刑事の二番煎じと言われても文句言えないです。
番組の内容自体は、前述のとおり『西部警察』やその前身『大都会』シリーズの方が影響受けてそうだけど、ショーケンさんや優作さんは間違いなく原田芳雄さんに憧れ、対抗意識を燃やしてた筈です。だからこそ、原田刑事に比べて子供っぽいマカロニやジーパンのキャラに不満タラタラだったんでしょう。
これまでどんな名作映画を観てもイマイチ実感出来なかった、原田芳雄という俳優さんの凄さを、この『五番目の刑事』を観て私は思い知らされました。だって芳雄さんの存在が無ければ多分、マカロニやジーパンのキャラは全く違うものになってた筈だから。凄いなんてもんじゃないですホントに。
この最終回は、マサミを演じられた小林千枝さん(当時19歳)の魅力も光ってました。東映の『不良番長』シリーズ等で活躍された女優さんだけど、活動期間は約5年と短かったみたいです。