ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ザ・ファブル』

2020-05-31 18:33:11 | 日本映画










 
2019年の初夏に公開された、江口カン監督&渡辺雄介脚本による松竹配給の日本映画。南勝久さんの人気コミックを実写化した作品です。

「都市伝説」と云われる無敵の殺し屋=ファブル(岡田准一)が、自分を育て上げたボス(佐藤浩市)から1年間誰も殺さずに一般人として「普通に暮らす」ことを命じられ、実行すべく努力するんだけど、世話になった女の子(山本美月)が凶悪犯罪組織に拉致されて……という、実に私好みのストーリー。

う~ん、残念! 勿体ない! っていうのが率直な感想です。決してつまんなかったワケじゃない。ちゃんと面白かった。けど、余計なマイナス要素がせっかくの良さを台無しにしちゃってる……と私は感じました。

原作はまったく読んだことが無いので、イメージが違う云々は関係ありません。あくまで1本のアクション映画としての評価です。

まず素晴らしい点を挙げると、日本で『ジョン・ウィック』や『イコライザー』ばりの1人vs大人数による至近距離ガンアクションに挑戦し、かなりイイ線行ってること。それを岡田准一くんがほとんど吹替えなしでこなしてること。

ボス役の佐藤浩市さんや、ヤクザ役の安田顕さん、向井理くん、柳楽優弥くん、コメディーリリーフの佐藤二朗さん、そしてヒロインの山本美月さんも良かった。

ユーモアが満載なのも決して悪くない。むしろ大歓迎!……なんだけど……

まず一番引っ掛かったのが、そこなんですよね。大歓迎だからこそ加減を間違えて欲しくない、私にとって最大の「こだわりどころ」で躓いちゃってるのがホント残念でなりません。

要するに「やり過ぎ」なんです。「ユーモア」と「ギャグ」は別物だと私は思ってて、ユーモアのレベルで抑えて欲しいところを、この映画はギャグの領域に突っ込んじゃってる。

例えば、世間から隔離されて殺人の訓練ばかり受けて来たファブルが、いきなり一般社会に放り出されたことから生じるギャップ。そこで笑いを取るのはユーモアとして「あり」なんです。そういう生い立ちを辿れば現実でもあり得ることだから。

だけど、ファブルが極端な猫舌で、熱いものが口に触れるとお笑い芸人みたいに大袈裟なリアクションをするのは、完全にギャグ。あり得ない領域まで行っちゃってる。

どんな痛みにも耐えられるタフな男が……っていうギャップが可笑しいのは解るし、100%あり得ないワケじゃないんだけど、今どきの「ネタ番組」的なノリを映画やドラマに持ち込んで欲しくない。ましてファブルはアクションヒーローなんだから滑稽になっちゃダメなんです。そういうのは佐藤二朗さんに任せとけばいいw

滑稽と言えば、ファブルのコスチューム(画像3枚目)。おしゃれに全く興味が無いからって事なんだろうけど、それにしたってもうちょいカッコよくならんもんか?って思う。アクションは格好良く見せてナンボなんだから、コスチュームは大事ですよ!

そもそも、せっかく岡田准一くんが抜群の身体能力で自らアクションを披露する場面で、顔が見えないのは絶対ダメでしょう? 原作ファンが怒ろうがそんなの無視して、映画なら映画の魅せ方を貫くべきです。

悪役たちがまた一様に、如何にもゲーム世代が好きそうな記号的「イカれ」キャラで統一されてるのも、私はゲンナリしてしまう。昨今のアクション物はみんなそう。

で、これを言っちゃミもフタも無いんだけど、あれだけ見事に凶悪なキチガイばかり揃えたなら、主人公が皆殺しにしてくれなきゃ観客は満足出来ないですよ!

さすがに、いくら何でもコイツが生き残っちゃダメでしょ?ってヤツは、佐藤浩市さんや安田顕さんが責任とって始末してくれるんだけど、いやいや、そういうヤツこそ主人公が殺さなきゃダメです。

だけどファブルは、1年間誰も殺すなとボスに命じられてるから、律儀に誰も殺さない。そこがハリウッドのアクション映画とは違う、日本ならではのヒロイズムなんだって事かも知れないけど、だから私は日本のアクション映画に満足できた試しが無いんですよ!

これがもし、ヒロインに「もう誰も殺さないで」って言われたからっていう設定なら、私は燃えたかも知れません。だけど我らがファブルが敵を1人も殺さないのは、ただ「ボスに命令されたから」であり「逆らったらボスに殺されるから」なんです。ショボい。どう考えてもショボい。全然カッコ良くない。

ボスが物凄い恩人であろうが何であろうが、所詮は殺し屋ですからね。佐藤浩市さんが演じると格好良く見えちゃうけど、どうしょうもない悪党ですよ。

それよりも、善良なヒロインを守るためボスの命令に背き、殺されること覚悟でキチガイどもを皆殺しにするファブルの勇姿を、ちゃんと岡田准一くんの表情込みで私は見たかった! そう、表情もアクションの大事な要素なんです。あんなダサい覆面で隠してどうする!?

つまるところ、この『ザ・ファブル』って作品は、アクションヒーローの王道をわざと外してるんだと思います。最強の殺し屋なのに、殺さない。カッコいいコスチュームを着ない。顔を見せない。上の命令に背かない。真面目にやらない。

日本のアクション映画がいつまで経ってもパッとしない最大の理由が、そこにあるんじゃないですか? ハリウッドの真似をしてると思われたくないから、わざとひねくれた創り方をしちゃう。

だけどねえ、ハリウッドの創り手たちは、ワンパターンやマンネリを承知の上で、それでも観客を喜ばせる為に王道を貫いてるんだと私は思う。観客ファーストを徹底してるからこそ世界中にファンがいるんだと思う。

日本のアクション映画がそうやって体裁を気にして、照れ隠しに王道を外してばかりいる限り、いつまで経っても島国に引きこもったままですよ。私はそう思う。もっと素直になってくれ!
 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする