ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『五番目の刑事』#23

2020-05-15 22:55:13 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第23話『紅バラは真夜中の匂い』

(1970.3.12.OA/脚本=石森史郎/監督=鈴木敏郎)

新宿の繁華街に乗り捨てられた車のトランクから若い女性の首なし死体が発見され、新宿東警察署に捜査本部が置かれます。

そんな折り、捜査課の原田刑事(原田芳雄)を弟分のケン(杉山俊夫)が訪ねて来て、親友の純情青年・高見(岡本富士太)が半年ほど前に失踪した恋人=ミチコを探してるから協力して欲しいと懇願します。

原田は厭な予感を覚えつつも、今は忙しいからとやんわり断ります。実際、首なし死体から合成麻薬「LSD」の成分が検出され、バラバラ殺人に麻薬まで絡んだ大事件となると人探しを手伝う余裕は無いのでした。

そして更に、かつて原田がムショに送り込んだ元暴力団幹部の小山(森山周一郎)が出所して数日で殺されてしまい、捜査課は2つの殺人事件を抱える羽目に。

ところが、小山が殺される現場を目撃したらしいフーテンのマコ(水城リカ)が、その時「LSD」でラリパッパ状態だったことが判り、原田は2つの事件が繋がってるんじゃないかと睨みます。

そして奥多摩の山中で、首なし死体と同一人物と思われる女性の片手が発見されます。その指に残った傷痕は、純情青年=高見が探してるミチコのそれと酷似している!

死んだ小山の情婦=お時(荒砂ゆき)を尋問し、ミチコとよく似たコールガールが旭興業という暴力団企業の社長=青山(戸田皓久)に雇われてたこと、その会社が主催する秘密パーティーで売春の斡旋、そしてLSDの売買が行われてることを聞き出した原田は、高見と一緒に身分を偽ってパーティーに潜入するのでした。

そこでブルーフィルム(裏ビデオみたいなもの)が余興で上映されるんだけど、その画面でヤクザらしき男に抱かれてる女の顔を見て、高見が悲愴な声を上げます。

「ミチコ……ミチコ!!」

そう、原田が予感した通り、全ての事件が繋がっていた。コールガールだったミチコにヒモ扱いされた旭興業の社員(つまりヤクザ)が、逆上して彼女を殺してしまい、怒った社長(つまり組長)はそのペナルティーとして、LSD売買の秘密を握ってる小山をそのヤクザに殺させた。後でそいつも始末し、全てを隠蔽しようとしてたワケです。

あの首なし死体は、やっぱりミチコだった。怒りを爆発させた原田が、パーティー会場でけっこう長い大立ち回りを見せてくれます。

ここで青山社長をフルボッコにしながら、原田芳雄さんがシビレるような台詞を言ってるに違いないんだけど、すこぶる残念なことに何回観直しても聴き取れませんw

当時の録音機材の性能と、我が家のテレビの音響がショボいせいもあるんだろうけど、ただでさえボソボソ喋りの芳雄さんが、怒りMAXでエキサイトされてるもんで手に負えませんw

でも、これがもし池松壮亮くんだったら「だから三流役者だと言うんだ」ってボロカス書いちゃうとこだけど、芳雄さんにそんなこと言える筈ありませんw

いや、そりゃそうです。当たり前です。ああいう自然体の台詞回しを最初にやり始め、批判と闘いつつ貫き通し、浸透させちゃった偉大なパイオニアと、そのレールに乗っかってるだけの若造とじゃ格がまるで違うんだから。

閑話休題。殺されたミチコは、どうやら自分の店を持ちたい夢をヤクザどもにつけこまれ、麻薬浸けにされて、その代金欲しさに売春してたという、典型的な転落人生。純情青年の高見にだけは、きっと本来の素直な顔を見せていたんでしょう。

社会のダークサイドを嫌というほど学んでしまった高見は、故郷へ帰って漁船に乗る決意をし、それを原田に報告します。

「それが一番いいかも知れないな。こんな街のことは潮風の中ですっぱり忘れちまいな」

高見を演じた若きイケメンは、デビューして間もない頃の岡本富士太(当時のクレジットは岡本藤太)さん。後に『Gメン'75』『兄弟刑事』『大空港』等でレギュラーの刑事を演じることになる人です。

以前レビューした第1話と第2話における新宿東署捜査課メンバーは、山田デカチョウ(中村竹弥)、庄田刑事(常田富士男)、牛山刑事(桑山正一)、立花刑事(工藤堅太郎)、そして五番目の刑事=原田というメンツでしたが、第12話で牛山刑事が転勤、替わって第13話から野呂刑事(殿山泰司)がレギュラーに加わりました。

一番の見所はもちろん、『太陽にほえろ!』のマカロニ(萩原健一)やジーパン(松田優作)より2年以上も早く(!)ジーンズスタイルでジープを乗り回すアウトローな刑事像を創り上げられた、原田芳雄さんの桁外れな格好良さ。

この回ではパーティー潜入時に珍しくスーツを着ておられますが、シャツの色はピンクなんですよねw '80年代に登場するドック(神田正輝)やボギー(世良公則)のセンスまで先取りしておられる!

で、その次に私が注目してたのが、原田刑事とコンビを組む機会の多かった若手刑事=立花役の工藤堅太郎さん。4枚目の画像で煙草を吸っておられる方です。

この方がとにかく一挙手一投足いちいち格好つけておられて、その格好のつけ方が実に古い!w

沖雅也さんみたいなルックスならともかく、言っちゃ悪いけど平べったいお顔で背も低い典型的「昭和の日本人」なのに、実に堂々たる格好のつけ方w

最初は「うわっ、ダサっ!」って思ったけど、ずっと観てるとこれがクセになっちゃうワケですw 現在のテレビや映画じゃまず見られない二枚目スタイルゆえ、逆に新鮮だったりするんですよね。

そういう旧態依然とした演技スタイルを勝新太郎さんあたりが崩し始め、それを原田芳雄さんが「格好良さ」に昇華させ、次世代のショーケンさんや優作さんが確立させた……ってところでしょうか?

だからこの『五番目の刑事』は、原田芳雄さん「以前」と「以後」の演技スタイルが混在する、時代の分岐点をフィルムに焼き付けた貴重な作品と言えるんじゃないでしょうか?

セクシーショットはヤクザの情婦「お時」役の荒砂ゆきさんと、「フーテンのマコ」役の水城リカさんです。
 

コメント
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