ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#419

2021-01-04 00:00:07 | 刑事ドラマ'80年代









 
登場編から3話挟んでのドック(神田正輝)活躍編。間が空いたのはたぶん、神田さんの『大捜査線』撮影がまだ終わってなかったからでしょう。

本来なら登場編の翌週に来る筈だったであろうこのエピソードで、実はただのお調子者じゃないドック刑事の本質と、そのルーツが明かされます。

また、傷心のドックをさりげなくフォローするスコッチ(沖 雅也)や、ドックに対する誤解を改めるゴリさん(竜 雷太)等、チーム内の人間模様もよく描かれた好編となってます。

加えて、以前レビューした『あさひが丘の大統領』#19でハンソク先生(宮内 淳=ボン)の高校時代のガールフレンドを演じた水原ゆう紀さんが、今回はドックの大学時代のガールフレンドとして登場されてるのも注目ポイント。ついでに『探偵物語』の撮影を終えた山西道広さんも、水原さんの同僚役でゲスト出演されてます。


☆第419話『禁じられた怒り』

(1980.8.15.OA/脚本=長野 洋/監督=鈴木一平)

東友商事の経理部長=竹下が自社ビルの屋上から飛び降り自殺します。その裏にどうやら大がかりな贈賄事件が絡んでると見て、藤堂チームが捜査に乗り出します。

そんな折り、ドックの大学時代のガールフレンド=坂上美津子(水原ゆう紀)が他殺死体で発見されます。彼女はついこないだ、日曜日に街で偶然ドックと再会し、二人でつかの間のデートを楽しんだばかりでした。

美津子は大学時代、ドックと一緒にボランティア活動に勤しみ、その熱が高じて大学を中退し、現在は福祉施設の保母さんとしてやはり熱心に働いてました。そんな彼女がなぜ殺されないといけなかったのか?

調べてみると、美津子が夜はコンパニオンとして働いていたこと、そこで知り合った竹下経理部長と何度か会っていたこと、そして彼女の勤める福祉施設に毎月100万円が寄付されてたことが判明します。

そう、竹下の弱味を握った美津子が彼を通じて東友商事を脅迫し、寄付金を巻き上げていた。そしてその重みに耐えかねた竹下が自殺し、美津子は東友商事が雇った殺し屋に消されたのでした。

しかし、竹下が死んだ時点で脅迫のネタは無くなった筈なのに、会社はなぜ美津子を殺す必要があったのか?

「危険が迫ったと判断したからじゃないですか?」

スコッチは、美津子が警察に全てを訴えるんじゃないかと、会社が恐れたからだと推理します。そのきっかけは……

「滝さん……それじゃ、俺が日曜日に彼女と一緒にいたから?」

好きだった女の子に悪魔みたいな裏の顔があり、しかも自分とデートしたせいで殺されたとあって、さすがのドックも凹みます。とことん凹みます。

「俺なのか? 俺と会ったことがキミを死に追いやったのか?!」

しかしスコッチは、あえて慰めの言葉はかけず、代わりに地道な捜査で得た手がかりをドックに伝え、ハッパをかけます。それがスコッチなりの優しさなんでしょう。

で、その手がかりを元にドックが捜査に駆け回ると、行く先々で藤堂チームの面々に出くわし、仲間の有難さを痛感するという熱い『太陽』イズム。作風は軽くなっても根っこの部分は変わりません。

その捜査により、竹下以外にも汚職の弱味を握られてた人物や会社が芋づる式に露呈し、結果的に数々の不正が暴かれることになるのでした。

ドックは、大学時代から美津子が世の中に対する不信感と、弱者が搾取され強者が私腹を肥やす理不尽に対する怒りを、人一倍強く持ってたことを思い出します。タイトルの「禁じられた怒り」っていうのはガールフレンドを殺されたドックの怒りじゃなく、美津子の持つ行きすぎた怒りの事だったワケです。

「でも、彼女がそうやって集めたカネで、現実に何人もの人間が助かってるって事も、事実なんです」

ドックは、ゴリさんに本音を吐露します。

「そりゃあ、そんなカネじゃ本当の幸せは買えないって人もいるかも知れない……でも、それは綺麗事ですよ。どんな手段で集めたカネであろうと、カネはカネなんです」

「そうか、それでやっと分かったよ」

「何がですか?」

「お前さんが刑事になったワケだ。お前は彼女と同じ動機で、世の中の矛盾や不公平と闘うために刑事になった。そうだろ?」

ドックもやはり、せっかく入った医大を自らの意志で中退し、医者ではなく警察官になった変わり者。

「冗談じゃないですよ、そんな立派な動機じゃないです。前にも言ったじゃないですか、モノの弾みでなっちゃったんです」

「へへっ、まぁいいや。そんならそういう事にしとこう」

これを機にゴリさんがドックに一目置くようになり、やがて若手を引っ張るリーダーの座を譲ることになるんですよね。それを知ってる今あらためて観ると、ちょっと感慨深いものがあります。

で、なんだかんだあって美津子を殺した実行犯も判明し、ドックが珍しく拳銃を使わずに、ドックならではの闘い方でノックアウトして見事に逮捕します。

「拳銃振り回すだけがデカじゃないんだよ。……覆面車に忘れて来ちゃった」

そんなオチをつけてロッキー(木之元 亮)やスニーカー(山下真司)をズッコケさせることも忘れないドック、やっぱ最高ですw

さて、地検特捜部も動き出し、東友商事の汚職にも本格的に捜査のメスが入ることになりました。

「手段は悪かったが、坂上美津子の怒りが1つ実を結んだワケだ」

ボス(石原裕次郎)もボスなりに、傷心のドックに気を遣ってるみたいです。

「どうだ、今夜あたり一杯やるか?」

「ボス……やっとボランティア精神に目覚めましたね?」

「え?」

「みんなに話して来ます!」

「いやいや、おいっ、ちょ待てよ!」

ホントいい職場ですよねw
 
コメント (5)
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