リー御大の次はやっぱりジャッキーで……って思ったけど、それじゃ順当すぎてつまんないから、意表を突いて今回はこれを蔵出し。私が所有する唯一のタイ映画DVD、プラッチャヤー・ピンゲーオ監督による2008年公開の作品です。
主演はジージャー・ヤーニン、撮影当時23歳ぐらいの可愛い女の子! そしてどういうワケか阿部寛さんもご登場、ナレーションまで担当されてますw
タイの凶悪マフィアのボス=ナンバー8(ポンパット・ワチラバンジョン)の女であるジン(アマラー・シリポン)が、よりによって日本ヤクザの阿部ちゃんと恋に落ちたもんだからさぁ大変!
当然、激怒したナンバー8に命を狙われた阿部ちゃんは急きょ日本に逃亡。残されたジンは阿部ちゃんとチョメチョメして出来た娘=ゼン(ジージャー)を密かに育てるも、大病を患って倒れちゃう。
ゼンはお母さんの治療費を工面するため、かつて母から借金し踏み倒したロクデナシどもを「取り立て」に回り、抵抗する輩を片っ端からフルボッコにしていくのでした。
こんな小柄な女の子がなぜそんなに強いのか? 本作はちゃんとその理由も描いてくれます。ゼンは生まれながらに脳の発達障害を患っており、その代償として「眼で見た体術を一瞬で習得できる」特殊能力を備えてる。
なんと彼女は、テレビで放映されてるカンフー映画を片っ端から観て強くなった! そこで当初はブルース・リー御大の映像を使う予定が著作権の問題で不可となり、監督はやむなく自作『マッハ!!!!!!!!』('03) からトニー・ジャーの映像を流用したんだとか。つまり本来、ゼンの師匠はリー御大だった!
この設定にリアリティーがあるかどうかはともかく、何も無いよりは断然いい。お陰ですんなり感情移入できますから、全てのアクションに説得力がある。燃えます。めちゃくちゃ燃えます!
いや、こんな小柄な女の子が超人的なカンフー技(マーシャルアーツ? ムエタイ?)を見せてくれるだけでも鳥肌もんで、自然と涙が出て来ちゃう。
『キック・アス』('10) におけるヒットガール(クロエ・グレース・モレッツ)の超絶アクションにも興奮したけど、先にジージャーのアクションを観ちゃったもんで驚きはしませんでした。
それだけジージャーの動きは凄い! そのスピードと精確さはブルース・リー御大にも決して負けてない!(私みたいな素人の眼から見ればだけど)
なぜそんなに凄いのかと言えば、ピンゲーオ監督はジージャーが高校生の頃から眼をつけ、4年間みっちり鍛え上げてから撮影に入ってる。その撮影にも丸1年ぐらいの歳月をかけてる。
同じガールズアクション物でも、主演女優を2~3回だけアクション塾に通わせ、たった10日ほどで撮っちゃう日本映画とは環境レベルに雲泥の差がある。そもそも打撃技から高所落下まで何もかも「ガチで」本人にやらせちゃうタイや香港の映画界と、タレント(で得られる収益)を守ることしか頭にない日本の芸能界とじゃ比較にならないワケです。
水野美紀さんや清野菜名さんがいくら動けても、それを活かせる機会がほとんど無い。あったとしても活かしきれる環境が無い。映画『百円の恋』でボクサーに扮した安藤サクラさんも悔しがっておられました。小太りからボクサー体型になるまでの減量過程をたった10日で撮るって、そんな馬鹿げたことやってるのは世界を見渡しても日本だけじゃないですか?
海外のアクション映画を観るたび、そんな我が国の現状を嘆かずにはいられません。もうちょいホント、なんとかならんものか?
だけどそのお陰で、女の子がこれだけ凄いアクションを見せてくれる事実だけで、私は心底感動しちゃう。ほんと有難いことです。(皮肉ですよ!)
『マッハ!!!!!!!!』のトニー・ジャーも確かに凄いけど、カリスマ性じゃリー御大に遠く及ばない。その点『チョコレート・ファイター』当時のジージャーには「可憐さ」という強力な武器がありますから、もしかするとリー御大に太刀打ち出来た唯一の存在と言えるかも?
百聞は一見に如かず、未見の方は是非ご覧下さい。格闘技にそれほど興味なくとも、ジージャーの凄絶アクションには鳥肌&感涙を保証します。以降にもいくつか出演作があるけど、やっぱ一番若い時の本作がオススメ。
少々血なまぐさいシーンもありますが、あとで存分に燃えるための布石ですからそこは我慢。それよりラストのNG集&メイキングの方がよっぽど血なまぐさいしw(絶対、死人でてますw)
当然、主役のジージャーが誰よりも満身創痍。そこまでやるからこその鳥肌&感涙です。日本映画でそんな涙を流したことは一度も無いし、今後もたぶん死ぬまで無いでしょう。
カワイイは最強!とはまさに『チョコレート・ファイター』のこと。これはホント、必見です!