2021年冬シーズン、テレビ朝日系列の土曜深夜に新設された30分枠「オシドラサタデー」でスタートした、福田靖さんのオリジナル脚本による連続ドラマ。
売れない脚本家の吉丸圭佑(生田斗真)はここ数年ほとんど執筆依頼を受けておらず、売れっ子小説家の妻=奈美(吉瀬美智子)に代わって家事をこなす日々。
そもそも欲が無い佳佑はそんな生活に満足してたんだけど、ある日突然、ゴールデンタイムの連ドラを全話書いて欲しいという夢のような依頼が舞い込んだもんだから、さあ困った!w
引き受けはしたものの、書けない! アイデアが浮かばない! それでも無理して頑張って書き上げた脚本が、主演スター(岡田将生)のワガママであっさりボツにされてしまう!
いつもノープランで無責任なプロデューサーに北村有起哉、やる気がないアシスタント・プロデューサーに長井短、やる気しかないディレクターに小池徹平、佳佑&奈美の娘=絵里花に山田杏奈が扮するほか、小野武彦、梅沢昌代、野村麻純、濱野謙太etc…といったレギュラーキャスト陣。
なにを隠そう、私の親友の前職が「売れない脚本家」だったもんで、このドラマは「あるある」に溢れてて他人事とは思えませんw
それが「売れない」脚本家だけの「あるある」なのか、売れたとしてもやっぱり「あるある」なのかは、売れた経験が無い彼には分からないそうですw
だけど恐らく福田靖さんの実体験が元ネタになってるでしょうから、今やチョー売れっ子の福田さんでもこんな時代があったんだ!と思えば、今まさに売れっ子脚本家を目指してる方々には心の支えになるんじゃないでしょうか?
ただし、脚本家時代は風呂なしアパートに独りで暮らし、将来への不安と孤独と不摂生で体調を崩しまくってた私の親友から見れば、裕福な生活と美人の奥さんに恵まれてる佳佑くんがいくらストレスで幻覚を見ようが「それくらい何やねん!」って思うだけ。別に売れなくたって充分幸せやん!って。
まぁしかし、そこはやっぱりフィクションだし、売れない脚本家が現実にどんな生活をしてるかなんて、大多数の視聴者は興味ないでしょうから、殊更リアルに描く必要もないと思います。
視聴者が見たいのは脚本家の私生活なんかじゃなくて、連ドラ制作の裏側とテレビ業界の実態ですよね、きっと。その点、経験者である親友の眼から見るかぎり、このドラマは(多少のデフォルメはあるにせよ)相当リアリティーがあるみたいですw
売れてない佳佑に突然ビッグな仕事が舞い込んだのは、本来そのドラマを書く予定だった有名脚本家が降りてしまったから。降りたくなる理由がそのプロジェクトにはあるワケで、しかも撮影開始が間近に迫ってるもんだから時間がない! そんなリスクばかりの仕事を名の売れた脚本家が引き受けるワケないから、ヒマを持て余してる売れない人にお鉢が回って来るワケです。
似たような経験が私の親友にもあったそうですw 元プロレスラーで当時国会議員だった、仮称「ミスターX」が町興し企画の映画を監督(兼 主演)することになり、他のライターさん(どなたかは不明)が脚本を引き受けたものの、途中で放り出して逃げちゃった。
で、当時マイナーな特撮ヒーロー番組の脚本を書いてた親友がピンチヒッターとして雇われるワケだけど、プロデューサーから渡された企画書を読んで、彼は前任者がなぜトンズラしたかを瞬時に悟ることになりますw
そこには監督=ミスターXがその映画でやりたいことが箇条書きで色々書かれてたんだけど、テーマはおろかジャンルもバラバラで支離滅裂、1本のストーリーには到底まとまらない!
そもそも元プロレスラーの国会議員さんなんて、住む世界も生き方も180度ぐらい違いますから、オタク気質の我々とは趣味がまったく合わない! やれヤクザだの元ロックスターだの純愛だの人情だのと、俺にはそんな資質が無いんだよベイビー・ロケンロール!
で、ちょっと強気に出た親友は、ある程度は企画書に沿いながらも、使えないと思ったネタはことごとく排除し、かなり自分の得意分野に寄せたプロット(あらすじ)を書いてプロデューサーに提出。それが面白ければ文句は無いだろうと、ミスターXを甘く見てたワケですw すると……!
「よくぞ上手くまとめてくれた!」って、プロデューサーは褒めてくれたのに、その翌日、夜中の0時近くに親友のケータイが鳴るワケです。えっ、まさか?と思いながら電話に出たら、ドスの効いた低い声が聞こえて来るワケですよ!w
「先生……こりゃ一体どういう事っスか?」
自分の要求を半分近く無視されたミスターXは、完全にお怒りモード。ちなみにこの時点まではプロデューサーが仲介役だったもんで、親友はまだミスターXと対面してません。
「先生……今すぐ議員宿舎に来て下さいよ、タクシーで」
この「先生」っていう呼び方に絶望的な恐怖を覚えた親友はw、20発ほど殴られる覚悟を決めて議員宿舎に向かったそうです。逃げるよりもこの際、よく話し合ってクビにしてもらう方がすっきりラクになれると判断したんですねw
で、宿舎1階の喫茶店で初対面したのが深夜2時ぐらい。ミスターXは仏頂面ではあるものの、逃げずにやって来た私の親友に敬意を払ってくれたそうです。電話でお怒りモードだったのは、たぶん親友がどう出るか試したんでしょう。
そしてミスターXの部屋に招かれた親友は、謎の美女にコーヒーを煎れてもらったりしながらw、朝方までミスターXの注文をみっちり聞かされたそうです。
その注文はやっぱり支離滅裂ではあったけど、直接話を聞いたお陰で親友は2つのことを悟りました。1つは、ミスターXが本気でいい映画を創りたいと思ってること。そしてもう1つは、要するにロックスター版の『ロッキー』をやりたいんだな、ということ。
ちゃんと映画創りに対して情熱があるなら協力したいし、『ロッキー』なら俺だって好きだから何とかなるかも? そう思った親友はいよいよ覚悟を決め、ミスターXの注文を100%取り入れた脚本を書くことにしたそうです。
期限は1週間後。映画のシナリオを書くにはあまりに短かいけど、親友は必死に頑張りました。途中、ミスターXから電話で「先生、主人公の妹を出したいんですけど」とか「先生、自民党の○○議員が出てくれるから、役を作って下さい」とかw、おいちょ待てよ!(先に言えよ!)って言いたくなる注文がバンバン入って来たけど、親友は文句を言わずに全て受け入れ、自分がこれを面白いと感じるかどうかは置いといて、とにかくミスターXがやりたいことを全て盛り込んだストーリーを、なんとか破綻させずにまとめた脚本を書き上げるのでした。
彼はそれまで、アクション映画や特撮ヒーロー物など、幸いにも自分が好きなジャンルの脚本しか書いて来なかったんだけど、このとき初めて、全くそうじゃない脚本を四苦八苦しながら完成させて、ホントに死ぬほど苦しかったけど、やっと自分が本当の「プロの脚本家」になれたような、それまでの仕事とは違う充実感があったと言ってました。
映画は全くヒットしなかったけどw、ミスターXは後から親友に「先生。次、こんな企画があるんスけど」って、ドスの効いた声で電話して来たそうです。残念ながらその企画は流れてしまい、親友は心底ホッとしながらもw、あのミスターXが自分をプロとして認めてくれたんだなって、ちょっと誇らしい気持ちになったそうです。
……長くなってしまいましたm(__)m ドラマ『書けないッ!?』に話を戻すと、第2話で佳佑のライバルとなる若い脚本家が登場し、メインライターの座を奪いかけるんだけど、彼は主演スターの勝手な注文に難色を示すんですよね。「ぼくの世界観とは違う」「そんな話になるなら引き受けなかった」とか言って。
そしたら、北村有起哉さん扮するスチャラカ・プロデューサーが、顔を馬みたいに長くしながら言いました。「これはプロの仕事だから。キミの世界観なんかどーでもいいんだよ」って。
アーティストの立場からすると聞き捨てならない台詞だけど、プロの現場で働いてるクリエイターからすれば、それは実に真っ当な言葉じゃないでしょうか?
勝手な注文にさんざん振り回されてる佳佑は、一見気弱で頼りなく感じるけど、「自分に合わないから」って逃げちゃうヤツよりよっぽど闘ってるんですよね。
だから、彼は必ず最後に勝つと思います。次回から撮影が始まっていよいよシッチャカメッチャカになりそうだけどw、佳佑ならきっと大丈夫。
そんなワケで、私はこのドラマを楽しみにしてます。脚本家とかドラマ制作の裏側に興味がない人はどう感じられるか分からないけど、とにかくリアルなのは確かですから、興味ある方にはオススメしておきます。
セクシーショットは山田杏奈さんです。