ご存知でしょうか? タイトルからは全く内容が想像つかないけど、1989年の4月から9月に全19話が放映された、日本テレビ系列の刑事ドラマです。
放映日は金曜夜8時、つまり『太陽にほえろ!』から『同PART2』『ジャングル』『NEWジャングル』『もっとあぶない刑事』と続いて来た伝統の刑事ドラマ枠です。
次の『勝手にしやがれヘイ!ブラザー』の後には『刑事貴族』シリーズが始まるというラインナップの中で、この『ハロー!グッバイ』はあまり目立たず、忘れ去られた存在のような気がします。実際、視聴率も芳しくありませんでした。
内容的にもかなり異質で、明らかに「トレンディードラマ」の影響を受けてるんですよね。形だけは刑事ドラマだけど中身はラブコメだった『君の瞳をタイホする!』(フジテレビ)がヒットして、片や正統派の『ジャングル』がコケてしまい、日テレとしても迷いが生じた時期だったのかも知れません。
オシャレな街・銀座を舞台に遊び感覚を前面に押し出し、オシャレなエリート刑事たちが恋愛のついでに事件を解決する。つまり日テレ版『キミの瞳をタイホする!』を目指したワケですね。だからこの枠の作品で唯一、フィルムじゃなくビデオ撮影だったりします。
そうなると私は、本来なら相手にしないところなんだけど、金曜夜8時は日テレの刑事ドラマを観ることが長年の習慣になってたし、『太陽~』OBの三田村邦彦さんがレギュラー出演されてた事もあって、毎週ではないにしろ律儀に観てました。
それに、主役が何しろ水谷 豊さんですから、そんなに浮ついた内容にもなり得ないんですよね。制作も生真面目な東宝だし、根っこには不器用な熱さがあって、トレンディードラマとしてはかえって中途半端に見えたのかも知れません。
だからこそ私は観てられたんだと思います。トレンディードラマを否定するつもりは無いけれど、私が求めるものは一切そこに無いですから。
水谷さんが演じた伊達警部補は、ロンドン帰りの武闘派コップで、恐れを知らない大胆不敵な捜査ぶりは後の『刑事貴族2~3』における本城刑事のプロトタイプと言えましょう。ロンドン帰りって設定は『相棒』にも通じてますね。
三田村さん演じる安藤警部=課長は、伊達と幼なじみの腐れ縁で、犬猿の仲。出世欲が強くてエリート風を吹かせる、まさに伊達とは正反対な性格なんだけど、お互い何となく小競り合いを楽しんでるような節もありました。
賀来千香子さん演じる小宮警部補=通称マリリン(笑)は、伊達&安藤と同期で、2人から想いを寄せられてるモテ女。さて、果たして彼女はどっちを恋のパートナーに選ぶのか?……って、どーでもええわっ!
上記の3人を中心に、布施 博、川崎麻世、五十嵐いづみ、石井章雄(ラサール石井)といったトレンディーな(?)メンツが銀座署「刑事課分室」に勤めてました。
私としては、大地康雄さん扮する東郷署長がツボでした。あの超イカツい顔で「暴力は許さん! 暴力は絶対にいかんのだっ!」って怒鳴りながら机を殴りまくる倒錯ぶりで、署員たちが署長の悪口を言うと必ず背後に立ってるというw、トレンディードラマを意識した割にはコッテコテの吉本新喜劇的キャラなんですよね。
しかも『太陽にほえろ!』が大好きで、いつもテーマ曲を口ずさんでるという、実に愛すべき署長さんでしたw
水谷さんと三田村さんの小競り合いも「お前の母ちゃんデベソ」レベルで小学生そのまんまの他愛なさ。私は微笑ましく観てましたけど、トレンディーさを求める視聴者たちにソッポを向かれたのも、まあ当たり前かも知れませんw
だけど私は、このドラマのそんな垢抜けなさこそが好きでしたね。その証拠に、そういうベタな部分しか記憶に残ってませんからw
今にして思えばこの辺りから、世間一般の嗜好と私自身の嗜好とが、大きくズレ始めたのかも知れません。刑事物以外のドラマはほとんど観なくなってましたからね。
その刑事物すら、同時期に放映された『ゴリラ/警視庁捜査第8班』(テレ朝)や『あいつがトラブル』(フジ)といったアクション路線が世間に無視され、地味~な人情路線ばかりになっちゃいますから、ホント観たい番組が無かったです。
『ハロー!グッバイ』の後番組『勝手にしやがれヘイ!ブラザー』は、フィルム撮影に戻ったものの刑事物ですらなく(ジャーナリストの柴田恭兵&大学生の仲村トオルが主人公)、いよいよ私の愛したアクション刑事ドラマは絶滅するのかと思われました。
ところが、暗中模索の時期をくぐり抜けた日テレ金曜夜8時枠が、まさかの原点回帰を果たしてくれる事になります。それが、結果的に日本で最後のフィルムアクションドラマとなった、あの『刑事貴族』シリーズなのでした。