有吉佐和子の小説、「恍惚の人」。
1972年に作品が発表され、1973年に映画化された。
この作品では、ぼけ老人(認知症)のお世話の大変さが描かれている。
この映画の映像から気付いた点:
・電話はダイヤル式の黒電話。
・普通のポット。(電気ポットでない)
・ウヰスキーは、サントリー・リザーブ?
・氷嚢がある。(アイスノンではない)
・活字を拾う仕事(写植)を打つシーンがあった。
今は、ワープロソフトがあるので、この機械は無くなったと考える。
私が学生時代にアルバイトした時は、この写植の原稿を個人の家に伺って貰ってくる仕事だった。懐かしい機械を見た。
・冷蔵庫から出した牛乳が、牛乳瓶であった。
今や、高級な牛乳でしか見られない牛乳瓶。殆どの牛乳は、紙パックになってしまった。
途中、今の1L入りの牛乳パックも出てきていた
・主婦の買い物時は、籐の買い物バッグをもっている。(ビニール袋ではない)
・主婦の買い物時の服装は、エプロンをしたままで買いものをしている。
撮影場所の設定は、世田谷区辺りになっている。
・当時の環状8号線の映像
焼却場の煙突が見えたり、ダッフルコートをきている若者が映っている。
・自動車学校の看板の電話番号が、302-xxxxと、都内の局番が未だ3桁であった。
その後、3302ーXXXXと、局番の前に、3が追加され、都内の局番は全て4桁になった。
また、携帯電話がない時代なので、03という市外局番は表示されていない。
NTTの電話でも、同じ局内なら、外線局番は今でもいらない。
田舎に行くと、局番なしの電話番号しか表示されていない看板をみる。
携帯電話からでは、その地域の市外局番が分からないので、電話できない場合がある。
・モノクロ映画だったので、逆光で撮影する手法が良かった。
この手法は、黒沢明監督の「羅生門」が有名である。
逆光で撮影されたシーン:森重さんが徘徊するシーン、公園の木、2人の若者のランニング。
映画は、森重久彌さん、高嶺秀子さんの名優の演技が素晴らしかった。
この映画を撮影した当時の森重久彌さんは、60歳。
映画の中の放尿シーンは、本当に放尿している様に見えたが・・・・。
高嶺秀子さんは、49歳。
音羽信子さんも、49歳。
1970年の日本の人口は、1億372万人。内、65歳以上の老人は、731万人。
総人口に占める割合は、7%だった。(14人に一人)
2013年の日本の人口は、1億2726万人。内、65歳以上の老人は、3186万人で、25%(4人に一人)
この43年で、その比率は、3.5倍になり、老人人口は、2500万人も増加したことになる。
老人介護の世界を描いた小説としては、当時は、凄い小説であった。
本では読んだことがなかったが、映画でその描写の凄さに驚いた。
自分が呆けたことを考えると、恐ろしい世界でもある。
自分では、呆けたことも理解していない世界となる。
呆けないように生活しないと行けないと思い知らされた。