『No Blog,No Life!』“夢の中で思いついた「一人分業方式」”~にトラックバック。
今週の火曜日、都内のとある喫茶店で建具屋さんをしてきました。トイレのドアにある“戸当たり”の枠がはずれかかっていたので固定してきたのです。
その喫茶店は平成元年にオープンしたところで、内装は黒っぽい木材をふんだんに使った雰囲気のいいお店。使われている材料もさすがにいいものばかりです。元年といえばその12月に日経平均株価が初めて大幅な下げ(暴落)を記録した年です。つまりはバブル期の一番最後の年ですね。ですから建築も最高の材料を使っているわけです。
しかしあの頃はとにかく仕事が忙しくて、建築業界では「バタバタっとやっつけ仕事」という言葉が流行っていました。現場をいくつか掛け持ちすれば稼げるし、仕事は無尽蔵にあるのですから、一つの現場に時間を掛けずにうま~く手抜きをしていくわけです。誤解のないように書きますが、プロの建築仕事には必ず手抜きが存在します。品質を落とさず、誰にも迷惑をかけず、それでも手抜きは出来ます。手抜きがちゃんと出来るかどうか、これがいい職人かどうかの見分けかたでもあるのです。
しかしこのお店の戸当たりは、本当に単純な“手抜き”でした。目立たないように細い釘を打っていたのですが、その場合は木工ボンドも併用しないといけないのです。それがなかったために、ドアが当たるたびに釘が緩んできて、とうとうぶらぶらの状態になったのですね。
開店前に済ませなければいけないので、僕は手っ取り早い方法を選びました。釘ではなくビスを打つのです。これも言ってみれば手抜きの一つ。しかしビスのほうががっちりときくし、使うビスも茶色く塗装してある化粧ビスというもので、打っても目立たないビスです。制限の中で最良の方法を選択するのがいい手抜きです。
まずは差し金で寸法を測っておいてから枠をはずし、不要となる釘をみんな抜いてきれいにします。ドリルの先に錐をつけて、下穴を開けます。戸当たりの枠材は細いので、いきなりビスを打つと割れることが多いのです。上下二カ所をとめてドアを開閉してチェック。大丈夫です。あとは強度を勘案して同じように数カ所固定すればいい。これで作業の要領が分かったわけです。
そこでふと目を上げると、もう一つのトイレの枠も、事務所の入り口の枠も、みんな同じようにぶらぶらとなっているのに気付きました。物はついで。全部直しちゃうことにして、一寸さっきの作業要領を再検討しました。もっと効率良くしないと終わらない。そこで粋人soroさんのおっしゃる「一人分業方式」を考えつきました。数カ所で同じ仕事をするときには、同じ作業を続けてやって回っていったほうが効率がいいのです。
全てがっちりと固定され、見た目も問題なし。予定より10分早く終了したので、その日一番で淹れてもらったコーヒーをゆっくりと味わうことが出来ました。
画像にある道具はみんなお気に入りですが、中でも10Mスケールと12V電動インパクトドリルはお気に入りです。装着している150mmのビット(ドライバーの先)は通称「正宗」。実にいい仕事をしてくれます。