子ども農業雑誌編集者のKさんと,紙づくりについていろいろやり取りしている中で出て来たのが「アルカリ剤として,重曹の代わりに,アルカリ度がすこしばかり高めのセスキ炭酸ソーダを使ったらどうなのだろうか」というもの。それなら安全で,短時間の煮解で済ますことができるだろうし,環境にも影響がすくないのではないか,というわけです。
セスキ炭酸ソーダについては,わたしはつい最近名を知った程度で,アルカリ強度・安全性を検証するうえでもいつか試す必要はあるなあと思っていました(なんと,つい先日,我が家にもあるのがわかった! 家族が100円ショップで買っていたという話! 知らなかったー!)。結局,Kさんとのやり取りがきっかけになって,「よし,今ちょうど象糞繊維を煮ているときなので,やってみるか」という気持ちになりました。そんなに覚悟めいた話ではありませんが,結果をしっかり得ないといけませんから,一応それだけの思いをもって臨むということです。
さっそく袋入りのセスキ炭酸ソーダ(1kg)を買ってきました。製品の説明には以下のように書かれています(赤字部分)。読む限り,好奇心を引き付けます。
「本品は,手肌への負担が少ない重曹と洗浄力の強い炭酸塩の中間に位置する物質です。強い洗浄力を持ちながら,手肌への負担も少なく水に溶けやすい,重曹と同じ環境にやさしい無機物です」
さあ,作業開始です。寸胴鍋の水を沸騰させ,その中に糞繊維を投入。これが午後1時15分。
同時に,セスキ炭酸ソーダを入れました。
以降,煮こぼれしないように火力を調節しながら煮ていきました。今回は吹きこぼれなし! そうして,煮た繊維を手で揉んでみると,これでよい感じ。
さっそくミキサーに入れ,試しに叩解してみたのが午後4時30分。繊維を煮た時間は3時間余り。思ったとおり,細かな良質の繊維が取り出せました。繊維の色は重曹のときの褐色と少し異なっていて,やや黄色がかっています。
結局,重曹を使った場合は6時間30分煮ましたから,ちょうど半分の時間で煮終えたことになります。アルカリ度を厳密に測定・比較したうえでの実験ではないので,正確なことはいえませんが,おおよそ半分の時間で作業を終えることができそうです。
安全,能率,この2点からいえばセスキ炭酸ソーダはずいぶん効果的だと結論づけられるでしょう。Kさんとのやり取りは刺激的な結果を産み出しました。感謝。