古代日本国成立の物語

素人なりの楽しみ方、自由な発想、妄想で古代史を考えています。

金隈遺跡

2019年09月07日 | 遺跡・古墳
 2019年8月、福岡県福岡市博多区、福岡平野の東を御笠川に沿って南北にのびる月隈丘陵のほぼ中央部、標高30mのところにある金隈(かねのくま)遺跡に行ってきました。福岡空港からバスに乗って金隈遺跡前で下車、ダラダラとした坂道を登りきったところです。この遺跡の西2kmほどのところには板付遺跡があり、南西3kmのところには須玖岡本遺跡があり、いずれも弥生時代を代表する遺跡です。



坂道の途中から見あげる丘陵。この上に遺跡があります。


 ここは一昨年の11月に「魏志倭人伝と神功・応神の痕跡を訪ねる旅」と称して古代史仲間3人で巡った実地踏査ツアーの踏査地として候補に挙げていたものの、当時はリニューアルのために閉館中だったのであきらめたところです。今年の5月にリニューアルを終えて再開されたのでようやく来ることができました。



ここを上がります。


 この遺跡は、1968年(昭和43年)に農道建設に伴って発見された弥生時代の共同墓地です。調査の結果、弥生時代前期中頃から後期前半の甕棺墓348基、土壙墓119基、石棺墓2基が見つかりました。 また、甕棺墓からは136体の人骨が検出されています。これらの人骨から男性の平均身長が162.7cm、女性が151.3cm、さらには平均死亡年齢が40歳代であることがわかりました。副葬品には南方海域にしか生息しないゴホウラ貝で作った腕輪や石剣、石鏃、首飾り用の玉などが見つかり、中国大陸や南方文化との交流が想定されています。

 遺跡を保存、展示するため、発掘調査現場に屋根をかけるような形で展示館が建てられ、甕棺や人骨が発見されたままの状態で見学することができます。当日は朝が早かったこともあって私のほかに見学者は誰もいません。警備員の方が玄関を掃除しているところにお邪魔しました。

この上が展示館の入口。




 展示館に入ると甕棺墓が発掘されたままの姿が保存されていました。カバンから眼鏡を出そうとしているとうしろから警備員の方が近づいてきて説明を始めてくれました。名札には「橋隈」とあり金隈遺跡とのゆかりを感じました。橋隈さんの説明によると「約400年の間に約400体の遺体が葬られたということは平均すると1年間に一体ということになり、集落の一般民衆の共同墓地だとすると1年に一体というのは少なすぎるので、おそらく特別な一族の墓であろう。ゴホウラ貝の腕輪が出ていることから祭祀を司るような集団のリーダー的な一族の墓だと言う先生もいる。」とのことでした。 なるほど、と思う一方で疑問もわきます。同じ北部九州の弥生遺跡で甕棺が出た立岩堀田遺跡、須玖岡本遺跡、平原遺跡、三雲南小路遺跡、井原鑓溝遺跡などからは副葬品として銅鏡が検出されているのに、この金隈遺跡からは銅鏡はおろか、副葬品がほとんど出ないのは何故だろう。ゴホウラ貝ひとつで祭祀集団の墓と決めることは相当に無理がある。

展示館の内部です。


手前からの全景。


人骨も実物が保存されています。


奥からの全景。


テラス部に実物の甕棺が展示されています。


 入口の横には小さな展示スペースがあり、時間の経過とともに形状が変化する甕棺の実物が展示されていて、ここでも橋隈さんが甕棺の形状の変化や甕棺製作技術の変化について説明してくれました。

展示スペースです。


遺跡の紹介。

こんなところまで中国語や韓国語が。



甕棺の形状の変化。




遺跡の全体図。白く浮かび上がった部分が展示館として保存された場所。




 詳しい説明をしてくれるだけでなく、質問にもそれなりに答えてくれる橋隈さんは5月のリニューアルオープンのために警備員として赴任してきた警備会社の方で、考古学や古代史はまったくの門外漢とのこと。警備のみならず受付を含む見学者の応対を実質的にまかされるので渡されたマニュアルをもとに勉強をしているそうで、付け焼刃にしては堂々と適切に説明されるので驚きました。2015年に福岡市博物館で開催された特別展「新・奴国展」の分厚い図録を見せてくれたり、福岡平野にあるほかの遺跡を紹介してくれたりと至れり尽くせりです。毎日の来館者数はせいぜい十数人と少ないので、来館者との会話が楽しいのかもわかりません。おかげで私も楽しい時間を過ごすことができました。展示館を見学した後は展示館の裏側の公園(もちろん多数の甕棺が出たところ)をぐるっと回って帰路につきました。

石棺が出たところ。盛り土をして円墳のように復元されています。


このあたり一帯から甕棺が出ました。



以上、金隈遺跡の紹介でした。



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小嶋浩毅
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