10キロメートルにも及ぶ火炎は、天を焼いた。最後の役務に就いていた将兵たちに時間は残っていない、300人余りの彼等は、撤退行の軍船に急いだ。脱出の軍船は7隻、準備されている、とび乗った彼等は、懸命に櫂で漕いだ、一時も早く沖に出たいと心は急いた。
トロイ軍は、この変事に気がついた。城壁上の衛兵が気付くや、ただちに伝言に走った。連合軍の陣営が燃えている。空に立ちのぼる煙は風で海上へと流れ、海上の眺めを遮った。10キロメートルに及ぶ連合軍の陣が焼ける、その光景は壮大な火の海であった。トロイ軍の将の面々が城壁の上から見ている、櫓からは、王プリアモスが、この情景を見ていた。(小さな町ひとつが燃え尽きていく光景を想像してください。)この炎上する様を見ていたプリアモスの身が震えた。何故、震えたか、それはプリアモス自身にも判らなかった。
陣を焼いて撤退した連合軍、この光景を目にしているプリアモス、トロイ軍の将兵たち、重臣、側近の面々、そして、トロイの市民たち、彼等の頭に浮かんだのは、そして、胸の思いは、『俺たちは、戦いに勝ったのだろうか?』 勝利の感覚には、ほど遠いものがあった。プリアモスも、アエネアスも、重臣、側近、城中の女たちも見ている光景は、何なのだろうか。目を何度もこすって見た、見ては、こすって、また見た。目にするのは、燃えている事実で勝利の実感ではなかった。
トロイ軍は、この変事に気がついた。城壁上の衛兵が気付くや、ただちに伝言に走った。連合軍の陣営が燃えている。空に立ちのぼる煙は風で海上へと流れ、海上の眺めを遮った。10キロメートルに及ぶ連合軍の陣が焼ける、その光景は壮大な火の海であった。トロイ軍の将の面々が城壁の上から見ている、櫓からは、王プリアモスが、この情景を見ていた。(小さな町ひとつが燃え尽きていく光景を想像してください。)この炎上する様を見ていたプリアモスの身が震えた。何故、震えたか、それはプリアモス自身にも判らなかった。
陣を焼いて撤退した連合軍、この光景を目にしているプリアモス、トロイ軍の将兵たち、重臣、側近の面々、そして、トロイの市民たち、彼等の頭に浮かんだのは、そして、胸の思いは、『俺たちは、戦いに勝ったのだろうか?』 勝利の感覚には、ほど遠いものがあった。プリアモスも、アエネアスも、重臣、側近、城中の女たちも見ている光景は、何なのだろうか。目を何度もこすって見た、見ては、こすって、また見た。目にするのは、燃えている事実で勝利の実感ではなかった。
