息苦しさに耐えて、腹胴の中で過ごす将兵たちは、掻きたいところも掻かずに身をすくめて潜んで時をやり過ごしていた。
オデッセウスの覗き見の穴からの光も途絶えた。静かに夜の闇が近づいてきていた。
日がな一日、終戦の安堵で喜び歌った一日も暮れ、人々は、その暮色の中を家路についた。その宵闇の中、木馬の近くにたたずんだ、一人の女性がいた。彼女は、他人には聞こえないような小さな声でつぶやいた。
『戦争が終わった!そんなこと、とんでもない!あるわけがない。』 そして、歩き始めた。まだ何かつぶやいている、聞き取れない。彼女はささやく、小さな声、いや、喘ぎに似た吐息の声であった。彼女へレンは、メネラオスが木馬の中にいると信じて語りつぶやいた。
『愛しい人よ、いるのでしょう。私の愛しい人、貴方に会いたいわ。ね~、顔を見せて、私のメネラオス。』 彼女は、木馬の周りを巡りながら呼びかけた。ヘレンは、木馬の周りを三、四度巡って遠ざかっていった。
木馬の腹胴の中には、緊迫の気がみなぎった。
オデッセウスの覗き見の穴からの光も途絶えた。静かに夜の闇が近づいてきていた。
日がな一日、終戦の安堵で喜び歌った一日も暮れ、人々は、その暮色の中を家路についた。その宵闇の中、木馬の近くにたたずんだ、一人の女性がいた。彼女は、他人には聞こえないような小さな声でつぶやいた。
『戦争が終わった!そんなこと、とんでもない!あるわけがない。』 そして、歩き始めた。まだ何かつぶやいている、聞き取れない。彼女はささやく、小さな声、いや、喘ぎに似た吐息の声であった。彼女へレンは、メネラオスが木馬の中にいると信じて語りつぶやいた。
『愛しい人よ、いるのでしょう。私の愛しい人、貴方に会いたいわ。ね~、顔を見せて、私のメネラオス。』 彼女は、木馬の周りを巡りながら呼びかけた。ヘレンは、木馬の周りを三、四度巡って遠ざかっていった。
木馬の腹胴の中には、緊迫の気がみなぎった。