『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第13章  木馬大作戦  19

2008-06-12 07:51:25 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 彼等は結論づけた。連合軍は自軍みずから敗北を認め、戦いを止め、自国ギリシアへ逃げ帰った。この状況をそのように理解した。この戦野には、もうすでに帰ってくる陣営がなくなっている。もう燃え尽きてしまっているではないか。この風景を見て、彼等はそのように結論づけた。
 彼等の視野の中に、牛羊が草を食んでいる囲いがあった。彼等はその場所に足を運んだ。囲いの柵に文言が書かれた札が下げてあった。
 『我々は、故国に帰る。囲いの中の牛羊をトロイ市民の皆様に贈る。』 と書いてあった。この些細なひと言で彼等に戦いの終わりを感じさせた。だが、彼等は、まだ、安堵の胸をなでおろさなかった。彼等は、ぐるっと見廻した。戦争終結としては、あまりにもあっけない幕引きである。そのことに不安感を拭い去れないでいた。
 彼等は、残火のくすぶる陣営地のあちこちを見て廻った。長い歳月にわたった戦争を振り返って、『ここは、だれそれの陣地だった。』 『そう、そう。あの強い将も一本の矢が当たって死んだわね。』 『ヘクトルの祟りよ。』 と、話し合いながら、トロイの市民たちは歩いて廻った。