『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  55

2011-04-08 07:37:54 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ユールスは、火おこしが大変な作業であることを知った。着火作業は摩擦方式である。火をつける木には獣脂がしみ込ませてあるのだが、炎をあげるまでの奮闘は並大抵ではなく、考えと実際には大きな差があることを知った。
 陽は西に傾いてきていた。森の中へ狩にいった二人が帰ってきた。彼らは丸々と太った野ウサギ3羽を手にしていた。
 『おう、ご苦労ご苦労。野ウサギ3羽か、上々じゃないか。明日の狩、期待できそうか』
 『え~え、いけると思います。こいつを見てください。なかなかいい肉つきの野ウサギです。私たちが捌いてきます。少々待っててください。どうだ、ユールス。こいつを焼いて夕めしのおかずだ、旨いぞ。待っていろよ』
 二人は水辺に降りて行き、3羽の野ウサギを捌いてきた。彼らは準備してきた串に肉を刺して火にあぶった。脂がたれて燃える、くすぶる、匂いが鼻をつく、食欲が腹のそこからわきあがってくる。そして、塩をふりかける、ウサギが焼けた。
 『さあ~、皆、食べよう』
 アエネアスの一声であった。右手に焼けたウサギの串、左手に酒杯とパン。『こいつは、旨いっ!』と声をあげて口に運んだ。ユールスも小さな口でウサギの串にかみついた。