『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  58

2011-04-13 16:35:24 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 朝方は冷える、アエネアスは、枯れ木、小枝を焚き火につぎ足し炎を大きくした。周囲に気を配り思考に集中していく自分を見つめた。
 建国への旅立ちを決断し、側近たちにその意を伝えた。しかし、そのことを実行の気運が熟するまで外部に漏らすことなく、平静を保つ日常を続けることを要請した。彼は、ここまでのことを振り返って、これでいいのかを考えた。彼なりの尺度で今の状態を『是』とした。
 彼は、陽の出る方向の空に目を向けた。まだ、星は、冴えた輝きを地上に注いでいる、黎明にはまだ間がある、今日は果たして獲物に遭遇するだろうか。それにはいい猟場であることが大切な条件である。それについては朝めしを食べながら皆とはかることにした。また、俺とユールスは、どんなカタチでこの猟に参加するかを思案した。このことについては、あれこれと迷いながら考えた。
 考えてみると、これはとても大変なことだと気がついた。

第3章  踏み出す  57

2011-04-13 08:30:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 人々が『荷車』と呼ぶ星座がふたつあることであった。ふたつの『荷車』は、勝手なカタチで天空に瞬いている、また、このふたつは、姿を隠すことなく空から地上に、また、海上に光を投げていることであった。このふたつの星座がひとつの方向から大きくぶれないことも不思議の一つであった。
 彼は、このことをユールスにわかるように話した。ユールスがわかったかどうかについては確かめようがなかった。語る彼自身この不思議の理由を知らずに話したことである。
 ユールスは不思議の多い話が好きな様であった。ユールスは仰向けに寝そべって、飽きることなく空の星を眺めていた。彼はいつとはなしに目を閉じて眠りに落ちていった。彼の耳には、夜に吼える獣たちの声は耳にはいっていないように思われた。
 従者たちは交替しながら、焚き火の炎を絶やすことなく夜の警備を行った。遠い林から、また、近い森の中からとどく獣たちの夜の吼える声に充分に注意をはらった。
 夜明けにまだ間がある、アエネアスは目覚めた。彼は従者に声をかけた。
 『どうだ。何事もなさそうだな。お前も休め、俺が替わる』
 『よろしいのですか、統領。それでは、言葉に甘えます』
 『遠慮はいらん、いいから休め』
 短いやりとりでアエネアスは焚き火の傍らに腰をおろした。