『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  352

2014-09-03 07:37:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らは、イラクリオンの朝を迎えた。二度目の朝である。二度目の朝は、勝手知ったる我が海の風情で朝行事を済ませた。彼らが交わす今朝の話題は『朝はどこから来るのか?』であった。ニューキドニアにおろうが、イラクリオンにいようが
マリアにいても、朝は朝であった。、
 テトスが声をあげて、誰彼なくこの疑問を投げた。
 『おい!おッ、お前、朝はどこから来ると思う?』
 『俺は、こっちから来ると思っている』と言って、東の方を指さす。目があった二人目にも同じ質問を投げる。
 『俺は朝が天空の高みからやってきて、夜は、俺の立っている地面の底からせりあがってくると思っている』
 この会話が朝を迎えた彼らを笑わせた。頭を傾げて深く考え込む者もいる。10人10様で、この疑問を認識しているらしい。古代に生きた者たちが感じた世の不思議であったことは否めない。とにかく一同は笑った。
 『とにかく、明るくなったら、それが朝だよ』を答えとした。朝一番の笑いが生活の中の必要ごとであったのだ。
 彼らは朝めしを終えた。アレテスは、改めて、空模様をうかがった。
 夜通し吹いていた風はおさまり、雲が空を覆っている、陽ざしのない朝である、もしや、雨が来るのでは、この暗示が彼らの気持ちを暗くした。
 エドモン浜頭とスダヌスの話し合う声が聞こえてきる。二人が木立を抜けて姿を現した。
 『お~お、ご一同 おはよう、ご機嫌はいかがじゃな』
 スダヌスが声をかけてくる。一同が声をそろえて挨拶を返した。スダヌスが今日の予定について話し始めた。
 『今日は特別だぞ。エドモン浜頭が皆をクノッソスの宮殿、集散所へ案内される。空はこのように曇っているが、雲は高みにある、雨は降らない、その心配は無用だ。宮殿までは歩いて半刻だ。以上だ』
 一同から拍手が起きた。
 『判ったな!お前ら仕度を急げ!できたら、即、出発だ』
 『オウッ!』
 歓声があがる。イリオネスは、エドモン浜頭とスダヌスの方へ身体を向けた。
 『スダヌス、ありがとう』続けて、
 『エドモン浜頭、今、スダヌスより聞きました。大変お世話になります。クノッソスを案内していただけるとはありがとうございます。言葉に甘えます。一同に仕度させます、少々の時間を、、、』
 彼らの仕度は間をおかずにできあがった。
 イリオネスが声をかけた。
 『アレテス、もう、いいか?』
 アレテスは一同を見渡した。そして、念を押した。