続けて、イリオネスは礼儀としてアドーネ夫人の肩に手をかけて武骨ながらもやさしく抱いた。
イリオネスは、携えてきた袋から『方角時板』を取り出して、エドモン浜頭に手渡した。
『エドモン浜頭殿、これは私どもが開発して造った『方角時板』と名づけた道具です。使っていただければ幸いです。私どもが世話になったお礼の印です。お受け取りください。使い方は後ほど説明いたします』
『ほっほう、目にするのは初めてです、めずらしいもののようですな』
アドーネ夫人もしげしげと目線を注いで見つめた。
『まあ~、ちょっと見てください。これは鉄の棒です。これだけでも用を足します』と言って、イリオネスは鉄の棒に結びつけてあるヒモの端を持って、目の前にぶら下げた。鉄の棒は平衡バランスをとって、ぶら下がり揺れて動きが停まった。
『この棒の先が北です。こちらが南です』
鉄の棒の一端がクノッソスの方角を指し示し、片側は浜の方を指していた。イリオネスは右手で鉄の棒を円回転させた。鉄の棒は何かの力を感じたように回転速度を落として静止した。鉄の棒の一端はキッチリ北を指し示し、反対の一端は南を指し示していた。彼はさらにもう一度同じ回転を鉄の棒に与え、静止を待った。またしても、鉄の棒は南北を指し示して停止した。
『如何なる運動を与えても、このように南北を指し示して停止します。この鉄の棒さえあれば星のまたたいていない闇夜の航海でも迷うことなく、目的地に向かって船を進めることができます』
エドモン浜頭は、驚きの目を見張って鉄の棒を眺めた。
『浜頭もやってみてください』
浜頭はヒモの端をもって、イリオネスがやったように鉄の棒を操った。鉄の棒は南北指して止まる。再三、再四試みた。三、四回とも鉄の棒は南北を指して停止した。
彼の表情はほころんだ。めずらしいものを初めて手にした少年のように顔をほころばせた。
『これを私に、、、』言葉を切って、また口を開いた。『これを私に、ありがたく頂戴いたします。イリオネス殿、ありがとう』
互いが礼物の受け渡しを終えて、手を固く握り合った。
イリオネスは、携えてきた袋から『方角時板』を取り出して、エドモン浜頭に手渡した。
『エドモン浜頭殿、これは私どもが開発して造った『方角時板』と名づけた道具です。使っていただければ幸いです。私どもが世話になったお礼の印です。お受け取りください。使い方は後ほど説明いたします』
『ほっほう、目にするのは初めてです、めずらしいもののようですな』
アドーネ夫人もしげしげと目線を注いで見つめた。
『まあ~、ちょっと見てください。これは鉄の棒です。これだけでも用を足します』と言って、イリオネスは鉄の棒に結びつけてあるヒモの端を持って、目の前にぶら下げた。鉄の棒は平衡バランスをとって、ぶら下がり揺れて動きが停まった。
『この棒の先が北です。こちらが南です』
鉄の棒の一端がクノッソスの方角を指し示し、片側は浜の方を指していた。イリオネスは右手で鉄の棒を円回転させた。鉄の棒は何かの力を感じたように回転速度を落として静止した。鉄の棒の一端はキッチリ北を指し示し、反対の一端は南を指し示していた。彼はさらにもう一度同じ回転を鉄の棒に与え、静止を待った。またしても、鉄の棒は南北を指し示して停止した。
『如何なる運動を与えても、このように南北を指し示して停止します。この鉄の棒さえあれば星のまたたいていない闇夜の航海でも迷うことなく、目的地に向かって船を進めることができます』
エドモン浜頭は、驚きの目を見張って鉄の棒を眺めた。
『浜頭もやってみてください』
浜頭はヒモの端をもって、イリオネスがやったように鉄の棒を操った。鉄の棒は南北指して止まる。再三、再四試みた。三、四回とも鉄の棒は南北を指して停止した。
彼の表情はほころんだ。めずらしいものを初めて手にした少年のように顔をほころばせた。
『これを私に、、、』言葉を切って、また口を開いた。『これを私に、ありがたく頂戴いたします。イリオネス殿、ありがとう』
互いが礼物の受け渡しを終えて、手を固く握り合った。