『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY  第7章  築砦  364

2014-09-19 07:08:48 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アドーネ夫人は、ある種類の山野草を乾かしてつくったと思われる茶を煎じ入れ、持参してテーブルの上に置いた。茶を喫する三人に落ち着いた雰囲気が満ちてきた。
 『ところで、イリオネス殿、スダヌスの言伝てにあったクノッソスの昔のこと、イラクリオンのここ数年の世情について聞きたいとの由、まあ~、私の知っている範囲で話して差し上げようと思っていますが、それでよろしいのですかな?』
 『はい、それで結構です。宜しくお願いいたします』
 『詳しいのかと言われるとそうではない、知っている限りの事について話しましょう』
 浜頭は、そのように前置きして、クノッソス宮殿の過去について、訥々と丁寧に話し始めた。
 『先に行かれたマリアの宮殿集散所もそうだが、あれと同じ区割り構造で建てられた宮殿集散所が、クノッソスの南の高地を超えてクレタの南岸のフエストス、東の突端で海に面したザクロス、そして、マリアにある。それらの宮殿集散所の敷地の区割り、構造形態は、全て、クノッソスの宮殿集散所に倣って、設計の上、建設されたものなのです。建設された時代は、このクレタ人が築いた文化文明のもっとも隆盛の時代であり、このクレタが誇った木材資源の豊富な時代でもあったのです。そのようなわけで建物には木材がたくさん使われています。もっともそれには訳もあるのですが。マリア、ザクロス、フエストス、これら三つの宮殿集散所は、クノッソスの宮殿集散所のできた数年後に造られたものです。これらが今から350年前のクレタ島のはるか北にあるテラ島の大爆発!その時の大地震で大きく損壊したのだが木造であったこと、頑丈に立てられていたこともあり、それが幸いして思ったより損傷が小さかったのですな。現在の建物は、その時の損傷を修復して現在に至っているのです。その頃、この島にあった石で造った建造物の全てが大地震で壊れたというのに、木材を使って造った宮殿と集散所は一部の損壊と言うカタチで生き残ったわけですな。まあ~、その中でもしっかりした地盤の上にしっかりした構造で建てられていたクノッソスの宮殿集散所は損傷が極めて小さかったのです。それを修復して現在に至っているのです。宮殿が建てられてから500年の年月が経っている建物なのです。私が耳にしているのでは、1000年の間にクレタを襲った大地震は、三度もあるのですな』
 彼は茶を一口飲んでひと息ついた。