彼ら一行は集散所を見て廻った。彼らは、その賑わいに目を見張った。午後のコースには、生活雑貨の売り場、食品の売り場、極めてという表現がふさわしい生鮮食品群の売り場の繁忙さには舌を巻き絶句した。
生活雑貨の売り場には、文明芸術性豊かな品物が雑貨の類として並べられている。それらの売り場を囲む買人、客の多様さにも目を見張った。
鮮魚類の売り場にさしかかった。この一劃は、エドモン浜頭が取り締まっている売り場である。ここは、近傍からと思われる客でごった返していた。一行はその様子を驚きの目で見て通った。
エドモン浜頭は、一行を集散所の展望塔とおぼしき個所へと案内してくれた。彼らは雀躍して喜んだ。はるか遠くにクレタ海、海に臨んで居並ぶ家並みのイラクリオンの街区、クノッソスの宮殿を囲むなだらかな丘陵斜面の展開する風景を目に収めた。宮殿が小高い斜面に立っていることも風景を目にして知った。彼らはこの小旅行の満足を心から味わっていた。
スダヌスは、イリオネスから預かった銀を集散所の木札に替えてきていた。
『イリオネス、行こう』
二人は連れ立って食材の買い込みに向かった。肉類、野菜類、果物類、そして、酒に至るまでふんだんに買い込んだ。
『おう、イリオネス、これくらいでいいだろう!』
二人はうなずきあって、一行の者たちに持たせて帰れるように荷を造った。彼らは、宮殿を見て廻り、荷を携えて帰途についた。
クノッソスの宮殿からイラクリオンの街区に向けて下っている道を歩いた。
帰りの道中半ばでイリオネスは往路の途中に目にしたイデー山の頂を振り返って眺めた。山頂が夕陽を受けて輝いている様を見て脳裏に焼き付けた。彼の胸中には『いずれの日にか』であった。彼の胸を通り過ぎた想いが10ッか月後に実現するのだが、この時、彼は、まだ、その機会の訪れには気づいてはいなかった。
彼は、帰りのニケの船上から『この山の山容が見れるか』であった。往路の時には、海上からの海岸風景に気が奪われて、この山については、一考だにしなかったのである。彼は『海上からもう一度あの山を見てやる』と心に決めた。
スダヌスが声をかけてきた。
『おう、イリオネス、何を考えている?』
彼は、このことを言おうか言おまいと戸惑った。まあ~、聞いてみるくらいはいいだろうとスダヌスに答えた。
『スダヌス、あの山の事だ。帰路に海上から、あの山が見えるだろうか?』
『ホッホウ、あの山か。あの山のてっぺんから海岸線が見える。そうであれば、海からあの山が見えることになる。あの山にはだな、俺もこの年になるまで三度は登っている。ようし判った。俺に任せろ!』
彼は、胸を叩いてドラムを響かせた。
生活雑貨の売り場には、文明芸術性豊かな品物が雑貨の類として並べられている。それらの売り場を囲む買人、客の多様さにも目を見張った。
鮮魚類の売り場にさしかかった。この一劃は、エドモン浜頭が取り締まっている売り場である。ここは、近傍からと思われる客でごった返していた。一行はその様子を驚きの目で見て通った。
エドモン浜頭は、一行を集散所の展望塔とおぼしき個所へと案内してくれた。彼らは雀躍して喜んだ。はるか遠くにクレタ海、海に臨んで居並ぶ家並みのイラクリオンの街区、クノッソスの宮殿を囲むなだらかな丘陵斜面の展開する風景を目に収めた。宮殿が小高い斜面に立っていることも風景を目にして知った。彼らはこの小旅行の満足を心から味わっていた。
スダヌスは、イリオネスから預かった銀を集散所の木札に替えてきていた。
『イリオネス、行こう』
二人は連れ立って食材の買い込みに向かった。肉類、野菜類、果物類、そして、酒に至るまでふんだんに買い込んだ。
『おう、イリオネス、これくらいでいいだろう!』
二人はうなずきあって、一行の者たちに持たせて帰れるように荷を造った。彼らは、宮殿を見て廻り、荷を携えて帰途についた。
クノッソスの宮殿からイラクリオンの街区に向けて下っている道を歩いた。
帰りの道中半ばでイリオネスは往路の途中に目にしたイデー山の頂を振り返って眺めた。山頂が夕陽を受けて輝いている様を見て脳裏に焼き付けた。彼の胸中には『いずれの日にか』であった。彼の胸を通り過ぎた想いが10ッか月後に実現するのだが、この時、彼は、まだ、その機会の訪れには気づいてはいなかった。
彼は、帰りのニケの船上から『この山の山容が見れるか』であった。往路の時には、海上からの海岸風景に気が奪われて、この山については、一考だにしなかったのである。彼は『海上からもう一度あの山を見てやる』と心に決めた。
スダヌスが声をかけてきた。
『おう、イリオネス、何を考えている?』
彼は、このことを言おうか言おまいと戸惑った。まあ~、聞いてみるくらいはいいだろうとスダヌスに答えた。
『スダヌス、あの山の事だ。帰路に海上から、あの山が見えるだろうか?』
『ホッホウ、あの山か。あの山のてっぺんから海岸線が見える。そうであれば、海からあの山が見えることになる。あの山にはだな、俺もこの年になるまで三度は登っている。ようし判った。俺に任せろ!』
彼は、胸を叩いてドラムを響かせた。
