宴がはねた。アレテス以下7人の者たちは夕めしの終わった場をかたずけた。彼らはスダヌスを残して、浜頭一家に礼を述べて館を辞した。空には月が出ていた。
張り番についている者たちへのみやげを持って浜小屋の宿舎に帰り着いた。
イリオネスが心中にひそかに抱いている思いは、『俺たちの用心深さが身の安全を保っている』であった。彼は、トラブルもなく今日を過ごしたことを感謝した。頂点に立つものの立場は孤独である。一同に感謝するのは当然として、他に誰に感謝しようかと迷った。彼は感謝をする対象がほしいと思った。『月か、、、』彼は頭上に輝く月に感謝の気持ちを伝えた。ついでに、明日の安泰も月に願った。彼はそうせずにはいられなかった。ただそれだけの事である。
ニケの張り番が交替して一同は寝に着いた。軽いいびきを耳にする。イリオネスは、目を閉じるが寝付けない。
明日の思案が頭の中を駆け巡っている。目をあけて闇を見つめる、天井の梁がうっすらと目に映る。ニューキドニアの浜を出るときに考えた、あれをやりたい、これをしなければについて振り返った。
彼は、クノッソスの歴史を知りたい、イクラリオンの昨日、今日、明日をも訊ねてみたかった。それから、帰途をどうしようかと考えた。明朝、スダヌスと打ち合わせだなと意を決した。荷を持った心が軽くなるのを覚えた。うつらとした、彼に静かに眠気が訪れた。
朝のうつらうつらの眠りの中で、彼は思考の落とし物に気が付いて目を覚ました。明るい、小屋の中に一人でいる自分に気が付いた。
『夜が明けたか』彼は半身を起こした。浜小屋の戸が開く、アレテスが姿を見せた。
『隊、いや、頭、相談したい件があるのですが』
『おう、用件は何だ?急いでいるのか』
『持参したパンの件です』
『どうした、言ってみろ』
『パンが今日の昼めしに食べるとそれでなくなります』
『ほう、そうか。そういうことになったか、判った。何とか、考える。スダヌス浜頭はまだか』
『まだです』
『そうか。俺は朝行事を済ませる。アレテス、ここで待っていてくれ』
彼は立ちあがり海へと向かった。思案しながら海に身を浸した。頭まで海に浸して、顔を上げた。
『おう、イリオネスおはよう。朝行事の真っ最中というところか』
『おはよう。スダヌス、お前、いいところへ来てくれた。お前も朝行事を済ませろ。相談ごとだ。すっきりしたところでやろう』
『おう、昨夕はご苦労であった。エドモン浜頭たちは大層喜んでいたぞ!そのうえ後片付けまでとは、奥さんも大変喜んでいた。イリオネスあがろう』
『おう!』
朝の浜風が肌に冷気を感じさせた。身体を乾かしながら浜小屋へと足を運んだ。
浜小屋では、アレテスが窓も入れ口の戸も開け放し、よどんだ空気の入れ替えをしていた。イリオネスが声をかけた。
『おう、三人で相談だ。今日のこれからをだ』
『判った。まあ~、腰を下ろせ。相談ごとを順を追って話せ』
イリオネスはじい~っとスダヌスを見つめた。
張り番についている者たちへのみやげを持って浜小屋の宿舎に帰り着いた。
イリオネスが心中にひそかに抱いている思いは、『俺たちの用心深さが身の安全を保っている』であった。彼は、トラブルもなく今日を過ごしたことを感謝した。頂点に立つものの立場は孤独である。一同に感謝するのは当然として、他に誰に感謝しようかと迷った。彼は感謝をする対象がほしいと思った。『月か、、、』彼は頭上に輝く月に感謝の気持ちを伝えた。ついでに、明日の安泰も月に願った。彼はそうせずにはいられなかった。ただそれだけの事である。
ニケの張り番が交替して一同は寝に着いた。軽いいびきを耳にする。イリオネスは、目を閉じるが寝付けない。
明日の思案が頭の中を駆け巡っている。目をあけて闇を見つめる、天井の梁がうっすらと目に映る。ニューキドニアの浜を出るときに考えた、あれをやりたい、これをしなければについて振り返った。
彼は、クノッソスの歴史を知りたい、イクラリオンの昨日、今日、明日をも訊ねてみたかった。それから、帰途をどうしようかと考えた。明朝、スダヌスと打ち合わせだなと意を決した。荷を持った心が軽くなるのを覚えた。うつらとした、彼に静かに眠気が訪れた。
朝のうつらうつらの眠りの中で、彼は思考の落とし物に気が付いて目を覚ました。明るい、小屋の中に一人でいる自分に気が付いた。
『夜が明けたか』彼は半身を起こした。浜小屋の戸が開く、アレテスが姿を見せた。
『隊、いや、頭、相談したい件があるのですが』
『おう、用件は何だ?急いでいるのか』
『持参したパンの件です』
『どうした、言ってみろ』
『パンが今日の昼めしに食べるとそれでなくなります』
『ほう、そうか。そういうことになったか、判った。何とか、考える。スダヌス浜頭はまだか』
『まだです』
『そうか。俺は朝行事を済ませる。アレテス、ここで待っていてくれ』
彼は立ちあがり海へと向かった。思案しながら海に身を浸した。頭まで海に浸して、顔を上げた。
『おう、イリオネスおはよう。朝行事の真っ最中というところか』
『おはよう。スダヌス、お前、いいところへ来てくれた。お前も朝行事を済ませろ。相談ごとだ。すっきりしたところでやろう』
『おう、昨夕はご苦労であった。エドモン浜頭たちは大層喜んでいたぞ!そのうえ後片付けまでとは、奥さんも大変喜んでいた。イリオネスあがろう』
『おう!』
朝の浜風が肌に冷気を感じさせた。身体を乾かしながら浜小屋へと足を運んだ。
浜小屋では、アレテスが窓も入れ口の戸も開け放し、よどんだ空気の入れ替えをしていた。イリオネスが声をかけた。
『おう、三人で相談だ。今日のこれからをだ』
『判った。まあ~、腰を下ろせ。相談ごとを順を追って話せ』
イリオネスはじい~っとスダヌスを見つめた。