『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  353

2014-09-04 06:24:50 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お前ら、判っているな!丸太ん棒を杖代わりについていくのだ』
 彼らは、ニケの張り番を三人残して出発した。エドモン浜頭の館のある街区を通り抜け南へと向かった。
 エドモン浜頭は、クノッソスの宮殿に向かうに際して、胸に抱いている心配が杞憂に終わることを願った。一行は、ニケに積んできた丸太ん棒を杖にして歩を運んだ。
 クノッソスの宮殿に通ずる道は幅広く三人が横並びで行き交うに十分な広さでできていた。
 彼らが往きの道中で話題にしたのは、南西の方向、はるかなる先に見える山頂に雪をのせた山であった。
 彼らは30分も歩いただろうか、道端に腰を下ろして小休止をとった。イリオネスはエドモン浜頭に問いかけた。
 『エドモン浜頭、はるか遠くに見える、頂きに雪のある、あの山は何という山ですかな?』
 『お~お、気づかれたかな。あの山はだな、伝説の山だよ。その昔、レアなる女がゼウスを生んだといわれている山だ。山の名はイデー山(標高2456m)という、イデーとはクレタ語で、すべすべという意味だ、山のてっぺん近くはすべすべの山なのだ。それでイデー山が山の名前というわけだ。あの山が、このクレタの『へそ』の位置に当たる』
 『ハッハア~、そうですか。あれがゼウス伝説のイデー山なんですか』
 イリオネスは絶句した。
 『そうだ。イラクリオンを早朝に出て、あの山の麓に着くのが日暮れどきだ。俺がまだ嫁取り前の若いころに登った。てんにもはれにも、その一度だけだ。クレタ全島が見渡せたな』
 『そうですか』
 『山の中腹とおもわれるところに洞窟があってな、そこにゼウスを祀った神殿がある。そういう山だ』
 一同がエドモン浜頭の話にうなずいた。
 『おい、お前ら、休止は、もう充分だろう。さあ~、立って立って、行こうぜ』
 スダヌスは一同に声をかけた。彼らは歩き始めた。
 宮殿の外観が見え始める、歩みのスピードが速くなる。彼らが前方に目にしたのは、六、七人が群れて歩いてくる男の一群である。
 イリオネスは平静であるが、アレテスとピッタスが身構えた。エドモン浜頭が一同に短く言葉をかけた。
 『あの男どもと目を合わせないように、、、』
 『判った』
 双方が接近した。一同は道端に寄って歩いて行く、向こうから来る一群の男どもは三人の横並びが五人の横並びとなって近づいてくる、すれ違いざまに肩が触れるのではないかと思われた。それを何とか避けた。
 どうにかこらえて我慢でをやり過ごした。双方は何事もなくすれ違った。丸太ん棒の杖は、こらえのがまん棒であった。