彼らには、いつ何時でも奴らを叩き伏せれる自信があった。杖代わりの丸太ん棒を強く握りしめることで何とかこらえられた。
双方がすれ違って行過ぎた。スダヌスがアレテスに声をかけた。
『アレテス、振り返るでないっ』
一行は何事もなかったように歩を進めた。相手方は、立ち止まって三、四人がこちらをうかがっている。背中に視線を感じた。
ピッタスが口を開いた。
『何か、用事があるのか聞いてやろうか』
『バカはよせ!それこそ大ごとになるぜ』
アレテスがすかさずたしなめた。
エドモン浜頭が言う。
『彼奴らは、ここを統治しているアカイアの兵卒どもだ。先ず風体が悪い、すぐ文句をつける、人を脅す、モノを取り上げる、命の大切さの知らない、剣闘士くずれのならず者だ。たまにいい奴もいるのだが、奴らは札付きの悪どもだ』
彼らは、宮殿の門前に着いた。宮殿は4階建てである、その威容は付随して建っている建物を睥睨している。彼らは、度肝を抜かれた。彼らの住んでいたトロイの比ではなかった。圧し潰されそうな感じを受けた。
『おい、どうした!おまえら!ここはクレタ全島を統べる政庁でもある。これくらいはしかるべき大きさだ。それを知れ。中を見て歩くことは許されてはいない。我々の入れるところは、中央広場、そこから通じる集散所だ』
スダヌスが一同に向けて告げた。彼は重ねて伝えた。
『出来るだけ、おとなしくふるまう、小さな漁村の漁師であるようにふるまうのだ。そして旅人なのだから。貴方がたに対して、いまのような失礼な物言いは勘弁していただきたい』
彼は物言いに詫びの言葉を入れることを忘れなかった。アレテスは、ピッタスの事がちょっと気にかかった。
『おう、ピッタスよ。お前、気が長いほうではない、ここはちょっとでいいから自分を押さえろよ』
『隊、いや、アレテス、言われたこと気を付けます。判りました』
彼は、隊長と言いかけて何とかそれを抑えた。
『おい、皆!中へ入るぞ』
一行は、エドモン浜頭を先頭にスダヌス、イリオネスと続き、数珠つなぎとなって集散所を見て廻った。
並ぶ、多種大量の産物、大勢の客、そのやり取り、繁忙の賑わいに圧倒された。
『こりゃあ~、すごい!』
『ぶったまげるな!』
『こんな情景を見るのは初めてだ』
『俺は、こんな場のあること自体に驚きだ』
彼らの驚きは大変なものであった。
一方、イリオネスは、キドニアの集散所を物差しにしてマリアの集散所を見て、マリアの集散所を物差しにしてクノッソスの集散所の視察に及んだ。そしてキドニアの集散所を評価した。そのうえで宮殿の外観を観察して、我らが砦を如何様に築こうかと考えながら歩いていた。しかし、この有様を、情景をどのようにつぶさに、アヱネアスはじめとしたパリヌルスらに伝えたものかと考えあぐねた。事実をあからさまに、そして、詳しく伝えるには、今の自分が持てる言葉で伝えられるか、どうかに不安を感じた。午後からは、あれこれ考えるよりも観察に集中して物事を視るようにしようと心を決めた。
双方がすれ違って行過ぎた。スダヌスがアレテスに声をかけた。
『アレテス、振り返るでないっ』
一行は何事もなかったように歩を進めた。相手方は、立ち止まって三、四人がこちらをうかがっている。背中に視線を感じた。
ピッタスが口を開いた。
『何か、用事があるのか聞いてやろうか』
『バカはよせ!それこそ大ごとになるぜ』
アレテスがすかさずたしなめた。
エドモン浜頭が言う。
『彼奴らは、ここを統治しているアカイアの兵卒どもだ。先ず風体が悪い、すぐ文句をつける、人を脅す、モノを取り上げる、命の大切さの知らない、剣闘士くずれのならず者だ。たまにいい奴もいるのだが、奴らは札付きの悪どもだ』
彼らは、宮殿の門前に着いた。宮殿は4階建てである、その威容は付随して建っている建物を睥睨している。彼らは、度肝を抜かれた。彼らの住んでいたトロイの比ではなかった。圧し潰されそうな感じを受けた。
『おい、どうした!おまえら!ここはクレタ全島を統べる政庁でもある。これくらいはしかるべき大きさだ。それを知れ。中を見て歩くことは許されてはいない。我々の入れるところは、中央広場、そこから通じる集散所だ』
スダヌスが一同に向けて告げた。彼は重ねて伝えた。
『出来るだけ、おとなしくふるまう、小さな漁村の漁師であるようにふるまうのだ。そして旅人なのだから。貴方がたに対して、いまのような失礼な物言いは勘弁していただきたい』
彼は物言いに詫びの言葉を入れることを忘れなかった。アレテスは、ピッタスの事がちょっと気にかかった。
『おう、ピッタスよ。お前、気が長いほうではない、ここはちょっとでいいから自分を押さえろよ』
『隊、いや、アレテス、言われたこと気を付けます。判りました』
彼は、隊長と言いかけて何とかそれを抑えた。
『おい、皆!中へ入るぞ』
一行は、エドモン浜頭を先頭にスダヌス、イリオネスと続き、数珠つなぎとなって集散所を見て廻った。
並ぶ、多種大量の産物、大勢の客、そのやり取り、繁忙の賑わいに圧倒された。
『こりゃあ~、すごい!』
『ぶったまげるな!』
『こんな情景を見るのは初めてだ』
『俺は、こんな場のあること自体に驚きだ』
彼らの驚きは大変なものであった。
一方、イリオネスは、キドニアの集散所を物差しにしてマリアの集散所を見て、マリアの集散所を物差しにしてクノッソスの集散所の視察に及んだ。そしてキドニアの集散所を評価した。そのうえで宮殿の外観を観察して、我らが砦を如何様に築こうかと考えながら歩いていた。しかし、この有様を、情景をどのようにつぶさに、アヱネアスはじめとしたパリヌルスらに伝えたものかと考えあぐねた。事実をあからさまに、そして、詳しく伝えるには、今の自分が持てる言葉で伝えられるか、どうかに不安を感じた。午後からは、あれこれ考えるよりも観察に集中して物事を視るようにしようと心を決めた。