『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  458

2015-02-04 07:05:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜にはアレテスの姿があった。
 『あ~、隊長。お二人で何です?』
 『おう、アレテス、来ていたのか。まあ~、ちょっと待て、汗流しのひと浴びをしてくる』
 『判りました』
 アレテスは、浜にいる者たちと話し合った。一、二拍をおいて、パリヌルスとオキテスが海からあがってきた。
 『おう、アレテス、待たせたな。今日は何か用があったのか?』
 『いえ、今日は軍団長への近況報告です』
 『それはご苦労。漁の成果はどうだ?』
 『このところ、連日、大漁続きです』
 『それは何よりだ。うれしい悲鳴をあげているのか』
 『まあ~、そういったところです。先日は釣り針をありがとうございました。ちょうど、釣り針がなくなりかけていたところだったのです。助かりました。漁は、いい仕掛け、いい釣果です』
 『そうかそうか、それは何よりであった』
 『この目でも見る、耳にもしました、新艇の事。海上を行く姿を見たのですが、カッコイイ!新艇ですね。一度乗せてください』
 『おう、判った。遠慮せずにいつでもいいぞ。待て!今日、新艇で小島へ帰れ。いま、ドックスを呼ぶ』
 『お~い、ドックス!』
 パリヌルスは大声をあげた。
 『おう、ドックス、いま、なにをやっている?』
 『はい、新艇の点検を終えたところです』
 『そうか、アレテスを新艇で小島へ送ってくれないか。島を西回りで行け』
 『判りました。アレテス隊長、行きましょう』
 『おう、ありがとう』
 アレテスは、パリヌルスとオキテスに一言告げて浜をあとにした。

 『アレテス隊長、櫂を握ってみますか?』
 『おう、いいな。握ってみる』
 アレテスは、ドックスの言うままに漕ぎ座に就いた。ドックスが声をかける、漕ぎかたが櫂操作を始める、艇が軽く波を割り、進み始めた。
 艇が島の北端に到り、方向を転じる、ドックスが西風を読む、展帆の指示を出す、艇が瞬時に帆走にうつる、アレテスは安定した展帆走行を体感した。新艇は島の東端を廻って、アレテスが降りる渚に艇をつけた。
 『ドックス、ありがとう。素晴らしい乗り心地だった。感激感激だ』
 彼は礼を言って下船した。アレテスは新艇の新しい帆のカタチ、操作の簡単さに目を見張り、新しい艇の走りに感動して興奮を抑えがたかった。アレテスを浜で迎えた小島の一同は彼から新艇の試乗感を聞いた。
 『新艇に乗った感じか。漕いで走る分には変わるところがない、櫂操作が軽かったな。それが第一印象だ。次は展帆航走の印象だが、走りの安定性が素晴らしいの一語に尽きる。一枚帆と違うとすればそのことだ。それを思うと未来は、こんな船かなと思う』
 アレテスは、新艇の印象をこのように語った。