『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  470

2015-02-20 07:18:03 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、風力の有効活用のみを考えていることに気づいた。風力を逃す作用性もタテ帆にあるのではなかろうかと考えた。
 彼は呻吟した。思考がもだえた、何をどのように考えるべきかに迷った。
 操舵棒を握っている、起きる変化に対応している、思考が止まる、対応を終えて、また考える、思考を最初から始める、この繰り返しをやっていた。彼はつぶやいた。
 『それを必要とする状態でないと解決できないのか?』
 もどかしかった。
 『何としても、これに関する端緒をつかみたい』
 彼は、ギアスを呼び寄せた。
 『ギアス、タテ帆で風力を逃がす実験をやる。風向きに平行にタテ帆を展帆する、いいな。その効果測定をやる』
 『解りました』
 『今の風向きはこの方向だ。艇はこの方向に走っている。艇をこの方向に進路を変える。タテ帆を左舷に振って風向きに平行、若しくは風力を逃すと思われる角度に設定する。そのようにドックスに伝えてくれ。操舵によって方向を転じたら、即、やるように言ってくれ』
 『解りました』
 パリヌルスは、間をおかずに、その操作に取り掛かった。艇が微妙に反応したように感じた。結果はこうだという実感が感じられない。
 『そうか、この規模の船、この大きさのタテ帆では、この程度なのかな』
 彼は『微妙』を答えとした。
 タテ帆構造はこの大きさの船では、必要とはしない、また、使用する者の操船技術の事もあり、新艇にはタテ帆を取り付けないという結論を下した。
 3枚帆での走りは爽快そのものであった。パリヌルスは、ギアスに言って走りを楽しむことを告げた。ドックスにもそのことを告げて新艇の走りを楽しんだ。艇上の漕ぎかたの者たちとともに走りの爽快さを堪能した。
 『おう、ギアスそろそろ帰ろうか』
 『はい、判りました』
 ギアスが指示を出す、艇首を南に転じて、帆をおろし漕走する。
 パリヌルスは、操舵を漕ぎかたの一人に任せ、漕ぎ座に腰を据えて櫂を握った。
 『ギアス、ドックスに声をかけて、櫂を握れといってくれ。お前も漕ぎ座について櫂を握れ。俺らが思っているより櫂操作が軽い』
 ギアス、ドックスの二人も漕ぎ座について櫂を握った。