『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  466

2015-02-16 07:11:13 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜に戻ったドックスは、新艇建造に携わった一同を招集した。
 『おう、一同、集まってくれたか』
 『はい、棟梁。何かいい知らせでも?』
 『おう、そうだ。諸君らに伝えるいい知らせがある。聞きたいか。よ~く聞けよ。先ずはこれだ、新艇を建造することが決まった』
 これを耳にした一同が喊声をあげる、ドックスは手を広げて喊声を抑えて口を開いた。
 『パリヌルス隊長がキャプテンギアスに命じて、新艇の長所の解明をした。その解明内容はいいことづくめであった。短所の指摘はなかった。そういうことだ。以上だ詳しいことは、明日、君らに話す。君らが試し乗りした感じと照合してみる。今、伝えることはそこまでだ。新艇がこのように評価されたことを伝えておく』
 一同から拍手と歓声が沸いた。彼らは感動している、一人が手ぶり、足ぶりよろしく踊り始めた。踊り始める者が続く、二人三人と続く、10人余りが輪を作って踊り出した。周りにいる者たちがこれをはやしたてる。踊る者たちは何かを口ずさんでいる。旋律はない、リズムのみの口ずさみ踊りである。口ずさみには意味はなく、10人10様ではなく、10人1様であった。声がだんだん大きくなってくる。彼らの感動表現がクライマックスに達した。突如あがる大声!
 『ワオ~ッ!』と発して、彼らの歓喜の踊りは終わった。
 取り囲んでいる者たちから歓声があがった。踊りの輪の真ん中にドックスが立っていた。彼らの感動の儀式が終わった。
 パリヌルスは、この情景をやや距離をおいた渚から見ていた。
 彼は感慨を胸に抱き、責任の重さを測っていた。
 『必ず、いい船を造る、果たして売れるか?』であった。
 浜を吹き抜ける風が言葉をかけて通り抜けていく。 
 『おい!パリヌルス。俺が手を貸す!やるのだ!』
 彼は耳を疑った。周りを見回す、誰もいない、潮騒のざわつき、さざ波の風声、海面が照り返す目を射る陽の光の乱反射。大計画を前に心の躍動に震えながら浜に立っていた。
 彼方からアレテスが近づいて来る。
 『パリヌルス隊長、何か思案でも?』
 『おう、アレテス、どうした?』
 『いま、キドニアから帰ってきたところです』
 『今日のキドニアはどうであった?』
 『今日は思いのほか、大漁だったのです。首尾は上々でした』
 アレテスは微笑みをたたえて応えた。